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幼児虐待対策で出産後1年間の無料助産婦サポート計画スタート(ドイツ)

<概要>

ドイツでも、幼児・児童虐待件数が増える傾向にある。中でも出生率の高い貧困層の家庭では、経済的な困難を抱える中、子供達がきちんと世話されず、不潔な環境の中での生活を強いられていたり、暴力などの虐待を受けているケースが多く見られる。こうした背景には、育児の問題に頭を悩ませ、頼れる場を持たない夫婦たちが、結果として幼児虐待に走ってしまった場合も多い。そこで、ドイツの首都ベルリンにある一部の地域では、出産後1年間助産師の無料サポートを受けられるパイロットプロジェクトが、来年からスタートすることとなった。

Der Tagesspiegel 2008年8月11日
http://www.tagesspiegel.de/berlin/Hebammen-Kinderschutz;art270,2590305


<解説>

ドイツにおける妊娠・出産で最も重要な役割を果たすのは、産婦人科の医者ではなく、助産師である。妊婦の体調や精神的問題を解決、あるいはサポートをし、悪阻のためにハーブの調合をしたりする。鍼灸技術までもっている人もいるほど。ほとんどがフリーランスとして働いている。

妊婦は住んでいる地域から希望にあいそうな助産師を数人ピックアップし、面接を繰り返して自分の担当を決める。出産本番も、緊急医療の手が必要でない限り、中心となって指揮をとるのは助産師であり、問題があるときにだけ医者が介入するのがドイツでは一般的だ。つまり、生まれてくる子供がおなかの中にいるときから、ほぼ家族のように密接にかかわりながら、出産まで家族全体のお世話をするのが助産師の仕事である。

勿論出産後も引き続き授乳指導、乳幼児の扱いについて、自宅訪問などの形をとりながら、新家族の心強いパートナーとなってくれる。助産師のサービスを受けるに当たって発生するコストは、法的健康保険が負担してくれる。但しこのサービス期間は、産後8週間までと決められており、実際不慣れな育児に悩む夫婦には、十分な期間とは言えないとされてきた。

こうした問題解決のために、あるパイロットプロジェクトが、来年頭ドイツ首都ベルリンにあるクロイツベルク・フリードリッヒスハイン地区で実行されることとなった。まずは社会教育学の訓練をうけた助産婦4人が、約30の家族の面倒をみる。そして今までのような短期間ではなく、出産後1年間家族をサポートしてくれると言うのだ。

今回のプロジェクト費用を負担するのは、テクニカークランケンカッセというドイツ公的保険会社の一つであり、参加家族を選出するための条件などは、まだ未定であるが、早くも他地区から同様なプロジェクトを始めたいという声が出ている。ドイツでも核家族化が進む中、祖父、祖母に変わって、身近に育児や幼児教育の大きな力となってくれるのは、助産師であるようだ。


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○MediaSabor  2007/11/19
 出産リスクの高まりに備える「自宅出産」の基礎知識
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