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眉唾モノを斬る「ションキー・アワード」、社会を変える消費者の「チョイス」

<記事要約>

豪州消費者団体チョイスが信用できない不正直な商品やサービスに授与する、毎年恒例の「ションキー・アワード(Shonky Awards)」を発表した。

リストの主役は、銀行のほか、ミルクシェイク味の低アルコール飲料、住宅金融会社からいわゆるグリーンな洗剤まで過度な誇張マーケティングなど。高価な携帯電話のプレミアム契約サービスや、豪州卵協会(Australian Egg Corporation)によるフリーレンジ(放し飼い)の定義などの怪しさも浮き彫りになった。

チョイスのクリストファー・ジン氏は、「ションキーに選ばれるものは、ただうまく機能しないというのではなく、とても素晴らしいものと自らを位置づけて売り込んでいるという点で、突出している」と語る。

2008/11/25 ABC News(The World Today)より


<解説>

「ションキー(Shonky)」は、オーストラリアの俗語で、「信用できない、怪しい」といった意味を持つ形容詞。「ションキー・ビジネス」「ションキー・メカニック」「ションキー・チケット」といった具合に、うさんくさく、でたらめっぽいものを表現する際に使用される。

チョイスはそういった商品やサービスをばっさ、ばっさと斬り続けている非営利の消費者団体だ。家電製品や日用品・食料品、コンピューターなどはもちろん、ホームローンや保険、クレジットカードをはじめとする金融サービスから、医薬品や代替医療、視力矯正手術などの保健医療サービスまで、品質や性能、効果、安全性、耐久性、信憑性、経済性、環境負荷などを客観的に評価・比較するために、日々商品テストやリサーチに取り組み、消費者にチョイス=選ぶことの重要性を示し続けている。

今年実施された98のプロジェクトでは、1,000点以上の商品やサービスが精査された。結果は、月刊誌『Choice』に掲載されるほか、近年はウェブサイト上の情報提供にも力を入れている。

辛辣なコメントやパロディCMと共に、代表的な眉唾モノを紹介するションキー・アワードはいわばその総決算。注目度もひときわ高く、昨年はイヴェントが行われてから24時間の間に、テレビやラジオ、新聞などのメディアに合計440回も取り上げられたのだそうだ。

【CHOICE Shonky Awards 2008 from YouTube】
http://au.youtube.com/watch?v=7Vydl1XLxCo


チョイスは、約50年前に組織が発足して以来ずっと広告不掲載の方針を貫いてきた。継続的な国家助成も一切なし。評価対象となるものはすべて匿名で購入し、企業からの商品提供も一切受け付けていない。財源は、商品テスト誌や関連書籍の売上、オンライン会員の会費などで賄っている。

そんなわけで、「誰もテスト結果に影響を与えることはできない」というのが彼らの誇り。巨大企業や力のある団体が相手でも決してひるむことはない。企業名や商品名・サービス名はすべて実名で公表し、ずけずけと「ココが全然ダメ!」と言ってのける。「斬る」という表現がぴったりくる対決的な姿勢に、消費者は喝采を送る。当然ながら、ネガティブな評価を受けた企業や団体からの抗議は珍しくなく、時には訴訟にまで進展する。

今回のションキー・アワードでは、フリーレンジ卵の認証基準を批判された豪州卵協会が即座に反応し、「高度に複雑な問題を矮小化して、鶏卵農家全体を過小評価した」と声明を出した。

チョイスは今年6月の時点で、「フリーレンジと称するめんどりの半数以上は巨大な鶏舎]]で飼育されていて、ほとんど外に出ないかもしれず、その卵はコンベヤベルトで流れてくる」とウェブサイトに掲載している。スポークスマンは、1平方メートル当たりの飼育密度が14羽以下であればフリーレンジと表示できる豪州卵協会の基準では、同じく18羽以下をケージ内で飼育する従来のバタリー式養鶏場と大差ないと主張する。

自主基準を設けている豪州フリーレンジ鶏卵・鶏肉協会(FREPAA)は、7羽以下をフリーレンジとしており、オーガニック認定機関ACOの認定は5羽以下でないと受けられない。ただ、大半の鶏卵農家が、基準の緩い豪州卵協会の認証に基づく表示を行っているのが現状なのだ。

この問題に目をつけた以上、チョイスはいつものように徹底的に戦うだろう。したたかなメディア戦略を通じて、消費者を啓蒙し、キャンペーンを繰り広げる彼らの活動は、オーストラリア社会に多大な影響を与えてきた。企業や業界、行政への働きかけの結果、品質が改善されたり、リコールに繋がったり、規格や基準、法律が改正された例は枚挙にいとまがない。商品やサービス自体が販売中止となってあっという間に市場から消えたこともあれば、15年かかって法的な安全基準導入にこぎつけたベビーベッドのようなケースもある。

インターネット上に無料のレビュー記事や口コミ情報が溢れるようになって、チョイスの今後の役割を疑問視する声もなくはない。それでも、人口の100人に1人に相当する20万人以上もの定期購読者(オンライン会員を含む)がいるのは、信念に支えられた辛抱強い活動実績に対する信頼の証。チョイスはまだまだ戦い続け、消費者の選択を後押しし、これからも社会を変えていくに違いない。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○Business Media 誠 2008/11/18
 「偽エコロジーを見逃すな――ドイツの“エコ度”チェックシステム」
 製品やサービスの省エネ度が高いかどうか消費者が判断できるように、
 EUではユーロラベルという基準で省エネ度を示している。また、
 ドイツでは“テスト誌”というカテゴリーの雑誌が、中立的な立場から
 製品やサービスのエコ度を判定しているのだ。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0811/18/news057.html

 

 

 


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