2008年という年はWeb2.0から始まったネットの変化が実体経済を巻き込み始めている年として記憶されるべきであると思います。

そもそもネットからそういった流れが起きていたところに、実体経済での金融ショックが重なり、局所的には、つまり既に成果を出しているところは、一気に実利に近づいているように思えます。

ひとつには、音楽業界。そもそもナップスター騒動から始まり、音楽業界とネットの関わりは既に長いものになっています。ネットは販促と割り切って、ライブで稼ぐアーティストが登場し、さらに今年は「ビッグアーティスト自身が行うダイレクト販売まで始まっています。

http://www.everythingthathappens.com/

デビット・バーンとブライアン・イーノの戦略は、現時点で普通に行うことができるWeb2.0的なPR戦略はほぼすべて網羅しています。

　　　・オフィシャルサイトでのダイレクト販売
　　　・しかも「Digital Only」「CD+Digital」「Deluxe Package」の３種類での販売
　　　・ブログに貼付けることができる（Embed）PRパーツ
　　　・MP3データのサンプル配布

また、サンプルのMP3データの取得については、メールアドレスの登録後に可能とし、次のPRにメールアドレスを活かそうとしています。

次にPC販売。元々ダイレクト販売で成功をしてきたデルから、若干ショッキングなニュースが流れてきたのは記憶に新しいところです。

リンク: Twitterを使ってDELLが1億売り上げる | IDEA*IDEA
http://www.ideaxidea.com/archives/2008/12/twitterdell1.html

twitterをビジネスにダイレクトに使おうという企業は日本ではほとんどいないであろう現状を考えると、このデルの売上の数字は日米の大きな差を感じることができます。デルの実績を見せつけられると、バーゲンセールのような限定的な販売の情報は確かに限定的なユーザーにだけ伝わればいいわけです。そう考えると、これに追従しないEコマースサイトはほぼないと言えるほどの成功と捉えていいと思います。

さらに商流はどんどん変化し続けています。

2008年の年の瀬になって、アップルから少なくともアップルファンにとってはびっくりなリリースが出されました。

リンク: アップル、Macworldへの最後となる参加を発表
http://www.apple.com/jp/news/2008/dec/17macworld.html

アップルが今回の決定をした背景にはいろいろな理由があるとは思います。ただアップルはこういった展示会という場での発表を最も有効に使っていた企業のひとつです。そのアップルが今回こういった判断をしたことが大きな意味を持つのではないかと思います。

今回のアップルの判断は、もちろんアップルストアというダイレクトな場をアップルが既に持っているという側面もありますが、展示会のようなリアルな場を用意してなくても、Webを通じて企業が人々にきちんと商品をPRできるプラットフォームが十分に用意できたということを物語っているのだと思います。

では、人々がリアルな場を求めていないかというとそんなことはないように思えます。逆に経済以外の分野では、どうしてもデジタルに還元できない部分についてはライブがこれまで以上にフォーカスされてきています。またWebでもUstreamに代表されるようなライブにフォーカスするサービスも増えました。こういったライブな感覚というのは2009年に入るとさらに顕在化してくるのではないかと思っています。