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学園祭シーズン真っ最中! 今年の目玉はBase Ball Bear!

 早いもので、今年ももう11月。今はちょうど学園祭のシーズンですね。

 音楽ファンにとって、学園祭はありがたいものです。旬のアーティストのライヴを格安料金で見ることができるチャンスでもありますから。どのアーティストも、通常のコンサートよりチケット代は安いはずなので、普段はライヴを観に行かない方も、こういう機会に「ピピッ」ときたものに足を運んでみてはいかがでしょうか。

 もう20年近く前の個人的な話になりますが、僕も早稲田大学在学中には、布袋寅泰の実妹=狩野環(vo)を擁したガラパゴス、戸川純とヤプーズ、フリー・ジャズのフェダイン、ブランキー・ジェット・シティ(Blankey Jet City)、森高千里などなどを観に行きました。通常のライヴとは違う特別な環境ということもあって、どれも印象に残っていますね。

 早稲田以外にも、印象に残っている学園祭ライヴはいくつもあります。とりわけ、東京大学五月祭でのクレア(Qlair)と一ツ橋大学での沢田研二は、生涯忘れようがないほど強く心に残っています。

 沢田研二に関しては、最後にドラマティックな展開が待っていました。終演後、会場が明るくなっても、誰も客席を離れずに鳴り止まぬ「アンコール」。それが何分続いたでしょうか? すでに衣装を脱ぎ、Tシャツ姿のラフな格好で現われたジュリーは、客席に辟易と感謝の入り混じった言葉を投げかけ、予定外のアンコールが始まったのです。

 このときのライヴは、後にNHK衛星で放映されました。僕は放送を見ながら、この最後のアンコール場面が映像として残っていればいいな…と願っていたのですが、番組の最後にきっちり流してくれました。TVで初めてこの様子をご覧になった方は、突然Tシャツ姿で画面に現われたジュリーを見て「いったい何が起きたんだ?」と思われたはずです。実はこんなエピソードがあったんですね。

 今の時代、コンサート・ツアーの曲目はネットで簡単に調べられるので便利ですが、最後の曲が終ると同時に会場を足早に立ち去るお客さんが増えてしまったため、こういう体験はなかなかできません。会場のお客さんがみな、状況的にジュリーはステージに戻ってこないと理解しつつも、絶対に戻ってくる! と根拠なく信じていた「あの空気」は、思い出しただけでウルウルきます。まさに学園祭ならではのハプニングですね! 公演日を調べたら、1990年10月28日でした。もう18年も昔の話です。

 大学を卒業して社会人になってからはしばらく縁のなかった学園祭ですが、昨年、早稲田祭に湯川潮音を観に行って、学園祭ならではの良さというものを改めて実感しました。その日は、いつもは授業を行なっている教室が使われたのですが、教壇がステージで、備え付けの椅子とテーブルが客席だったため、ステージが近い! そのせいもあると思うのですが、MCにも親密さが感じられて、特別なライヴを見に来たという印象が強く残りました。


昨年秋の早稲田祭「湯川潮音コンサート」で客席に置かれていた
キット。組み立てると四角錘になる



 客席が近ければ、彼女のようなアコースティック楽器中心のライヴは生音もより伝わってきますので、学生運営による会場の手作り感も相まって、いつものちゃんとした会場で体験するよりも、湯川潮音の世界観をより理解しやすいのではないか? と思ったほどです(ホメすぎ?)。演奏時間はお昼でしたが、外の光もしっかり遮ってましたしね。

 この日、ひとつ気になったのが、ステージ正面前方の席を「関係者席」として運営側が確保していたのですが、開演時間が近づいてもその席が一向に埋まらなかったこと。開演直前に遅れてやって来た一般のお客さんに一部を開放していたのでホッとしましたが、結局「関係者席」は多くが空席のままライヴはスタートしました。学生側の気苦労もいろいろと想像できますが、僕も含めた一般のお客さんの多くは不満を持ったと思います。ある程度の時間になれば、「関係者席」を開放するなどの配慮が、必要ではないかと思いました。学生スタッフが一丸となって慎重にコトを運べば、混乱も避けられるはず。今後の課題として、ぜひ改善して欲しいところです。

 さて、今年の秋は加藤ミリヤやチャットモンチー、中川翔子などが各地で学園祭ライヴを行なっています。今が学園祭シーズン真っ最中なので、これからチケットを購入するにはタイミングが遅くなってしまいましたが(ごめんなさい!)、今月下旬に行なわれるところもまだありますので、近くでこれから学園祭が行なわれるという方は、催しをチェックしてみてはいかがでしょうか。

 僕も11月2日(ちょうどこれが掲載される頃ですね)に、今年の「目玉」と言ってもいいでしょう、今が旬のBase Ball Bearを日本大学の桜麗祭に観に行きます! 今までチケット完売に泣かされ続けてきたBase Ball Bearですが、先の9月19日にようやくC.C.レモン・ホールで彼らのライヴを初体験することができました。「僕らの2日間演奏」と銘打たれたこのライヴ、できれば翌20日の土曜日にも行きたかったのですが、やはりこちらはすぐに売切れ。もちろん土曜日を無駄にはできないので、20日はお昼に新宿タワー・レコードでSweet Vacationのインストア・イベントに参加した後、すぐに川崎に移動して幸美AMP(ゆきみ・あんぷ)とスラッシュ・ドミネーション2008を観てきましたよ。


Base Ball Bear「学園祭からやってますツアー」のチラシ。
「バンド結成のきっかけが学園祭という彼ら、いつもに増して気合い入ってます!」
とのこと


 さて、念願叶ってようやくチケットを入手したBase Ball Bearですが、19日のショウでメンバーの口から翌日の曲目が違うことを知らされ愕然…。楽しみにしていた「ELECTRIC SUMMER」は最後まで聴けず、公式HP(http://www.baseballbear.com/)の「BLOG」で曲目をチェックすると、翌日の最後に演っているではないですか。なので、桜麗祭のステージは「リヴェンジ」というと語弊がありますが、僕としてはそんな気持ちもあります。といっても、「抱きしめたい」や「BOY MEETS GIRL」は19日にしか演奏していないので、20日だけ観に行ってても同じことを思ったでしょうけど…。

 ちなみに、楽理的な話をちょこっとすると、「ELECTRIC SUMMER」と「抱きしめたい」はどちらも四つの同じダイアトニック・コード(IIIm、IV、V、VIm)を曲の主成分としています(共に進行もIIIm→IV→V→VIm)。よくわからないという方は、IIIm(ミ・ソ・シ)、IV(ファ・ラ・ド)、V(ソ・シ・レ)、VIm(ラ・ド・ミ)の和音だと思ってください。

 Base Ball Bearの作曲を担う小出祐介は、このコード使いの名手(天才と言い換えてもいい…)で、「ELECTRIC SUMMER」と「抱きしめたい」は上に乗せてるメロディのアプローチが全然違うために、パッと聴いて同じコード進行だと気がつく人は、実はあまりいないように思います(なので、ちょっと触れてみました)。IIIm→IV→V→VImというのはマイナー・キーのトニック(主音:各調の出発点となる音)に向かっていく進行と同じですから、切ない響きが得られます。Base Ball Bearの曲に特有の「哀感」は、実はこういうところにポイントがあるんですね。

 ちなみに、「僕らの2日間演奏」のオープニングを両日とも飾った「GIRL FRIEND」も同じ性格の曲で、イントロからずっとIIIm→IVの二つのコードで進みますが、ギター・ソロのバックはIIIm→IV→V→VImの進行です。さらに言えば、19日の最後に演った「BOY MEETS GIRL」のイントロのギターもこの四つのコードからできている(最初のIIImはベースが主音を鳴らしているので、厳密にはトニックのメジャー・セヴンス)ので、Base Ball Bearは初日も二日目もIIIm→IV→V→VImを内包する楽曲をライヴの最初と最後に持ってきたということになります。小出祐介が描く歌の世界と「IIIm→IV→V→VIm」の相性はバッチリなので、今後も別の曲で出てくる可能性は高いと思います。次はどんな形で現われるのか楽しみですね。

 さて、話を戻しますが、リヴェンジというのは選曲とは別にもう一つあって、19日は東京初日ということも原因なのか、湯浅将平のリード・ギターと関根史織のベースが僕の席(2階中央)では満足のいくサウンドではありませんでした。機材トラブルが原因かもしれませんが、ベース・サウンドは不明瞭で、リード・ギターも音の細さが気になりました。後者に関しては、将平がストラトキャスターをメインに使用している点に原因があるかもしれません。Base Ball Bearには音の太いリード・ギターが向いているはずなので、ライヴだけでもレス・ポールを使ってみるという手もあるように思います。動きまわるために、ストラトよりも重いギターを使いたくないのかもしれませんが…。それはともかく、楽曲の色付けに大きく貢献しているこの二人が万全でないと、バンドの魅力は半減してしまいます。とはいえ、お客さんは大いに盛り上がっていましたけどね。

 一方で、ヴォーカル&ギターの小出祐介とドラムの堀之内大介の演奏は良かったですねえ。とくに「STAND BY ME」の出だしは小出が歌いながら一人でアルペジオを奏でるのですが、フレーズの「間」も含めて「完璧」と言えるものでした。この日の彼からは随所に「表現したいものが存在する」という気持ちが強く伝わってきましたね。公式HPの「BLOG」では、小出が自分のおすすめCDなどをときどき紹介しているので、ファンの方はそれを参考にCDを買ってみるのもいいと思いますよ。僕も彼の意見を参考にCDを聴くことがありますが、いつも刺激的な音楽体験をさせてもらえるので信用しています。

 Base Ball Bearにとって、学園祭はバンド結成のきっかけにもなった大切なイヴェント。そんなこともあってか、彼らは学園祭に参加するほかのバンド/アーティストより、かなり多くの数(7箇所)をこなします。

 桜麗祭当日は、僕のすぐ目の前に将平がいるはずなので、関根のベースにも気を配りながら彼のリード・ギターをバッチリ聴いてこようと思います。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  2008/04/07
 調性をねじまげながらポップに輝く期待の新星「Base Ball Bear」
http://mediasabor.jp/2008/04/base_ball_bear.html


○21世紀のおせっかい: 2008/10/13
 Base Ball Bear 学園祭ツアー「学園祭からやってます」at 北海道薬科大学
 彼らの最大の魅力は、青春群像的な歌詞、POPなメロディライン、
 そしてXTC等に代表される80年代ブリティッシュニューウェーブや
 プログレに影響を受けたサウンド(Bsの関根嬢はジェスロ・タルの
 大ファンで、プログレ雑誌にもコラムを連載している本格派!),
 この3つの要素が程よく融合している点でしょう。
http://myone.blog.ocn.ne.jp/blog/2008/10/20081012basebal_cc2e.html


○シネマトゥデイ 2008/10/27
 7年ぶり!ディズニー映画『ティンカー・ベル』のエンディング曲を
 日本人アーティストがカバー!
 メインの楽曲となるエンディング・テーマを歌うアーティストを
 幅広く探し、湯川の歌声と雰囲気が本作のイメージにピッタリとの
 ことで今回の大抜てきとなった。
http://cinematoday.jp/page/N0015735


○ One Way To The Heaven 湯川潮音『雪のワルツ』 2007/02/07
 タイトル曲は三木鶏郎が残した、すこし古風で典雅なメロディーが
 なんとも味わい深い曲。続く自作曲「木の葉のように」も昭和歌謡を
 思わせるメロディーで、このミニ・アルバムのトータルなカラーを
 決定づけています。初めて聴くのに、どこか懐かしいような気分に
 させられるセピア色の音楽集。
http://d.hatena.ne.jp/huraibou/20070203/p1

 

 


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