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全米初の高速鉄道、カリフォルニア新幹線は実現するのか

<記事概要>

 カリフォルニアに最初の鉄道が開通してから1世紀半が経過した今、もっとも野心的な鉄道プロジェクトが州内で開始されるかも知れない。全長1280キロ近くを最高時速320キロメートルで繋ぐ弾丸列車計画だ。

 11月4日、カリフォルニア州の選挙民は州が99億ドルのボンド(債券)を発行するのを承認するかどうかを決める。この債券は、アナハイム、ロサンゼルス、フレズノ、サンフランシスコを繋ぐ744キロメートルに及ぶ高速鉄道網建設に対する支払いを助けるものとなる。

 立案者によると、高速鉄道は飛行機による移動を補完し、また最終的にはサクラメント、サンディエゴ、オークランドの各駅を含む計画の最初の工程になるものだ。資金計画が順調に行けば、6年以内に重要な交通ルートが開通し、2020年には全長1280キロメートルが開通する。

 7月に実施された電話による世論調査によると、672人の回答者のうち、56%の人が債券法案に賛成すると答え、30%が反対した。計画支持者は、新たな雇用を創出する手段になると勧める。

 だが、州の活気のない経済状況と出口の見えない財政赤字を考えると、有権者はさらに借金を増やす債券発行を思いとどまる可能性もある。州の立法分析事務所によると、30年償還の債券コストは利息込みで194億ドルなるという。

 シュワルツェネッガー州知事の計画に対する態度には温度差があった。過去に二度、債券発行に関する法案の延期を支持したかと思えば、昨年は新聞のコラムで「高速鉄道はカリフォルニアに途方もない利益をもたらす」と述べている。(サンフランシスコ・クロニカル9月26日 AP配信記事から)


<解説>

 日本ではカリフォルニア新幹線とも呼ばれる「ハイスピードレール」計画が、にわかに実現性を帯びてきた。南北に細長い州内を最高時速350キロともいわれる高速列車を使って縦断するもので、全米初の高速鉄道網となる。

 計画を実施する利点は多い。まず移動時間の大幅な節約。距離およそ640キロメートルのロサンゼルスとサンフランシスコ間において、高速道路を使って自動車で移動した場合、6時間はかかる。それが高速鉄道だと2時間40分で済んでしまう。飛行機を使えば1時間だが、空港での待ち時間を考えると大差がない。

 また、自動車による移動が減る分、環境負荷が減少するのも利点だ。高速鉄道の開通により、年間180億トンの二酸化炭素が削減され、2200万バレルの石油消費が抑えられるという。カリフォルニアは全米一環境規制が厳しい州。化石燃料の利用を減らすことができれば、政策的にも大きなPRとなる。

 加えて雇用創出効果もある。建設を含めて45万人の雇用が2030年までに生まれるといい、そこから派生する州内の経済効果は相当なものが予測できる。シリコンバレーのITブームに続く経済成長のタネが欲しい州民にとっては、願ってもない計画だ。

 肝心の運賃だが、州の試算によるとロサンゼルス─サンフランスコ間は54ドル。飛行機が134ドルなのに対してその半分以下に設定されている。原油高のいま、車での移動よりも安い。

 実は計画自体は今になって出来たものではなく、すでに14年前からある。当時の州知事の任命で委員会が作られ、その2年後の1996年には9人の委員からなる「ハイスピードレール・オーソリティー」が組織され、実現に向けた調査研究を行ってきた。

 2004年と2006年にはそれぞれ債券発行の是非を問う選挙が行われる予定だったが、優先順位の関係からその都度延期されてきた経緯がある。それがここに来て、ようやく陽の目をみるかも知れないポジションに上がってきた。

 しかし、まだどうなるかは分からない。1200キロメートルに渡ってレールを敷こうという計画だから、建設コストは400億ドルから450億ドルと膨大。州では99億5000万ドルの債券を発行し、残りは連邦政府からの補助金と民間企業からの投資を見込んでいる。だが、それが順調に行くかどうか。また、州の赤字財政をこれ以上増やすことに対して、有権者がどの程度のアレルギーを持っているかも重要な要素だ。

 いま、私の手元には11月4日に行われるカリフォルニア州一般選挙のガイドブックが置かれている。全部で143ページに上る分厚い冊子には、住民投票案の詳細がびっしりと書き込まれ、ハイスピードレール債券に関する投票事項は「プロポジション1」、つまり一番最初の項目として記載されている。

 大陸横断鉄道や高速道路網に匹敵するといわれるこのビッグプロジェクトを、州民は承認するのか。それとも否定するのか。答えはもうすぐ出る。

 

 


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