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金融危機から金庫が飛ぶように売れている米国

<記事概要>

 銀行の厚い壁の後ろにある預金でさえ安全でない中、人々は資産を守るために何か他の物に変換を始めた。不安定な経済情勢を反映し、いくつかの国では金庫が飛ぶように売れ、在庫を切らしている。大手小売店の広報担当者は「人々は一体金庫の中に何をしまおうとしているのか分からない」と首をかしげる。「しかし、景気減退の中、人々は何かを守ろうとしているようだ」。

 四半期ごとの統計としては現在のところ最新となる6月末の連邦データによると、国内銀行の預金残高は400億ドル近く減少している。加えて、今年に入り今までのところ、市場の落ち込みにより8兆7000億ドルの富が消えている。こうしたことが、出血を止めるための手段として、人々に徹底した資産や投資の現金化を行わせているようだ。

 耐火防水保管庫など金庫を製造するトップメーカーのセントリー・セーフでは、過去3週間で売り上げが50%程度伸びた。神経質になった人々が、資産を保管するために同社製品の購入に走ったためだ。同社の主任ビジネス開発担当者は「住宅価値が急降下し、企業年金価値のガタ落ちにも人々は、ばかばかしいほど怯えている。資産価値を失わない方法を探し、重要なものを自宅にしまっておこうとする気持ちは理解できる」と話す。

 ニューヨークでカイロプラクターを営む男性は、3つの金庫を持っているにも関わらず、4個目の購入を検討中。ボートを購入するために貯めているお金を保管するためだ。「株が下がっているのを見ているでしょう。現金は自分で保管しておくに越したことはないと思う」。

 しかし、ファイナンシャル・アドバイザーは、こうした動きに対して思慮が足りないという。「バカげている。ただの見せ掛けのパニックに過ぎない」と手厳しい。

 それでもまだ、金庫は売れ続ける。金庫を販売するアドバンスド・セーフスでは、政府が7000億ドルの支出を決めた先月末から売り上げが伸び始め、15%の上昇を示している。同社の取締役は、「政府が十億ドル単位というお金をあたかも数百ドルのように話し始めたとき、人々から問い合わせが増え始めた。皆、心配しているのです」。

 同社によると、とても心配している証拠として、重いずっしりとした金庫の配達時間に奇妙な時間帯を指定してくる人が多いという。近所の好奇心の目を集めないためだ。「ご近所に、『きっと何か特別なものを保管するに違いない』などと、要らぬことを考えて欲しくない」との考えが働いている。(ビジネスウィーク10月10日付け AP通信の配信記事から)


<解説>

 金庫を買いに走る米国人の姿はあまりイメージできないが、とにかく売れているそうである。大都市の量販店では品切れで再入荷し、別の店ではここ6週間で大幅な売り上げ増を記録した。ホームセンター最大手のホームデポによると、この2週間で二桁の伸びを示し、金庫を製造するハニーウエルでは過去3週間の売り上げが50%上昇している。

 たんす預金などという言葉がないアメリカでは、そもそも多額の現金は持ち歩かないし、手元にも置かない。下手に100ドル札の束でも財布や自宅の引き出しの中に入れて置こうものなら、強盗や泥棒に盗まれる危険性が高いからだ。市場の上向き基調が続く限りは、運用せずに保管しておくのは損との考えもある。

 通常は最低限の現金を銀行に預けて、支払はクレジットカードか小切手で行う。余裕がある部分は、株なり、土地なりに投資する。だから、会社ならまだしも、大きな金庫を置いてある自宅にいまだお目にかかったことはない。だいたい、日本人のように貯蓄好きではない国民である。

 しかし、この短期間で起きた金融不安はさすがにアメリカ人を不安に陥れたようだ。好景気時に株でせっせと儲け蓄えた資産が万一消えてしまったら大変との思いが、自宅で資産を保管する選択となった。もともと、自分の身は自分で守る意識の強い人たちだから、金融機関が心配になったら切り替えも早い。

 景気悪化と金庫の売れ行き上昇の相関関係はいまに始まったことではなく、昔から脈々と続いていることなのだそうだ。1970年代の金銀危機、80年代の株式市場低迷、2000年のY2K問題、そして同時多発テロの際と、いずれも人々は個人資産を守るために金庫を買いに走った歴史があるという。

 景気が回復すれば、金庫預金は再び銀行への預け入れや利回りの良い投資先に流れ出す。だが、恐慌になるのではないかとまでいわれている今回の金融危機は度合いが深いだけに、人々の資産囲い込み行動も長引きそうだと分析されている。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○投資経済データリンク 2008/10/07
 「世界金融危機--協調と不協和音が入り乱れる金融市場」
http://blog.h-h.jp/investnews/2008/10/07/global-financial-crisis/


○entrance for finance 「ベアスターンズ危機以後のアメリカ」2008/09/13
http://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/d2f92f1740ed0da10851b56bff8a21f5

 

 


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