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「欽ちゃんの仮装大賞」イタリア版は意外につまらない

日本で30年の歴史を持つテレビ番組「欽ちゃんの仮装大賞」。
その番組フォーマットをイタリアのテレビ局が購入し、自国民用にアレンジしたものが、この秋の新番組「ファンタジア」だ。全国から200組が参加し、勝ち残った地区代表20組がテレビで優劣を競う。

人間が仮装して日常の風景や動植物や機械になりきる、という発想が元になった番組はこれまでイタリアになかったとみえ、その奇抜さ、新しさが売りだったのだが、実際に見てがっかりした。

「一般の視聴者が参加しているんです。フツーの会社員、大工さん、肉屋さん、主婦、会計士さんなどが」と司会者が何度も強調しすぎ。そのわりにプロ並みの踊りやバク転を見せる出場者がいる不思議。「普通じゃないだろ」と画面を見つつツッコミを入れること数回。

作品は日本の「仮装大賞」に出たものばかり。海外に住んでいるわたしですら、見たことのあるものがいくつかあった。調べたらイタリアの作品のほとんどが、日本で賞を獲ったものだった。

違いはというと、オリジナルの仮装大賞作品の大道具、小道具が、いかにも素人がつくった工作品なのに対して、イタリアのそれは、きれいに頑丈にできていること。さらに照明も音楽もすべて本格的。日本の参加者のように「キンコーン」とか「ギー」などの擬音を自ら発声して効果音にしたり、音程のずれた歌をうたったり、ということがない。

あのチープ感と、安物のハリボテがかもし出す「壊れそう」「動作がうまくいかなそう」なハラハラ感が仮装大賞のよさなのに。わかってないなあ。


「仮装大賞」の「ふたりの恋愛日記」(02:26)
http://jp.youtube.com/watch?v=K5H5A_cmEtA

「ファンタジア」版「ふたりの恋愛日記」(03:03)
http://jp.youtube.com/watch?v=v2PZgpNh5qY


要するに、既にある作品を使い、プロに完璧な道具を作らせ、子供も含め演ずる人たちを全国から集め、やってもらいました、という番組。こんなので大会やったっておもしろいワケがない。既製のものがべースだから、日本のだと時折みかける、バカバカしいんだけどやたらおかしい作品、というのもない。

テレビ局の関係者が考えつかないようなアイデアを持った、ホンモノの素人参加者を募らないのなら、いっそのこと、日本の作品の映像を編集し、翻訳・解説しながら放映すればよかったのに。そう、「風雲たけし城」や「ザ・ガマン」の日本語放送に秀逸なコメントをつけて放映し、大人気だった「マイ・ディーレ・バンザイ」のように。

とはいえ、それなりのインパクトはあったようす。
ネットでも実際にわたしのまわりでも、「風変わりでおもしろいと思った」、「クリエイティブだ」と評価する人は確かにいた。

番組が始まってまだ間もないが(初回放送日は9月19日)、動画サイトには次々に「ファンタジア」の出場作品が投稿されている。しかし動画サイトを訪問して同じような動画を見ていけば、「なんというファンタジア!」(独創的なものや事柄を褒め称えるとき、イタリア語ではこの言葉をつかう)と感嘆していたイタリアの作品が、実は日本の一般視聴者の数年前のものだということがすぐにわかってしまうだろう。

「ファンタジア」は高齢者向けの裏番組(昔の風俗や流行を懐かしむバラエティショウ)と比較すると、若年層からは支持を得ているようなのだが、このことが実はウイークポイントになっているように思う。イタリアの若者の情報収集能力を甘くみてはいけない。


<参考>

「ファンタジア」 ─作品「ピンポン」(02:11)
http://it.youtube.com/watch?v=L-j5gaOh72U&feature=related

「マイ・ディーレ・バンザイ」 ─「風雲たけし城」「ザ・ガマン」を
編集・コメディ風の解説をつけたイタリアの番組(07:30)
http://it.youtube.com/watch?v=yBy-CZAZI4c&feature=related

9月20日のテレビブログ
「ファンタジア」の占有率(テレビを見ている人を100人として20人が見ている計算。日本の視聴率とは違う。)は約20%。
http://www.tvblog.it/post/10679/analisi-auditel-i-migliori-anni-vs-fantasia

 

 

 


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