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女性はオリンピックの虜?! 米国企業が五輪番組への広告に巨費を投じる理由

(記事要約)

《旅する女性達とオリンピック》
2年半に一度、彼女達は集い、冬のオリンピックのスケートを見たり、夏のオリンピックの体操や水泳を鑑賞する。「私は特にスポーツが好きというわけではないのよ」とは、メンバーの一人で、ニューヨーク在住のジョセリン・シンプソン。「ただ(水泳のマイケル)フェルプス・フィーバーに乗せられているというだけ。」とは、同じくメンバーで、ニュージャージー在住のリサ・ウィリアムスの言葉。

この国には、今彼女たちのような女性が何万人といて、テレビ放送や、インターネット放送に熱中している。そして彼女たちに向けて、100以上の広告主による10億ドル以上費やされたコマーシャルが流れる。

(こうした女性たちをターゲットに)乳がんのための処方薬、化粧品のマスカラ、女性用カミソリ、そしてオンラインデーティングサービスや映画の広告が流れるのだ。

夏や冬のオリンピックは、いわゆる「普段あまりテレビを見ない人」を引きつける傾向にあり、このような層は、マーケティングの観点でいうと、高所得者層で、通常の方法ではマーケティング効果が得られない人々だという。

オリンピックが、女性たちの普段見る平凡な番組と違うのは、「家族で見るにふさわしい内容」であり、そのことが何よりも「今まで以上に重要な意味をもってきている」というのだ。子ども達が家にいる状況で、家族みんなで見ることができるテレビ番組を、母親たちは求めている。

もちろん、男性向けの広告もあるし、また男女をターゲットにした広告もある。しかし、オリンピックの主広告主であるBank Of Americaのスポークスマンは語る。「我々はオリンピックこそ、自社の広告戦略を完璧に仕上げてくれている番組だと感じている」 なぜなら「(普段広告効果を望めない)女性たちに近づく最適な方法だと思うから」と。

8月19日 ニューヨークタイムズ
http://www.nytimes.com/2008/08/19/sports/olympics/19adco.html?ref=business


(記事解説)

かくいう筆者も、普段あまりスポーツ番組は見ないのだが、今回のオリンピックに関して言えば、開会式こそ逃したものの、ほぼ毎日水泳、体操、ビーチバレーからバトミントンなど、時間を見つけてはちょこちょこと確認している。さらにCMが流れている間も、ザッピング( テレビ視聴において、リモコンでチャンネルを頻繁に切り替えながら視聴する行為のこと)せずに、そのままテレビを見続ける傾向にある。理由はオリンピックの期間に合わせて、アスリートが登場する興味深いCMが流れたり、新CMが流れることがあるからだ。

オリンピックが始まるまで、正直言って北京オリンピックがこれほど話題になるとは思っていなかった。いくつか見てみたいと思っている競技があるくらいで、開会式などは特にチェックするに足らないと思っていた。しかしそれは間違っていることに気付いたのは、開会式の翌日。趣味の茶道のクラスに行った時だった。70代の先生が、開口一番「昨日の開会式、すごかったわね」とはじまった。そして一緒にお稽古に通う30代の友人が「ほんとに、びっくりしましたね」と続く。それから30分近く、開会式で踊る女の子たちの話しや、各国の選手団のユニフォーム、花火から人文字まで、興奮して話しをしていた。

<出遅れた>と感じた瞬間だった。その夜からの私の行動は先述した通り。見れば見るほど、興味がわくというのがスポーツ。様々な生のドラマがそこで生まれている。44歳でオリンピックの第一線で泳ぐダラ・トーレス選手を知ったのも、遅ればせながらオリンピックが始まってからだ。

今、女性たちがなぜオリンピックを見るか。私の考えは「井戸端会議の共通のネタ」に選ばれたからだと思う。男性たちが野球やフットボール、バスケットについて職場で、バーで熱く語るように、女性たちが、体操のショーン・ジョンソン選手の完璧な演技や、マイケル・フェルプスの偉業を追い続け、カフェで、幼稚園のお迎え先で、話しをしているのである。もちろん今の時期、家族ぐるみでバーベキューをしながらのオリンピック観戦は絶好の機会だ。

そして中でも今回オリンピック期間に放送されるCMとして、話題になっているものの一つが、ジョン・マケイン上院議員のCM。広告業界誌Advertising Ageによると、600万ドル(約6500万円)をつぎ込んで全米放送をしている。対するバラク・オバマ上院議員も500万ドル(約5500万円)をかけ、来る大統領選キャンペーンCMを流している。

▼オバマCM    http://www.youtube.com/watch?v=ktlbQRQGi6Y
▼マケインCM   http://www.youtube.com/watch?v=7-VeSr6NvaU

オリンピックが、普段なかなかテレビマーケティングで手が届きにくい女性たちにアピールする絶好の機会とするなら、両議員が多額の費用をオリンピック期間中のテレビ広告費に当て込むのは、決して間違ってはいないことになる。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○スポーツビジネス from NY 2008/06/05
 「今や恒例、オリンピックのゲリラ広告(上)」
 今回は、北京オリンピックのアンブッシュ・マーケティングについてです。
 これについては、以前「中国のアンブッシュ・マーケティング」でも
 触れましたが、今回はアンブッシュ活動のルーツや代表例などについて、
 少し詳しい話をしています。
http://tomoyasuzuki.jugem.jp/?eid=390

 

 


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