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携帯は娯楽アイテム。韓国ケータイコンテンツビジネスの今

  インターネットの普及率と共に携帯の普及率も80%を超える韓国において、携帯電話は人々の生活に密着し、欠かせない必需品となっている。韓国で街中を歩くと、コンビニエンスストアと同じぐらいとにかく目に付くのが携帯電話ショップの多さだ。韓国のユーザーは携帯電話を通話としての道具というよりも、1台で何役もの「娯楽」アイテムとして楽しむ趣向が強く、携帯を選ぶ時も本体の価格よりもデザインと機能を重視している面がある。携帯で「娯楽」と言って思い浮かぶのが「ケータイコンテンツ」の利用。韓国のケータイコンテンツビジネスとはどのようなものであろうか?

 まず、日本と韓国のケータイユーザーのケータイコンテンツ利用動向について比較してみると、日本の場合、着メロ、占い、ゲーム、グラビア、ニュース、交通情報、地図、株取引などコンテンツメニューがバラエティに富み、利用者も拡散しているという印象を受ける。これに比べ、韓国のユーザーのケータイコンテンツは、コールリング(通話連結音のダウンロード)、着メロ、カラオケ、待受画面、動画に集中している。韓国には日本のような多種多様のコンテンツメニューがない。ニュースやネットオークションなどのコンテンツは皆無に等しく、言わば「エンターテインメント」や「娯楽」のメニューにターゲットが定められている。

 加えて、日本と韓国のケータイコンテンツビジネスのもう1つの違いとして挙げられるのが、有料コンテンツの課金方法である。韓国は全てのキャリアのケータイコンテンツが利用1回ごとの都度課金であり、この方法を早くから導入してきた。このため「好きな時に好きなだけ」という利用のしやすさが、ユーザーの支持を集め、都度課金が定着している。対する日本も、auやドコモ、ソフトバンクの携帯で、都度課金が一部のサービスに数年前から導入されているが、月額のパッケージ料金が基本であり、まだまだ韓国のように一般的になっているとは言い難い。

 韓国のケータイコンテンツは10代後半から20代を中心とした若い世代の利用率が圧倒的に高く、ケータイコンテンツビジネスはこの世代によって支えられていると言っても過言ではない。彼らはコールリング、着メロや待受画面のダウンロード、ダウンロードした音楽をMP3機能で楽しむなど、まるで毎日のファッションコーディネートで服を着替えるかのような感覚でケータイコンテンツを利用している。

 ちなみに、音楽や待受画面、動画のダウンロード料金は、待受画面、動画については1本につき200から500ウォン(13から33円)、音楽1曲は600から800ウォン(39から53円)程度。この価格設定の低さが魅力である。韓国には元々、無料で利用できる「勝手サイト」の存在がなく、携帯電話の需要とケータイコンテンツビジネスが盛んになり始めた当初からユーザーは料金を払ってコンテンツを利用することに抵抗なく、むしろ有料コンテンツを積極的に利用している。

 また、新たに各社キャリアとメディアが提携を結び、TV機能が内蔵された携帯電話での地上波や衛星放送のテレビ番組視聴(リアルタイム)や、ドラマのダウンロードができるTV視聴コンテンツサービスも始まっているが、こちらは都度課金の方式ではなく、月額料金プランが条件となっている。1ヶ月の平均的な料金は25,000ウォン(1,650円)と、他のコンテンツ料金に比べて割高感が否めないことや、視聴時間やダウンロード回数の制限があることから、ユーザー数の伸びは鈍くヒットまでには至っていない。今後どのようにユーザーを増やしていくかが課題である。

 ジャンルを「エンターテインメント」や「娯楽」に集中させ、低価格の手ごろさで若い世代のユーザーからの人気を得て安定している韓国のケータイコンテンツビジネス。しかし、各キャリアのケータイコンテンツの内容が偏って類似し、飽和状態になっているがゆえの人気のかげりも見られるようになっている。これによる顧客獲得のための基本料金や利用料金の価格競争が激化する中で、各社とも、若い世代だけでなく広い年齢層に受け入れられるサービス展開や他社との差別化といった次なる戦略が求められる時期に来ていると言えよう。

※1韓国ウォン=0.07円(2008年12月15日現在)

 


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