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金融危機の真っ只中。今年の米国の年末商戦は

  • 米国在住ジャーナリスト

<記事概要> 

 混沌とした市場の動きと金融市場の変動は、年末商戦の予測を一層難しくしている。業界関係者が予測する最良のシナリオは、消費者が昨年の商戦時期に購入しなかったものを買いに走るというものだ。

 経済学者が予測していたとはいえ、小売状況は1992年以来となる3カ月連続の減少が続いている。見通しの立たない経済状況が理由だ。調査会社の担当者は「予想では2%から4%ほど落ち込むのではないか」と見ている。また、「大統領選挙で誰が勝利するかによって、消費者のムードも変わってくる」という。だが、それでも今年の年末商戦は、「とても、とても大きな問題がある」としか予測出来ない状況だ。

 いくつかは生き残れないだろう。この7月に破産法を申請したカリフォルニア州の流通大手マービンズは今週、149店舗の清算に入ることを明らかにした。59年の歴史を持つ流通業だが、高級商品かディスカウントかという消費者志向の二極化が起きる中で、そのどちらでもない同社は顧客離れを食い止めることが出来なかった。

 景気後退の中でも、年末商戦に向けてわずかな希望が残っている分野はある。子供向け玩具、ゲーム、電子機器などで、こうしたジャンルの製品は子や孫へのプレゼント用として期待が持てる。だが、それと同時に悲観的な部分も存在する。最も楽観的な予測をすることで知られている全米小売協会は、年末商戦予測として前年比2.2%増の数字を挙げているが、これはここ6年間で最低の数字。消費者一人当たりの予測支出額は832ドルで、前年比1.9%の伸びにしかならない。(サンノゼマーキュリー紙 10月17日付け)


 <解説>

 今年も年末商戦の時期がやってきた。市場に大混乱を引き起こしている金融危機に加えて11月4日に迫った大統領選挙の行方もあり、一体どのような結果になるのか予想するのが難しい。大きな伸びになることがないのは分かっているが、例年並みに落ち着くのか、それとも大きく落ち込むのかが分からない。

 米国では11月下旬の感謝祭明けからクリスマスまでの1カ月を年末商戦と呼ぶが、消費者は期間中に4000億ドル(約40兆4000万円)の支出をするといわれる。流通業は大々的なセールを行い、人々は家族や友人へのクリスマスギフトを盛大に買い込む。この時期の財布の紐が堅いかどうかで流通業や製造業の年間業績も大きく左右されるだけに、今頃発表される予想値を固唾を呑んで見守っている。

 年末商戦の皮切り日となる感謝祭翌日の金曜日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、買い物客は列を成して目当てのバーゲンセール品を目指す。この日だけは、小売店も夜明け前から店をオープンして限定特売品を並べるのが恒例行事だ。

 だが、残念ながら今年は良い材料が見当たらない。サブプライム問題に端を発する景気後退が消費者心理に重くのしかかっている上、一時期よりは落ち着いたとはいえガソリン価格の上昇は生活費を大きく圧迫した。

 また、金融機関の貸し渋りもあってクレジットカードの借入残高を高いまま残している人々も多く、これから年末に掛けてカードで大きな買い物をする余力がないともいわれる。こうしたことから、小売店側が顧客を引き付けるための一層の努力をしないと、消費意欲は高まらないだろうと予想されている。その一方では、販売不振を未然に回避するための仕入れ圧縮も小売業で進んでいるようだ。そうなると、生産国となるアジア諸国の経済に与える影響も無視できない。

 明るい材料になる可能性のあるといわれている電子機器類だが、消費者家電協会がまとめた年末商戦見通しによると、フラットパネルTVやAV機器を前年比4.7%増、ゲーム機を同3.5%増と予測するなど全体的に堅調な伸びになると見ている。ただ、実際には大手家電チェーン店の売り上げは、企業によって増加と減少が入り混じるまだら模様を続けており、予断は許さない。

 せめてもの良い話は、任天堂の人気ゲーム機Wiiが、年末商戦に合わせて販売台数を増やす予定であることだろうか。昨年は品切れで中々手に入らなかったからだ。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○コンビニマーケッター 2
 「今年のクリスマスプレゼントは、期待しませんように・・・」2008/10/17
 年末商戦前倒しで消費喚起を行うNYの小売店でも閉店が相次ぐ事態となって
 いるそうです。多くの小売店では大幅な値下げ販売を実施しているものの
 消費喚起には至らず、これに銀行の貸し渋りがあって一気に閉店という話が
 多くみられるそうです。
http://blogs.yahoo.co.jp/ti67hm34/34932992.html

 

 


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