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Base Ball Bear桜麗祭ライヴ・リポートとニュー・ウェイヴ界期待の新星school food punishment 

 まず最初に、日本大学桜麗祭におけるBase Ball Bearの話から。

 会場は日本大学の百周年記念館(ここがまた雰囲気のある立派な建物でした)。京王線の桜上水駅から徒歩数分。この方面はめったに来ることがないので、ライヴへの期待と、駅から道に迷わず会場にたどり着くことができるかとのドキドキで、妙に気持ちが昂っていたことが思い出されます(笑)。

 僕が観た9月19日のC.C.レモン・ホールでは、湯浅将平のリード・ギターと関根史織のベースが満足のいくサウンドではなかったので桜麗祭で「リヴェンジ」と前回(「学園祭シーズン真っ最中!今年の目玉はBase Ball Bear!」http://mediasabor.jp/2008/11/base_ball_bear_1.html)書いたように、この日は特に二人のサウンドに注目(注耳かな?)していました。

 会場に到着すると将平が手にするであろうストラトキャスターのサウンド・チェックが行なわれていましたが、音は上々です。期待に胸を膨らませていると場内が暗転し、XTCの「Making Plans For Nigel」が流れて、4人がステージに登場しました。しばし円陣を組むように顔を付き合わせた後で、現在までの最新シングル「Changes」からスタート。

 さて、この日の元・水泳部コンビ(将平&関根嬢は同じ学校の水泳部の先輩・後輩だったそうです)は「注耳」する必要がないほど音が前に出てきてバッチリ! …というか、はっきり言ってこの二人の音量がデカい(笑)。さすがにここまで前に出てこなくても…と思いましたが、Base Ball Bearはこの二人が前面に出てきてこそ、その魅力が発揮されるというのは間違いのないところでした。

 特にこの日は、関根のベースの実力を再認識しました。8ビート主体のシンプルなラインながら、休符を効果的に挟んで(これは女の子ゆえの手の大きさも一因しているような気がします)、迫力あるゴリッとした音でグイグイとバンドを引っ張っていく。身体と右腕をそれぞれ「く」の字のように曲げて弾く独特のフォームも目を引きます。

 一方の将平はテクニックよりも気持ちで弾くタイプかな…。「SAYONARA-NOSTALGIA」を聴くかぎりでは、ギターはコイちゃん(小出祐介)のほうが上手いかも…と思いましたが、将平のリード・ギターが演奏面の主役であることは間違いのないところです。ただし、2曲目「抱きしめたい」は、エフェクトかけすぎだと思いましたけど(笑)。

 アンコールでは、CDとは音像がまったく異なるのが新鮮だった「ELECTRIC SUMMER」も聴けたし、やや短めのステージとはいえ、4人の演奏が満喫できたいいライヴでした。桜麗祭のステージを見れば、誰でも彼らのライヴ盤が欲しくなるでしょう。今ならタイミング的にもちょうどいい頃だと思いますし、早く実現して欲しいですね。来年には長期ツアーも決まったし、また観に行きますよ!

 さて、メディアサボールではもう2年近く定期的に書かせていただいているのですが、これまでに書いてきたことで、現在までに進展があったにもかかわらず何もフォローせずに来てしまったものもあるので、この機会に少し整理させてください。

 「“再結成”ブーム!? それはともかく感動的だった9月の2夜」(http://mediasabor.jp/2007/11/post_252.html)で、橋本直樹を加えた編成でのライヴが、今回で“ファイナル”であって欲しくないと書いたアウトレイジ(OUTRAGE)ですが、その後、橋本が正式にバンドに復帰することになりました。あの日のお客さんの反応が、後押ししたのだと思います。そのデビュー20周年記念ライヴの模様はDVD『The Years Of Rage』として、また、橋本完全復帰後のライヴ・アルバム『Awakening 2008』もそれぞれ今年の2月と6月に発売されました。

 アウトレイジと併せて触れたD-DAYも、昨年の25周年ライヴの後、順調に活動を続けています。桜麗祭から2週間後の11月16日には代官山の「晴れたら空に豆まいて」(という名前のライヴハウス)で、25周年ライヴではD-DAYのサポートを務めた「福原まり」との、テクノ・ポップ・ファンにとっては豪華な組合せのライヴを見てきました。D-DAYのヴォーカリスト、川喜多美子のブログ(http://plaza.rakuten.co.jp/yoshikokawakita/)によれば、これまでライヴの機会ごとに発売してきたCD-Rは、今回の第4弾で一応の区切りとのこと。第4弾のメイン・トラックは、ファンにはお馴染み「Citron」です。

 さてさて、D-DAYの音楽面を担うギタリスト、成田忍で「Citron」といえば、もうひとつ触れておかなければなりません。そうです、クレア(Qlair)の「CITRON」(作・編曲=成田忍、D-DAY「Citron」とは別曲)です。

 3人組のアイドルだったクレアは、アイドル・グループといえばユニゾンで歌うことが当たり前だった時代(1991─93年の2年間が実質的な活動期間、Perfumeが広島で誕生するほぼ10年前)に、果敢にも複雑なハーモニーに取り組み、その音楽性が一部でかなりの注目を集めていました。なかでも彼女たちの特異性がもっとも発揮されたのが「CITRON」で、残念ながらライヴでは複雑なハーモニーが再現できていませんでしたが、もしこれがライヴでもきっちり表現されれば、「時代は確実に変わる」と僕などは信じて応援していたものです。

 ちなみに、「CITRON」収録のミニ・アルバム『CITRON』には、ほかにも大沢誉志幸・作曲の「泣かないでエンジェル」とか鈴木祥子・作曲の「パジャマでドライブ」(アレンジは成田忍!+西平彰!!+佐橋佳幸!!!)とか、名曲がたっぷり。ふだん音楽を聴かない友人はともかく、音楽の話ばかりしていた友人の間でもクレアは圧倒的にウケが良かった。最初は「どうせアイドルだろ?」と冷めた反応をされても、『CITRON』の1曲目「CITRON」をかけて、「時計は逆回転 出会いをPlay Again」の必殺ハーモニーが出てくれば、みな一瞬かたまり、「凄いじゃん!…なにコレ!?」と一様の反応が返ってきたものです。

 周囲のスタッフに恵まれていたこともあってか、クレアの楽曲には「捨て曲」というものがまず存在しません(捨て曲どころか名曲のオン・パレード!)。そんな彼女たちの楽曲は、現在『アーカイヴス』というCD3枚+DVDの4枚組にすべてパックされています。『アーカイヴス』にはメンバー3人の各曲コメントが寄せられているのですが、これがまた音楽のことばかり語っていて、胸にジーンとくるんですよね。


クレア『アーカイヴス』
当時の僕が私淑していたアレンジャー、門倉聡が大半の楽曲の編曲を手がけ、今
も昔も尊敬しているギタリスト、佐橋佳幸のギターがたっぷり聴ける。永遠に廃盤
にならずに、この世に存在していて欲しい珠玉の楽曲集

 ちなみに、『レコード・コレクターズ』2006年2月号に掲載の『アーカイヴス』評は僕が書いているのですが、改めて読むとほとんど「CITRON」で埋まってました(笑)。衝撃的だったもんなぁ…ホントに。

 現在のPerfumeの成功を考えるたびに、彼女たちが「時代を誤って」出てきてしまったことをつくづく残念に思います。

 さて、またまた個人的な話になりますが、今年の僕の人生におけるハイライトのひとつが、成田忍さんと話ができたこと。話ができたというよりも対面したぐらいが正確なところですけど…(笑)。5月6日に渋谷のclub乙にschool food punishmentを観に行って、トリのバンドの途中で会場から出ようとしたら、ちょうどライヴを終えたばかりのメンバーと成田さんが話をしていました。僕はその日、school food punishmentのドラマー、比田井修が先に触れたD-DAYの25周年ライヴでドラムを叩いていたこともあり、D-DAYのTシャツを着て会場に足を運んだのですが、彼がそれに気がついて声をかけてくれたんですよね(ありがたい!)。

 「成田さん、Tシャツ、ほら!」みたいな感じでメンバーが声をかけてくれたおかげで、自然な流れで対面することができたので、僕は「成田さんが25周年ライヴでこのTシャツ着てたので買いました」(←これホント!)を皮切りに、短い間ですが、思いのたけをぶっつけました(迷惑なファンだ…)。成田さんからは「ありがとうございます」と何度も言っていただきましたが、その言葉を言うべきなのが僕のほうであるということは、ここまで読んでくださった方には説明不要でしょう。で、そのときに言えなかったのが、クレアの「CITRON」が大好きでした!ということ。D-DAYの「Citron」があるので、ご本人を前に「クレアの」と言ってしまって失礼にならないかどうか…。短い間に思いっきり悩み、結局この話はしませんでした…。

 ちなみに、school food punishmentは僕がBase Ball Bearと並んで個人的に今、最も推しているポスト・ロック・バンド。今年はライヴを4回観ることができましたが、昨年から加わったドラマーの比田井修はもちろん、キーボードの蓮尾理之、今年から加入した新ベーシストの山崎英明と腕達者揃いのスーパー・グループです。バンドの要である紅一点のギター&ヴォーカル、内村友美が描くシュールで美しい詩世界も素晴らしいし、多くの人に聴いて欲しいと心から思えるバンドです。

 これまでに2枚のミニ・アルバムを出していますが、1st『school food is good food』は石田ショーキチがプロデュース、2nd『air feel, color swim』は成田忍がプロデュースを手がけています。ちなみに、石田ショーキチは自身もソロ・アーティストとして活動していますが、これまでにスピッツ『ハヤブサ』のプロデュースや映画『デトロイト・メタル・シティ』の音楽『魔界遊戯─For The Movie』を手がけてきた人です。『school food is good food』も『air feel, color swim』も最新型のニュー・ウェイヴが堪能できるのでオススメですよ。ちなみに、小出祐介によるブログ「小出メッセ」(現在は閉鎖)で小出が『air feel, color swim』について「ソロ・アルバムを作るとしたらこういう風にしたい」と書いていたはずです。彼のこの鋭いセンスには、本当にシビレますね。

 さて、僕の原稿は、今年はこれで最後になります。読んでくださったみなさん、どうもありがとうございました。

 

 


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