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エコイズム世界大会、金メダルはだれの手に?

〈概要〉

 “Greenest Person on the Planet”コンテストのファイナリスト5人が発表された。北京オリンピックにも負けない静かな熱い戦いがこちらでも繰り広げられている。

 世界25カ国約600人が参加したこの世界大会に決着がつくのは9月16日。世界一のエコイズムの栄冠はだれに輝くのか。現在インターネットで投票を受け付けている。

(2008年8月4日CTV)
CTV:カナダ3大ネットワークの一つ。CTVGlobeMediaグループの主要テレビ全国ネットワーク。


〈解説〉

 “Greenest Person on the Planet”コンテストとは、バンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア州立サイモンフレーザー大学のボイド・コーヘン教授が、我こそは世界一のエコ人間と自認する個人の中から世界一を決めようと始めたコンテスト。今年4月22日の『アースデー』にウェブサイトwww.3rdwhale.comを立ち上げ、募集を始めた。

 約600人の参加者は6月には50人に絞られ、最終選考に残った5人が今回発表された。各国代表という形で、カナダ、アメリカ、中国、ベネズエラ、マレーシアから一人ずつが選出されている。

 最優秀者はウェブサイトからの投票結果で決定される。そのため各参加者たちはYouTubeなどを使って、自分がどのようなエコ生活を送っているかを世界に向かって発信している。その様子も上記ウェブサイトに掲載されている。

 カナダからはバンクーバー在住の22歳女性が選ばれた。彼女の生活を紹介すると、買い物袋や自転車、公共交通機関利用はもちろんのこと、トマトなどの簡単な野菜は自家栽培し、食材は地元産を選び、環境保護に積極的な会社に勤めるという徹底ぶり。さらに、部屋にはWorm composterを置いているという。これは、ミミズのような虫が入ったたい肥で、残飯などをここに入れると、虫が分解してくれて、たい肥になるというものらしい。

 今回のコンテストを始めたきっかけをコーヘン教授は、市や法人、建物などがどれだけ環境にやさしい取り組みをしているかというのは話題になるのに、個人の取り組みを紹介するものがなかったからと話している。

 地元紙バンクーバー・サンに、カナダを代表する環境保護活動家デイビット・スズキ博士の、「もはや手遅れの環境破壊進行を食い止めようと努力しても無駄ではないのかという人がいるが、可能性がある以上どんな小さな努力でも積み重ねていく価値がある」との言葉が以前紹介されていたのを思い出した。

 確かに個人のできる範囲は小さい。たとえば彼女の試みが一体どれくらいのCO2削減になるのかという数字的なものは示されていない。しかし、60億人とは言わなくてもせめて先進国の人々の個人意識がここまで行けば、地球はおそらく変わると思う。

 政治レベルでも、個人レベルでも、環境問題はいつも経済と天秤にかけられる。

 北京五輪も中国の環境問題が大きな議論の一つだった。今から1年半後に行われるバンクーバー冬季五輪も北京五輪ほど大きな議論にはならなくても、根が同じである以上それほど差はないと思っている。測る物差しが違うだけだ。

 すっかり商業化してしまった現在の五輪に、『参加することに意義あり』という言葉は死語となってしまったが、今回のエコイズム世界大会はまさしくこの言葉がぴったりのような企画だった。

 彼女のように積極的にしかも楽しく環境問題に取り組む個人を称賛する今回のような企画の存在は、参加する人の意識も高め、それを見た人にも何か感じるものを与えるはずだ。

 9月16日には優勝者が発表されるが、参加者全員が金メダルに値する。来年も開催される予定で、次回はスポンサーを募って、商品も用意したいと語っている。今回が初めてで、バンクーバー発信ということもあってか、英語ができなくてはかなり不利な面もあった。そうしたところも修正しながら、商業化されすぎることなく今後も参加者をどんどん取り込んでほしいと思った。

 

 


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