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レジャーの「シニア化」急速に進む。若者は主役の座降り、インドア化へ

 余暇の過ごし方は、人それぞれ。千差万別である。笑ってしまうほど無意味なものもあれば、まぶしいくらい有意義なものもある。エアロビクスやジャズダンスのように、アクティブなものもあれば、日がな一日、煙草で暇つぶしといった余暇の過ごし方もある。

 余暇は本人が望むように過ごすことが、一番良いことであると思う。このため、他人がとやかく言うべき類いのものではないが、社会経済生産性本部は毎年「レジャー白書」なるものを発表している。日本国民がどのように余暇を過ごしているのかを詳細に調査しているのだ。

 さて、今回発表されたレジャー白書2008では、「『選択投資型余暇』の時代」とサブタイトルがつけられている。難しい言葉だが、要は、エアロビクスや、ドライブ、映画鑑賞、テニス、外食、ゴルフ、カラオケ、ギャンブル、庭いじり、パソコンいじり、ペットと遊ぶ、スキーなど余暇活動種目が無数にあるなかで、最近は参加・経験する数を絞り込んで、興味があるものにお金や時間を集中的にかける傾向が強まっている、というのである。

 10年前の1997年には、1年間に1人平均17・8種目を経験していたが、2007年には14・5種目と大幅に減少している。しかも30代以下、とりわけ10代が極端に減少しているのだ。

 そして、余暇市場規模をみても、1996年は90兆円市場だったものが、2007年は74兆円市場にまで縮小している。個人の経済的、精神的な余裕がなくなった結果、“好きなことにだけ”集中する傾向が強まっているのかもしれない。

 以前、「若者が旅行に行かない」と書いたが、「レジャー白書2008」でも、「元気なシニアの活躍に比べ、若者の影が薄くなっている」と報告されている。レジャーの牽引役だった若年層は、市場の“主役の座”を降り、シニア層に渡してしまった。

 その特徴的なものが、余暇の「シニア化」が進むという現象に表れている。各余暇種目で、50歳以上の人が50%以上参加するものを「シニア化種目」と言うそうだ。

 競輪(63・9%)、競艇(51・9%)、オートレース(55・4%)などギャンブル種目は、押しなべて「シニア化種目」に。幅広い年代層に人気がある競馬(中央競馬)は49・2%で、かろうじて踏みとどまっているが、1997年の32・0%に比べても格段にシニア化が進んでおり、競馬も「シニア化種目」となる日は時間の問題か。ゴルフは64・7%(97年は39・7%)で、どっぷりと「シニア化種目」に属している。

 軽快な躍動感が特徴のエアロビクス、ジャズダンスですら、39・0%(97年は22・1%)と、約4割が50歳以上という事態になっている。近い将来、レッスン教室は高齢者で溢れかえり、たまたま若い人が入門すると、「若いのに感心ねー」などと褒められたりするのかもしれない。

 また、今話題のメタボ対策として、ピクニックやハイキング、野外散歩、ジョギング、マラソンなどの種目も確実にシニア化が進んでいるし、ファッション性の高いランニング用品などもシニア層の間で売れ行き好調という。

 旅行もご多聞に漏れず、シニア化が進んでいる。

 国内観光旅行は50・5%と、堂々「シニア化種目」入りを果たした。そして、かつては若者が通過儀礼のように渡航していた海外旅行も、今やシニア層が45・4%を占めている。成田空港の搭乗口で国際線を待つ人々の半数近くは、50歳以上ということか……。

 このように、ほぼすべてのレジャー種目で10年前に比べて、シニア率が大幅に上昇しているというのが現状だ。

 一方、若年層はというと、携帯電話やインターネットに要するお金と時間が急速に増えて、インドア化が強まっている。このため、「若年層のレジャー経験の貧困化が、将来、さらなる余暇市場の縮小化を招く」と懸念する向きもある。

 経済が右肩上がりの時代には、レジャー意欲も「広く、浅く」というのが自然の流れだった。だが、少子高齢化が進み、日本の余暇市場も曲がりなりにも成熟してきているのだから、「むやみやたらに手を広げるというのではなく、趣味性のものを深く」という感覚が、現在の世相を如実に反映しているような気もするし、「まあ、そうだろうな」と、妙に納得させられる感じでもある。 

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  「若者が旅行に行かない!? 」 2007/10/09
http://mediasabor.jp/2007/10/post_232.html


○吉岡家一同おとうさんのブログ
 「レジャー白書2008」にみる格差の現状  2008/08/20
 「レジャー白書」では独特の分類を取っており、部門別では、スポーツ部門
 (前年比+0.5%増)、趣味・創作部門(前年比▲2.2%減)、娯楽部門
 (前年比▲8.5%減)、観光・行楽部門(前年比+1.0%増)の4部門となって
 おり、特に、娯楽部門が大きく落ち込んだのはスロットの規制による
 パチンコ市場の減少だそうです。パチンコだけでだけで約4.5兆円の減少
 となっています。
http://pokemon.blog2.fc2.com/blog-entry-1299.html 


             


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