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同性婚禁止の住民投票可決で大揺れのカリフォルニア

  • 米国在住ジャーナリスト

(記事概要)
 
 ゲイ同士、レズビアン同士の結婚を禁止する住民投票がカリフォルニア州で可決されたことで、反対派の人々の反発が日増しに強まっている。サンフランシスコ地区とカリフォルニア全体で数千人が集まり、そのほとんどは平和的であるとはいえ、抗議行動が続いている。

 日曜日の午後には約2500人が州議会の入り口に集まり、3時間に及ぶ同性婚禁止反対集会を開いた。モルモン教会に400人ほどの参列者が集まったサンフランシスコ隣町のオークランドでは、あふれるデモ参加者の安全を守るため、高速道路の出入り口が封鎖された。

 参加者の一人は、「(同性婚を禁止する住民投票が可決されたことは)お腹にパンチを食らったみたいだ」。別の参加者は、「もし、投票が接戦になることが分かっていたら、もっとたくさんの(同性婚禁止反対への投票を頼む)電話をしていただろう」と話す。

 金曜の夕方にサンフランシスコで抗議行動が始まったときには、参加者は1000人だった。土曜日には、州南端のサンディエゴで1万人を集める最大の集会が開かれた。一方、同性婚禁止に賛成する数百人の人たちも、日曜日にロサンゼルス南のオレンジ郡の教会の外で集会を開いた。

 同性婚禁止に反対する人たちは、州憲法の改正を阻止するために州最高裁に異議を申し立てている。今年5月、2000年に決まった同性婚禁止を無効にした州最高裁の決定は、今回の投票結果だけでは覆せないというものだ。

 共和党のアーノルド・シュワルツェネッガー州知事は、今回の同性婚禁止提案には反対の立場。裁判所への異議申し立てを支援すると日曜日のCNNニュースで述べると同時に、同提案が可決されたことを「残念」と表明。「まだ終わっていないし、裁判所へ再度判断を委ねるべき」。「1948年までカリフォルニア州で黒人と白人が結婚できなかったときと同じケースの問題だ」と話している。(サンフランシスコ・クロニカル紙11月9日付)


(解説)

 11月4日の大統領選挙に合わせて行われたカリフォルニア州の住民投票で、「プロポジション8」と呼ばれる提案の結果が大きな波紋を呼ぶこととなった。提案内容は、「同性婚を廃止するよう州憲法改正を改正し、男女間の結婚のみ認めるようにする」というものだった。

 カ州では2000年の住民投票で、男女間の結婚のみを認めるようにする提案「プロポジション22」が可決された。しかし今年5月、州最高裁はこの決定を覆し、「結婚を男女間に限るのは州憲法が保障する『平等の保護』に反する」との判断を示し、同性婚が晴れて解禁となった。マサチューセッツ州、コネチカット州も同性婚を認めているが、州民以外にも結婚証明書を発行するのはカ州だけとあって、全米から同性カップルが訪れた。同性婚ブームが巻き起こったのはご存知のとおりだ。

 サンフランシスコとロサンゼルスにそれぞれゲイタウンを持つカリフォルニアは、同性愛にも開放的。私の住むサンフランシスコ・バークレー一帯は特にリベラルな地域であるため、同性婚賛成派が多い。白人の知人との選挙の話題で必ず持ち上がるのが、オバマの支持とプロポジション8への反対だった。それだけに、賛成52%で提案が可決されたときには、足元をすくわれたと感じた人たちも多かっただろう。

 同性婚賛成派の矛先は現在、モルモン教会へ向いている。同性愛に反対するのはキリスト教全般に言えることで、熱心な信者が提案への賛成票を投じたと見られている。だが、モルモン教会は、提案可決を促すための選挙資金として15億円を提供したといわれ、反対派から大きな反発を買うことになった。各地のモルモン教会に抗議集団が押し寄せ、モルモン教関係者が所有する企業製品のボイコットや、モルモン教の本部があるユタ州への旅行のボイコットなどの話も出始めた。

 同性婚問題はこの先どちらに転ぶのか予断を許さない状況だが、赤字財政に苦しむカ州としては同性婚を解禁にしてそこから得られる税収増に期待したい気持ちもあるようだ。関連ビジネスが立ち上がることで売上税が増え、今後2─3年で数千万ドルの増税になるとの試算もある。

 ついでに、同性婚反対派の論拠として挙げられている主な理由を見てみよう。「人類の歴史が抱えてきた『結婚』の定義を復元する」、「提案は結婚を維持するためのもので、同性愛の人たちのライフスタイルを侵害しないし、いかなる権利や利益も奪い去らない」、「公立学校で子供たちが、同性婚が伝統的な結婚と同じだと教えられることを防ぐ」など。

 これを読んで、ずいぶんと古い考え方に囚われているうえ、何より言い訳がましいと思ったのは私だけだろうか。とても、「変革の時が到来した」と宣言したリベラルなオバマ次期大統領に61%の人が投票した州とは思えない。ただ、2000年の住民投票の際には61%の人が同性婚反対に賛成していたことを考えると、州民の意識はそれなりに変化を遂げているようだ。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  2008/06/20
 「ゲイ、レズビアンの同姓結婚でカリフォルニアにゴールド・ラッシュ再来!?」
http://mediasabor.jp/2008/06/post_415.html

 

 


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