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ジョルジ・ベンジョール、ジルベルト・ジルらブラジル・ミュージシャン来日ライヴ

  • レコード・コレクターズ 編集部
  • 祢屋 康

 9月に入ってブラジルのミュージシャンの嬉しい来日公演が続いた。

 7、8日には今年3回目を迎えた“ブラジル・フェスティバル”が行なわれたが、これは去年の第2回目から代々木公園のイベント広場で行なわれている入場無料の催しで、ブラジル系の企業のブースや、国内のブラジル料理店などの出店と野外ステージでのライヴもある。今年は7日のメイン・アクトに、ポール・サイモンのアルバムなどに参加したことでも知られるバイーアの打楽器グループ、オロドゥン、8日には16年ぶりの来日となったジョルジ・ベンジョールが登場した。


オロドゥン

 セルジオ・メンデスなどで知られる「マシュ・ケ・ナダ」の作者でもあるジョルジ・ベンジョールは90年代にはブラジルでも再評価が進み、R&Bやアフリカ音楽の要素もあるファンキーな独自のサンバを聴かせる。彼の音楽はこういうイベントで人を踊らせるのにぴったりで、16年前の前回の来日公演を見逃した僕は、来日を知った1週間くらい前から期待がふくらんで、ソワソワしっぱなしだった。去年の同じイベントでは二日間の来場者数が25万人ということだったので、今年はさらにすごいことになるんじゃないかとドキドキしながらフェスティバルを迎えた。

 当日、会場に行ってみるとシュラスコやフェイジョアーダなどのブラジル料理や、ビール、ジュースなどの飲み物を売る店はどこも長蛇の列で、相当な盛況ぶりだった。晴天で迎えた6日の4時過ぎから始まったオロドゥンも結構な盛り上がりだったが、7日のベンジョールの時は広場のステージの前は30分くらい前ですでに人がいっぱい。このイベントには群馬などからもブラジルの人たちがこぞって集まるようで、会場にいるのも8割近くが日系の人たちも含むブラジルの人たちのようだった。ライヴが始まると、大変な盛り上がりで、いっしょに歌うのが好きなブラジルの人たちは大合唱でベンジョールを迎える。


ジョルジ・ベンジョール

 「マシュ・ケ・ナダ」「フィリョ・マラヴィリョーザ」「パイス・トロピカル」などの人気曲では大合唱もひときわ大きく、日本人客がメインの会場では味わえない独特の雰囲気に、予想してはいても圧倒される。ライヴが始まって1時間を過ぎたころから、最近おなじみのゲリラ雷雨に襲われたのだが、それによってさらに会場は盛り上がった感もあった。僕もレインコートとレインハットなどで備えてはいたが、終わったらひざから下はずぶ濡れだった。雨の野外フェスというのも何度か体験してはいるが、これはひときわ印象的なイベントだった。

 それから4日後の9月11日の木曜には、ブラジルの元文化大臣でもあるジルベルト・ジルの来日コンサートがあった。ジルベルト・ジルもほぼ10年ぶりの来日で、ジョルジ・ベンジョールと同世代のベテラン・ミュージシャンだ。文化大臣(来日直前に辞任している)としても、ミュージシャンとしてもインターネットには特に興味をもって取り組んでいて、今回の来日の前に出た新作アルバム『バンド・ラルガ・コルデル』も“ブロードバンドのパンフレット”というような意味だという。YouTubeにもオフィシャル・チャンネル
http://jp.youtube.com/user/gilbertogilmusic)を開設していて、ライヴなどの動画もたくさん上げられている。今回の来日コンサートもなんと撮影、録音が自由とのことだった(同サイトにはすでに来日公演の動画も上がっている:東京国際フォーラムでのジルベルト・ジル http://jp.youtube.com/watch?v=oGRMUcrlkRE)。

 ザ・ブーム---ガンガ・ズンバで活躍する宮沢和史がまず登場、ジルベルト・ジルを紹介して始まったコンサートだが、途中、宮沢和史との共演の「島唄」も挟みながら、2時間たっぷりと熱演。65歳とは思えないスリムな体型のジルは、新作からの曲やボブ・マーリーやビートルズ、「イパネマの娘」のカヴァーなど、サンバからバイアォン、レゲエなど様々なリズムの曲をエネルギッシュに披露していく。9・11にちなんでジョン・レノンの「イマジン」のカヴァー(自身のライヴ盤でもやっている)も披露しつつ、「パルコ」などの彼自身の定番のレパートリーも聴かせてくれたのが嬉しかった。

 ブラジル移民100年記念の「日本ブラジル交流年」特別イベントとして企画されたジルベルト・ジルの公演は、大阪と東京のコンサートのほかにブラジル系の人の多い名古屋と横浜でもイベントが開催され、そちらもブラジル・フェスティバルと同様、非常に盛況だったようだ。

 この二人のブラジルのミュージシャンが1週間のうちに続けて見られるとは…と、すべて無事に終わった今考えてもちょっと不思議な気がしている。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○Don't trust under 30. 2008/09/18
 「GILBERTO GIL @ 大阪厚生年金会館芸術ホール 9/9(火) 2008」 
 今回のツアーは素晴らしい新作「Banda Larga Cordel」を引っさげてのツアー。
 新作タイトルにもあるBanda Largaというのはブロードバンドという意味であり、
 新しい情報社会に突入した人類のあり方を提示する内容になっている。
http://blacksmoke.exblog.jp/9102030/


○楽しい音楽を聴く 「ジョルジ・ベン(ジョール) (Jorge Ben(jor))」
 ジョルジ・ベンの直感的で素直な発想は誰にでも分かりやすい解釈の簡単な曲となる。
 だがそれでいて非常に熱く、ダンサブルなノリのいい音でもある。彼の音の魅力、
 それはブラジル多民族国家ゆえの文化が入り混じったおもしろさ、そしてそれを
 調理するジョルジ・ベンの天性の直感ではなかろうか。
http://music-review.info/article/9333104.html


○ブラジルブログ 「ブラジルフェスティバル2008」2008/09/07
 今回もシュハスコやアサイーなどのブラジル料理やブラジル雑貨、民芸品の
 出展やブラジリアン・ミュージックのステージなどがあり、とても
 盛り上がっていました!
http://btbrasil.livedoor.biz/archives/55131108.html


○怪獣ヒロンの「こんな私を笑って」
 「ブラジルフェスティバルに行ってきました!」 2008/09/07
 僕は、動画ブロガーとして、確固たる地位を確立していますから、最後に
 動画も掲載しておきますよ。みんなで楽しく「熊本音頭踊り、俺の」を
 踊っています。こっちまで、楽しくなっちゃいました。
http://d.hatena.ne.jp/hrykm169/20080907/p1

 

 


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