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ペットも家族の一員、関心が高まるホリスティック獣医学

  • グリーンフラスコ株式会社 代表・薬剤師 
  • 林 真一郎

こころと体のつながりに目を向け、医薬品や手術などの西洋医学だけでなく、アロマテラピーやメディカルハーブ、バッチ博士の花療法などの植物療法や鍼などの東洋医学、さらにはカウンセリングをはじめとする心理療法や食事療法など、さまざまな療法を活用して自然治癒力を向上させるホリスティック医学が注目を集めている。

さらに、最近ではこうした考え方を動物に適用するホリスティック獣医学が飼い主の間で関心を呼んでいるのだ。ホリスティック医学やホリスティック獣医学は反西洋医学ではない。したがって、ホリスティック獣医学の担い手は、獣医師としての資格を取得したのちに西洋医学以外の療法をマスターした獣医が中心で、海外では「ホリスティック獣医師」の看板を掲げる獣医師も少なくない。他のケースとしては、ホリスティック獣医学に理解を示す獣医師が、ハーバリストや動物行動学の専門家などとチームを組んで問題解決にあたるスタイルもある。

ホリスティック獣医学が関心を集める理由のひとつは、飼い主と動物との関係の変化だ。従来の「ペット」と呼ばれる存在は主人の下僕、つまり上下関係がはっきりしていたが、最近は「家族の一員としての動物」(コンパニオンアニマル)という位置づけなのだ。したがって、体にダメージを与える療法よりも、少しでもソフトな療法を受けさせたいと願うのは当然と言える。もうひとつの理由は、動物の病気の変化だ。ストレス病やアレルギーなどの慢性疾患には西洋医学よりも他の療法の方が効果的なのは、同じ動物であるヒトの場合と同様だ。

では、一体ホリスティック獣医学ではどのようなケアが行われているのだろうか。西洋医学以外の療法として用いられるものにはカイロプラクティックやキネシオロジー、ホメオパシー、イリドロジー(虹彩療法)、ハイドロセラピー(水療法)など、驚くほど多様なセラピーがあるが、ここではアロマテラピーやメディカルハーブ、それにバッチ博士の花療法などの植物療法を例にとって紹介しよう。

アロマテラピーとはハーブの芳香成分である精油(エッセンシャルオイル)を用いる療法だ。たとえば、コアラの食物として有名なユーカリの葉の精油はノミやダニを寄せ付けないことで知られる。あなたが愛犬につくノミやダニで頭を痛めているなら、ノミ除けのためのユーカリシャンプーが問題を解決してくれるだろう。無香料の植物性シャンプー(または石けんシャンプー)10ミリリットルにユーカリの精油1滴を加えてよく混ぜ合わせればできあがりだ。

メディカルハーブとは、カモミールやペパーミントなどのハーブを粉末化したものや熱湯抽出したものを目的に応じて与える療法だ。お腹の調子を整えるにはカモミール、アレルギーの改善にはネトルやダンディライオン、感染症や外傷にはエキナセアやカレンデュラ、メス犬の出産準備にはラズベリーリーフなどがおすすめだ。ハーブの粉末の与える量としては、中型犬でティースプーン半分から1杯弱で良いだろう。がんや免疫系の低下にはマイタケなどのキノコ類のハーブサプリメントを与える方法もある。

バッチ博士の花療法とは英国のエドワード・バッチ博士によって生み出されたセラピーで、野生の花の癒しの力を転写した38種のレメディーを用いて、主に感情レベルの不調和に用いられる療法だ。甘えん坊で独占欲が強く、飼い主にべったりといったケースにはチコリーが、すぐに威嚇したり反抗的、攻撃的になるケースにはホリーが、引っ越しや旅行、去勢や避妊後などの環境の変化にはウォルナットが用いられる。

以上の3つのセラピーは西洋医学に比べて安全性が高いため、飼い主がセラピストとなって日常的にケアを行うことで互いの絆(きずな)を深めることができる。ただし、そうは言っても過信は禁物。症状が思わしくないときは早めに獣医の診断や問題行動の専門家のカウンセリングを受けることが大切だ。最後に、コンパニオンアニマルはあなたが思っている以上にあなたのことを深く理解し、一体化している。彼(彼女)が健康であるためにはあなた自身がライフスタイルを見直し、明るく前向きな気持ちで生きていくことが何にも増して重要だ。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○どんどんよくなる光の小道 2005/10/20
 「犬ともアリともハエとも話ができたJ・アレン」
  生きとし生けるものの間に存在している“沈黙のことば”と、その実態、
 あらまほしいコミュニケーションによって成立する切ないほど美しい
 世界について、これほど洒脱にわかりやすく、しかも平易な言葉、
 イキイキとしたエピソードでつづった本を私は知らない。
http://ameblo.jp/hikarinokomichi/entry-10005332444.html


○ももの時間 「コンパニオン・アニマルの安楽死」 2007/04/15
  ほんとうに最後になって、動物をひとりきりにすることはできないだろう
 (病気などのため飼い主の事情によりそれがかなえられないときは別だが)。
 おそらく、闘病期間を通じひとと動物との関係性は、それまで以上に(
 個人的には、それまでにはなかったほど)深まる。
http://momonojikan.blog68.fc2.com/blog-entry-250.html

 

 


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