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デリーから郊外新興エリア(NCR)への通勤地獄、ようやく緩和の兆し

<記事概要>

 何万人もの人々を悩ましてきた、デリーから郊外の新興エリアNCR(グルガオン、ノイダ、ガズィアバード、ファリダバード)への悪夢のような毎日の通勤地獄が、まもなく緩和されそうである。デリーと、近接する州(ウッタルプラデーシュ州、ハリヤナ州、ラジャスターン州)はこの度、オートリキシャ(三輪自動車)やバスの、異なる州への自由な行き来を許可する同意書にサインをした。

 もうこれで、州境でタクシーやバスから降ろされたり、高額な越境料金を払わなくて済むようになる。オートリキシャ(三輪自動車)やバスの州境を越えての自由な行き来がこれまで禁止されていたため、空港や駅からデリーへ向かう客や、州を越えての通勤客は多大なやっかいごとだけでなく、アンリーズナブルな通勤コストまでを背負わされていた。

 今後は、ユーロ3などの排ガス規制に従いながら、バスやオートリキシャに自由な行き来を許可していく見込みである。

(Times of India 10月15日)


<解説>

 デリー(ニューデリーもデリーの一部)というのは、どこの州にも属していない連邦直轄区である。近年、その周りを包み込むようにして、アウタースカートエリア、つまり郊外の新興エリアがいくつも急発展を遂げた。それらの地域はデリーとは違って、それぞれ別の州に属している。東京都がデリーだと例えれば、新興エリアが千葉や埼玉や神奈川に急速に広がっていっているようなものだ。グルガオンやノイダ、ガズィアバード、ファリダバードといったそれらエリアはNCRと呼ばれ、昨今は高層マンションが雨後のタケノコのように建設されており、新しいオフィスビルの建設ラッシュが続いている。7から10年前までは何もないに等しいエリアであった。

 これまでデリーに拠点をおいていた会社も、続々とNCRへオフィスを移しており、次々と新しくインドに参入してきている外国企業なども、ほとんどがこのエリアにオフィスを構えている。だが、突然オフィスがデリーからグルガオンなどへ移ってしまった多くの人々にとっては、それと同時に、生きた心地のしないほど劣悪な通勤地獄に見舞われることとなったのだ。インド人だけではなく、本国から連れてきている子息の学校がデリー市内にある外国人の赴任者の多くが、住宅はデリーにありオフィスがNCRにあるため、この通勤地獄に見舞われている。

 デリーはたいした広さはないのだが、例えばグルガオンに通勤するとしたら、始業時間の2時間から2時間半前に家を出なければならないという有様だった。帰りも常軌を逸した渋滞の中、ひどい排気ガスと埃にまみれてクタクタになって帰宅していたのである。もしも道が空いていて、時速60キロほど出すことができれば、20分程度で難なく着く場所である。先ごろ、やっとデリーとグルガオンを結ぶハイウェイができたおかげで少しは緩和されたようだが、現在も、実際の距離からすると考えられないくらいの時間と労力を要している状態である。

 それでも、自分の車があればまだいい。問題は、自家用車のない人々である。というのも、目と鼻の先であるはずのNCRの各エリアはそれぞれ、デリーとは別の州に属するのだが、デリーとの州境を、庶民の足であるバスやオートリキシャが越えてくれないという、非常に不条理な交通機関なのである。しかもその州境、しっかりとしたゲート等がある場所はほんのわずかで、多くは殺伐とした、どうにも不安な荒地に通っている、ただの道路の途中なのである。そこで突然バスやオートリキシャから降ろされ、炎天下やものすごい埃の中、次のオートなりを捕まえるか(ヘタすると20分から30分捕まらず、捕まえても足元を見られて法外な料金を言われる)、高額な越境料金を払わなければならないのだ。つまり、自家用車以外での通勤は困難を極めるのである。夜になればそうとうな危険もある。

 そこで、人々は無理をして車を買い、なんとか通勤するハメになっているのだが、それが更なる渋滞を呼び起こしている。また、足のない社員には会社がバンなどを提供して、社員を送り迎えするところが多いのだが、ひとつのバンに10人ほどが乗り、10人全員の家へ送り届けるのはなにしろ時間がかかる。ただでさえ、常軌を逸した渋滞で足止めをくらっているわけだから、結果的に家に着くのは会社を出てから2時間後でも早いほうである。

 さらに、多くのメーカー等の企業はここ数年で、グルガオンのあるハリヤナ州のさらに向こう側にあるラジャスターン州に工場を持つ例が増えているのだが、デリーからこれら工場へ行くには、グルガオン全体を通過して行かねばならず、実際は日帰り余裕の距離であるはずなのに、付近に宿泊しなければならないハメになっており、外国企業の赴任者の嘆きもよく耳にする。

 NCRは、大型ショッピングモールも多くあり、スーパーマーケットなどの進出が遅れているデリーよりも、ある意味数倍近代的な面があるのだが、デリー在住者にとっては近くて果てしなく遠い場所でしかない。ところが、ようやく庶民の足である各交通手段が、州境を自由に越えてよいことになりそうな模様とのことだ。

 どうして今まで、こんなにも不便な規制を敷いたままだったのか不思議なくらいだが、とにかく、生活がそうとうスムーズになることは確かだ。無理に自家用車で通勤している人々が減れば、少しは道も空くだろうし、足のない人々にとっては、やっとNCRを生活圏内に入れられることになる。あとは、現在一部だけ開通しているデリーメトロの全線開通(グルガオンまで開通予定)が果たされれば、デリーとNCR間の通勤地獄は、少しは「正常」と言えるようになるだろう。

 

 


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