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迷惑な隣人情報をグーグルマップで告発するサイト ---不動産価値にも影響---

  • 米国在住モチベーション・コンサルタント&コーチ 
  • 菊入 みゆき

毎晩のように夜中まで音楽を流し大騒ぎをしている、気味の悪い悪臭がこちらまで漂ってくる、いつも戸口の前に生ごみを散らかしている。もしも隣人がこんな家だったら、毎日はずいぶん不愉快でストレス多きものになるだろう。あなたならどうするだろうか。

アメリカで、迷惑な隣人を告発するサイト、RottenNeighbor.com(<a href="http://www.rottenneighbor.com/"></a>)が立ち上げられた。誰でも、迷惑だと思う家の住所、トラブルの内容、写真や動画を投稿できる。投稿は、サイトに掲示され、それに対する他の閲覧者のアドバイスや感想、あるいは反対意見なども掲示される。サイトのグーグルマップ上には、迷惑行為を報告された家が、赤印で記録されており、住所から「迷惑な家情報」を検索することもできる。

昨年7月に創設されたこのサイト、創設者によれば一日平均数十万件のアクセスがあり、ウォールストリートジャーナル、ABCニュースをはじめ多くのメディアに取り上げられるなど、話題を集めている。

筆者もアクセスし、自分の住所でマップ検索を試みた。けっこうドキドキするものだ。近所に、問題のある人が住んでいたらどうしよう、いや、それよりも、あらぬ疑いで自分の家が「迷惑な隣人」として登録されていたらどうしよう、などと検索の1,2秒間に考えてしまった。

とりあえず、筆者自身の家に赤印はついておらず、ほっとする。至近距離にも赤印はない。しかし、少しズームアウトすると、赤いマークが何軒か出てきた。試しにそのうちのいくつかをクリックし、詳細を見てみる。「この家の女性は、一日中子供を怒鳴りつけている。何度か警察にも連絡したが、警官が来るときに限って静かだ」「犬がうるさい」などの記載があった。

サイト上にあるのは、ネガティブな情報だけではない。「よい隣人」として報告された家は緑色で、また、抵当物件は黄色でマーキングされている。また、性犯罪前科者の自宅も赤印で表示されている。クリックすると、顔写真、犯罪の内容が見られる(アメリカでは性犯罪前科者の情報が公開されている)。

このサイト、いったい誰にどう利用されているのか。サイト創設者の一人、ウォーカーさんは、「転居や住宅の購入を考えている人たちの情報源のひとつとなっています。そういうことは、不動産業者は教えてくれませんからね」と語る。確かに、家を買おうと思ったとき、このサイトの存在を知ったら、アクセスしたくなるだろう。

なにしろ、アメリカの近所付き合いのなさは、日本よりさらにひどいのだ。住宅街では、歩いている人をめったに見ない。自宅のガレージから車に乗って出かけ、またガレージまで車で入るというパターンが多いため、家の外に徒歩で出ることがない。当然、隣近所にどんな人が住んでいるのか、ほとんど知る機会はない。付き合いがないから、隣家のドアベルを鳴らして、「ちょっと静かにしてもらえませんか」などと言いに行くのは、相当勇気がいる。そんな状況では、すぐ隣に住んでいる人の情報も、インターネットで知り、インターネットに通報することになるのも無理からぬことだ。会社で、隣の席の同僚に電子メールを送るのと似たようなものか。

ただ、投稿内容の真偽については、保証されていない。ほとんどの投稿は匿名で、誇張や嘘が含まれる可能性はある。いやがらせに嘘の迷惑情報をアップしたり、自分の家を売りやすくするために、「よい隣人」情報をでっち上げて投稿するというケースもあり得る。実際、RottenNeighbor.comには、「不当に迷惑な隣人扱いされた」という苦情も寄せられており、投稿を削除する場合もあるという。筆者が、検索時に抱いた不安は、現実に起こっているのだ。

ミネソタ大学のメディア法と倫理のカートリー教授によれば、ユーザーの投稿した情報が間違い、または中傷であったとしても、法律違反とはならないという。ほとんどの人は、インターネットでは不正確な情報があるのは当然だと考えているからだ。「このサイトで問題なのは、むしろプライバシー侵害のほう」と、カートリー教授は指摘する。

ただ、筆者も検索をかけたように、このようなサイトは、その存在を知ると、やはり自分の近辺についてチェックしたくなるものだ。プライバシーは侵害されたくないが、他の人の情報は知って身を守りたい。そんなジレンマを引き起こすサイトなのだ。

さて、このサイトは、もうひとつジレンマをはらむ。下記がいい例だ。
ミシシッピー州のアダムズさんは、隣家の2匹の犬が毎晩ほえ続け、眠れぬ夜をすごしていた。耳栓をしたり、法廷に騒音被害を訴えたり、いろいろな方法を試したが効果がなく、ついにこのサイトに行き当たった。「せめて、公共の場で恥をかかせてやろうと思い立ち」、ほえまくる犬たちを撮影した動画と苦情を投稿したところ、多くの共感のコメントやアドバイスが寄せられた。

しかし、アダムズさんは今、やはり家を売って引っ越したいと真剣に考え始めた。そこで、大きな問題がひとつ浮上する。「まずは、自分のあの投稿を削除しなければ。この家を買おうと思ってくれている人が、あれを読んだら大変なことになる」と、アダムズさんは語る。

人を呪わば穴二つ。日本の意味深いことわざを思い出した。


<参考記事>

Associated Press  2008/6/27  近所の家に関するぐちはRottenNeighbor.comへ
<a href="http://ap.google.com/article/ALeqM5ip5snQMQN3AbUPxvxXr0ESd_mG0AD91IKH9G2"></a>

Wall Street Journal 2008/4/10 近所の家に悩まされている? そのうちの芝生も刈ってあげなさい
<a href="http://blogs.wsj.com/developments/2008/04/10/got-a-rotten-neighbor-mow-their-lawn/?mod=WSJBlog"></a>

ABCNews  2007/10/2  迷惑なご近所さん? RottenNeighbor.comに告発しよう
<a href="http://abcnews.go.com/Technology/story?id=3676154&page=1"></a>

【編集部ピックアップ関連情報】

○ゆったりイラスト空間  『地獄少女 二籠』 閻魔あい  2007/06/02
 閻魔あいは、普段は大人しく目立たない女の子。
 が、出番がやって来れば、【地獄少女】に変身し、相手を【地獄流し】にする
 役目を負う。普段は主にセーラー服で、地獄少女の時は着物姿に変身する。
 深夜0時にのみアクセスする事が可能な【地獄通信】。
 ここに晴らせぬ怨みを書き込むと、地獄少女が現れて、憎い相手を地獄に
 堕としてくれるのだと言う・・・。
<a href="http://yuttarispace.blog45.fc2.com/blog-entry-72.html"></a>

 


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近所の迷惑住民を報告するサイト 2008年07月17日 13:27
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