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「Soul Ja」を取り巻くベテラン大物アーティストたち

  • レコード・コレクターズ 編集部
  • 祢屋 康

 ラッパー/シンガー・ソングライターのSoul Jaが青山テルマをフィーチャーした「ここにいるよ」は07年に20万枚のヒット、今年の1月には青山テルマをメインにして出されたその“アンサー・ソング”「そばにいるね」も50万枚以上のセールスを記録したという。

 今年の春ごろからよく名前を聞くようになったアーティストたちだったが、メディアサボール編集部から言われるまで僕個人はほとんどノーチェックだった。ところがいろいろと見てみると、僕のようなYMO世代にはとても面白いアーティストがSoul Jaだった。

 Soul Jaは05年にインディーから出した「First Contact」という曲がCMに使用され、まず注目を浴びたという。83年に日本人の父とベルギー人の母の間に生まれ、ベルギー---アメリカで育ったらしい。英語も自然で、日本語と切れ目なく続くラップもなんなくこなすのはこのあたりの育ちも関係があるようだ。

 07年2月にはシングル「Dogg Pound」でメジャー・デビューしているが、ここからプロデュースを川添象郎が手掛けるようになる。川添象郎は70年代にガロのヒットもあるマッシュルーム・レコードを内田裕也やミッキー・カーチスと設立し、続いて作曲家の村井邦彦らと起こしたアルファ・レコード(当初はプロダクション)で荒井由実やYMOを世に送りだした人として知られている。

 Soul Jaの07年12月に発売されたファースト・アルバム『Spirits』にはその川添象郎人脈から細野晴臣、高橋幸宏らが曲を提供している。ファースト・シングルの「Dogg Pound」のプロモ・ビデオにミッキー・カーチスと、ムッシュかまやつが出演しているのも細かいことながら面白い。


Soul Ja『Spirits』(6月に出たデラックス版)

 そして、サウンド・プロデュースを手掛けているのがやはりアルファ系の人脈であるシンガー/ソングライター/プロデューサー/キーボード奏者の佐藤博だ。

 佐藤博は76年にファースト・ソロ『SUPER MARKET』を出し、洗練されたメロウなポップスを聞かせる82年の傑作『Awakening』以降、アルファから10枚以上のソロ・アルバムを出しているベテラン・アーティスト。70年代には元はっぴいえんどの鈴木茂や細野晴臣のやっていたキャラメル・ママ、ティン・パン・アレーといったユニットと一緒に活動することも多く、山下達郎、吉田美奈子、大滝詠一らのアルバムにも数多く参加した名キーボーディストとしても知られる存在だ。細野晴臣にYMOの結成に誘われたという逸話もある。ドリームズ・カム・トゥルーの昨年のツアーには、以前から佐藤博の演奏が好きだったという中村正人の要請で、音楽監督兼キーボーディストとしても参加している。


佐藤博『Awakening』

 佐藤博は打ち込みも得意としていて、ソロ・アルバムでも演奏の多くを自身でこなし、その繊細なドラムやベースの打ち込みには定評がある。その彼がヒップ・ホップ系のトラックをどのように作っているのかも興味深いところではあるが、このSoul Jaの『Spirits』は、ヒップ・ホップ風味を盛り込みつつも質の高いポップスとして作り込まれている。それが幅広い支持を集めた要因かもしれない。よく聴くと「ここにいるよ」にも佐藤博らしいエレピの演奏がたっぷりフィーチャーされているし、「Lotus」は佐藤博の作曲で、自身のコーラスも加わるポップな曲だ。エレクトロニカぽい作風の高橋幸宏作曲の「ID」、細野晴臣が提供した「Cassis」もループ感に溢れた細野作品としても珍しいものかもしれない。

 メインとなるSoul Jaの作曲作品では、勢い溢れるラップが聴ける「Dogg Pound」や、リメイクとなる「First Contact」などヒップ・ホップ色濃い曲、「ここにいるよ」や「Rain」など情感溢れるバラードの他にも、アストル・ピアソラの「リベルタンゴ」にラップを載せ、沖仁のフラメンコ・ギターをフィーチャーしたカヴァーなどアルバムはヴァラエティに富んでいる。考えてみれば、この作品のように、60歳代のアーティストたちがヒップ・ホップ系のアルバムの制作をバックアップするというのは世界的に見ても珍しいかもしれない。

 そして、また最近、話題をさらっているのが10月15日に発売された最新作「記念日」だ。Misslimという名義になっているが、このアルファの一番最初のアーティストとの共演は、まさに縁が取り持つ美しいコラボレーション、というしかないだろう。


Soul Ja×Misslim『記念日・Home』

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○すばらしくてNICE CHOICE Soulja『Spirits』 2008/02/08
 これはこれでラップのひとつの在り方なのだろう。例えジブラに似ていても、
 エミネム風であっても、英語と日本語がちゃんぽんになっていても、音源
 では聴き取りやすい数種類のフロウを使いこなし、スムースでメロウで
 とっても分かりやすい。売れていることはいいことだ。
http://gogonyanta.jugem.jp/?eid=1795

 

 

 


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