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「まだだ。まだ終わらんよ」イタリア行政改革担当相の公務員改革は本気

<記事概要>

サボリ公務員をなくすため数々の方策をとってきた行政改革担当相ブルネッタが、「改革は第二段階に入った」とテレビ番組の中で発言。内容は、公務員個人や役所内の部署が、「わたしたちはサボっていません。こんなにすばらしい行政サービスをしています」と、その事例を行政改革担当省に申告すると、省でそれらを審議の上ボーナスを支給する、というもの。公務員への「飴とムチ」政策である。

9月3日付 日刊紙ラ・レプッブリカより
http://finanza.repubblica.it/scripts/cligipsw.dll?app=KWF&tpl=kwfinanza\dettaglio_news.tpl&del=20080903&fonte=RPB&codnews=192637


<記事解説>

もう慣れたとはいえ、イタリアの公務員のやる気の無さは半端ではない。定刻になっても役所の入口が開かない。開いても窓口に人がいない。いたと思ったらすぐにいなくなる。客がいても同僚同士で私語三昧。仕事は遅く、愛想はない。そのくせ終了時刻だけは時間厳守、定刻きっかりに閉まる。

イタリアなら民間企業でもあまり変わらないだろう、と思う人も多かろうが(そして実際その通りだったりするのだが)、公務員の給料は税金で賄われている。だから仕事ぶりに対する国民の反感も多い。

このような中、国民から今、かなりの支持を誇っているのが、この5月の新内閣発足とともに行政改革担当相に就任した、レナート・ブルネッタである。「公務員のサボりは許しません」という彼の強行な姿勢が功を成し、就任3ヶ月後の調査では、国家公務員の病欠が37%減り、「ブルネッタ効果」と評判になった(8月7日付コリエレ・デラ・セーラ紙より)。

また、7月下旬にイタリア国鉄の職員8人が、出勤時刻をタイムカードに打ちこむ作業を交替で行うことによって偽装出勤をしていたことがばれ、解雇されるという事件もあった。

これらの職員に限らず、そしてイタリア国鉄に限らず、こういったサボりが日常的に公務員に蔓延していたのだとしたら、この解雇という事例は働かない公務員をさぞ震撼させたことだろう。

この6月に大臣が発令した法令によると、今後公務員はたとえ1日の病気欠席であっても、医師の往診を自宅で待たねばならなく(つまり外出してはいけなく)なった。10日以上の病欠、あるいは3回以上の非断続的な病欠の場合は、医師もしくは病院からの診断書を提出することが義務付けられるほか、病欠の期間に拘わらず、基本給以外の各種手当が減額されることとなった。

病気でもないのに病気欠席を事由として職場を放棄していた公務員がいかに多かったのかがわかる法令である。

大臣の、「言挙げ(ことあげ: 言葉によって明確にすること)」し「実行」し「効果を表明」するやりかたは、短期間のうちに行われたために非常にわかりやすい。国民から支持を得るためのツボをうまく捉えている。ここいらでもう一丁、国民からよく見えるところで具体策を、とあらたに掲げたのが、テレビ番組内での発言内容だった。公務員自らが申告した役所のベストサービスは、行政改革担当省の公式サイトに掲載されている。

また、改革が注目されているのを利用して、国民から風刺画を募集していることもあげておきたい。風刺画のテーマは、なんと行政改革担当相その人。作品を同省のサイトに送ると、ネットで人気投票が行われる。得票数の多かった作品には大臣から賞が与えられる。ブルネッタは、背がとても低いことでも有名で、それをさんざんからかわれてきた(143センチ説、130センチ説等あるが真偽は不明)。絵になりやすいそのウィークポイントを逆手にとっている、とも言える。

ここまでやると、あざといという気がしないでもない。しかし、公務員改革に国民の支持を取り付けるということと、改革による効果のみならず支持されてきたという事実までも国民に目や耳で確認してもらう、ということはまるで違う。方法論としてのこの改革への取り組み方には、確かに学ぶべきところがあるように思う。


<参考>

8月7日コリエレ・デラ・セーラ紙
http://www.corriere.it/politica/08_agosto_07/brunetta_assenze_f68ceb52-6469-11dd-8c8a-00144f02aabc.shtml

行政改革担当省・「サボっていません!」のページ
http://www.nonsolofannulloni.forumpa.it/

行政改革担当省・「ブルネッタに関する風刺画大募集」のページ
http://www.innovazionepa.it/concorso_vignette/

ベッペ・グリッロのブログ(日本語版)
http://www.beppegrillo.it/japanese/2008/07/brunetta-e-lassenteismo-dei-pa.html

 

 


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