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「地域一安いスーパー情報をネットで公開します」by 豪競争消費者委員会

<記事要約>

新しくオープンしたウェブサイト「GROCERYchoice(http://www.grocerychoice.gov.au/)」が、最初の4日間で180万ヒットに達したのは、提供されている情報に消費者が高い関心を持っていることを示している、とクリス・ボーウェン連邦副財務相は言う。

サイトは、グローサリー(食料品・日用品)の価格について詳細な情報を消費者に提供するために、豪競争消費者委員会(ACCC)が先週開設したもの。オーストラリア国内61地域のスーパーマーケットの価格がリストアップされている。

「競争の激しい市場で、消費者は情報が多いほどいいと認識しており、それに賛成する我々も、情報を与えることを固く決意している」

2008/8/10 The Australianより


<解説>

「GROCERYchoice」は、地図上でエリアを選ぶか、郵便番号を入力すれば、その周辺地域にある主要なスーパーマーケットの価格調査結果を一覧表示する仕組み。

オンラインでグローサリー価格情報を提供することにより、消費者自身が何百もの価格を比較することなしに、地域内で総合的に一番安いスーパーマーケットを知ることができるように、と作成されたのだそうだ。

日本でも折込広告やチラシの情報を検索できる民間のサイトがあるが、このサイトを運営するACCCは、競争問題全般を取り扱うれっきとしたオーストラリアの国家機関。日本の公正取引委員会に相当し、消費者保護機関としての役割も担う。いわば健全な競争を促す公正な立場でグローサリーの価格をモニターする制度を立ち上げたわけだ。対象は、全国各地の売場面積1,000平方メートル以上のスーパーマーケットのうち約600店舗で、約500品目の調査を行う。

オーストラリアの小売り業界は、コールス系列とウールワース系列の2大チェーンによる寡占化が進み、加工食品の78%、生鮮食品の50%のシェアを占めている。売場面積3,000平方メートル以上に限れば、96%はそのいずれかの店舗だ。

そんな中、奮戦しているのは、2001年にオーストラリアに上陸したドイツ生まれのスーパーマーケット・チェーンのアルディ。自社ブランド製品中心の約900品目に商品を絞って、無駄を省いた倉庫型店舗に陳列し、夜間営業はなし……と徹底的な合理化でコストを削減するやり方でじわじわと存在感を高め、国内各地に160店舗を展開するまでに至った。

ACCCが発表した報告書によると、1キロ以内にアルディがある2大チェーンの店舗では、そうでない地域よりも価格が低く設定されているという。値段がすべてではないとはいえ、約6割の消費者が5%の価格差があれば、グローサリーの購入場所を変えるだろうと答えている。

近所で一番安いスーパーマーケットの情報をネット上で簡単に得られるなら――おそらく、そう思った人がたくさんいたから、予想以上にヒット数は多かったのだろう。

試しに、シドニー市を選ぶと、下記のような結果になる。 



比較できるのは品目別の価格ではなく、「肉・魚介類」「果物・野菜」「乳製品」「パン・シリアル」「飲料・スナック」「一般食料品」「家庭用品・日用雑貨」に分類された7つのカゴ及び、その合計額。それとは別に、各カゴから選択された主要食品の合計額も提示されるが、いずれも中にどんな物が含まれているのかは、明らかにされていない。アップデートは月1回の予定で、あくまで系列ごとの平均値のため、店舗の特定も不可能だ。

ここから分かることと言えば、全体的にコールス系列とウールワース系列の価格はほぼ同じくらいで、独立系は1割ほど高く、主要食品だけなら、アルディが断トツで安いということくらい。ん? そんなことは、みんなもうとっくに知っているんじゃなかったっけ?

イタリア政府は、携帯電話のSMS経由で食品名を送れば、折り返し各地域の平均小売価格と卸売価格を無料で知らせるサービスを始めた。日本の「gooランキング」では、「実現させて欲しい未来の検索機能ランキング」(http://ranking.goo.ne.jp/ranking/092/want_search/)のトップが「近所で一番安いスーパー検索」だった。

GROCERYchoiceの評判は、今のところの「税金の無駄遣い」という批判で占められているけれど、アイデア自体は悪くない。

消費者が求めているのは、オンラインのメリットを活用して、実際に店舗で購入できるグローサリーの価格を、本当の意味で実用的かつ簡単に比較・検索できるサイトだ。それが実現できるなら、オーストラリアのお役所も大したもの。まずは、オープン直後にサイト改善の必要性に言及したラッド首相のお手並み拝見といきたい。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○食品スーパーマーケット最新情報
 「テスコの競合店価格調査データを見る!」2007/11/26
 食品スーパーマーケットにとって競合店調査は日常的に行われているといえるが、
 テスコほど徹底的に価格調査を毎週実施している企業は珍しいといえる。
 しかも、テスコはその調査データをすべて、検索できる形でホームページ上に
 毎週公表しているのである。従来、競合店の価格調査データは原則、内部で
 活用され、密かに自店の価格を調整したり、商品力グラフをつくり、競合店の
 強み、弱みを分析し、自店の商品の価格はもちろん、品揃え、棚割、レイアウト
 の改善、販促の見直しに活用するのが主な目的である。ところがテスコは、
 このデータを消費者に競合店よりも価格の高い商品もふくめ、すべて
 つつみかくさず公開している点が通常の競合店調査との大きな違いである。
http://pipi.cocolog-nifty.com/pi/2007/11/post_a11e.html

 


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