ここ２年ほど、フランスで急激に人気がでてきたものといえば、カードゲームのポーカー。20歳から40歳の男性の間でポーカー・ナイトが、よく行われている。

　人気に火をつけたのが、歌手のパトリック・ブリュエル。フランス・ポップ界の大御所で俳優の彼は、さまざまなメディアで、自分が昔からポーカーにハマっていることを話していた。10歳の頃からプレイしていて、98年に世界チャンピオンになりプロ級になった彼は、フランスでポーカー・トーナメントをする権利を得て、主催するまでに。

　ケーブルテレビの深夜枠で、ブリュエルが司会するポーカー番組も放映され、カルトな人気がでてきた。追随して、ポーカー専門雑誌の売り上げも急上昇、新雑誌もいくつか創刊され、ネットのポーカー・サイトのアクセスも爆発的に増加。ポーカー人口が増えるにつれ、ついに深夜枠だったポーカー番組がゴールデンタイムに放映されるようにまでなった。

　フランスでのギャンブルは、公共フランス賭博協会がすべて独占管理しているが、ポーカー・サイトは、オフショアに本拠地を定め、マルトやジブラルタルでライセンスを取る方法で、合法にオンライン賭博を運営している。ポーカーだけでなく、2000以上ものフランス語で運営されるオンラインのギャンブルサイトがある。

　フランスは、カップル社会。夜の外出は、恋人同士や夫婦で友人宅に行ったり、レストランや映画など、パートナーと一緒に外出するのが基本。しかし、ポーカー人気で、男性のみのグループで、ポーカーをするために週末に誰かの家に集まったり、ポーカー場に連れだって行くことが増えてきた。女性のポーカーファンも若干いるが、カップルで行動することは稀だ。サッカー観戦と同じように、男女があまり混じらないフランスでは珍しいケースである。

　ポーカーはなぜ人気がでてきたのか？　まずは、ギャンブルのスリル。しかし、運だけではなく、状況を計算し、分析する頭脳も大切。そして、ポーカーフェイスの技量も大きくゲームを左右する。実は、ポーカーで必要な技術は、ビジネス界でも大切な要素であるのだ。

　対戦相手の手のうちを見きわめ、自分の持ち札のバランスを瞬時に分析できる冷静さ、はったりをかませるだけの度胸、勝負時を見わけるだけの技量。そして時の運。ポーカーの技術を磨けば、仕事の場面でも、分析力、はったり力を利用することができる。実社会でも生かせる面と、友人達と一緒にプレイできる共有性とスリル感の混在が、ブームの理由だろう。フランスには、日本のパチンコのように気軽に入店してできるギャンブル娯楽が少ないのも、人気になった要因のひとつだろう。

　ブームに乗って、カジノでしかできなかったポーカーがイベント場やバーで、ポーカー・ナイトが開かれるようになった。友人だけでなく、異なった対戦相手とプレイするのも楽しみのひとつであるポーカー。新しい友人の輪ができる、ひとつの社交場にもなっている。

【編集部ピックアップ関連情報】

○CNET  「ポーカーブームがやってきた」　2008/03/21
　私にポーカーブームを教えてくれた知人によると、一昔前の煙たく暗い
　イメージとは違い、流行に敏感な若者にも人気で、知的なイメージなんだとか。
　また、女性の参加も増えているという。有名人もポーカーブームに一役
　買っている。フランスでは、人気シンガー、Patrick Bruel氏がポーカー好き
　で知られているし、先日はドイツの元テニス選手、Boris Beker氏がプロの
　ポーカープレイヤーへの転身を発表している。
http://japan.cnet.com/column/europe/story/0,3800077429,20368899,00.htm