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イタリア音楽業界を席巻する「Xファクター」に注目

 「Xファクター」は、リアリティオーディション番組である。2004年にイギリスで始まって以来、優勝者が歌手デビューし、彼らのいずれもがヒットチャートをにぎわせるほどの売れっぷりなのだという。

 この番組フォーマットが、イタリアに初上陸したのが、2008年の春。少時間ながら予選風景を連日放映し、6月には大々的に決勝戦を放送した。当初の視聴率は芳しくなかったようだが、時間をかけて知名度をあげていった。優勝者にはレコード会社と契約を結ぶ権利が与えられ、賞金はすべてデビュー費用にあてられる。こうして初回優勝者はメジャーデビューを果たし、国内シングルヒットチャートで5位(アイチューンでは3位)を記録した。優勝を逃したものの2位を取った女性はさらにメディアに引っ張りだこで、特徴のある歌い方をまねるコメディアンまで出てくる始末だ。

 その「Xファクター」の第2弾が始まった。土日を除く毎日夜30分、予選を放送中だ。オリジナル同様、番組のカギは3人の審査員といっていい。ひとりはシモーナ・ヴェントゥーラ。ここ4、5年のバラエティ番組で、もっとも起用されていた女性司会者だ。もうひとりは男性ポップ歌手、モルガン。そして残るひとりが、70年代に多数のポップス歌手を世に送り出した敏腕プロデューサー、マーラ・マイオンキ。音楽性の評価を担当するのが現役の歌手、将来性担当がプロデューサー、そして大衆受け担当がテレビ界の売れっ子と考えると、バランスのとれた人選だといえるだろう。

 予選とはいえ、出場者は真剣そのもの。伴奏なしのアカペラで、自身が選んだ楽曲の一部を歌う。半数以上はこの予選で落ちるのだが、審査員がとにかく厳しい。ピザ職人に「ピザを焼き続けるべき」などと言うのはまだいい方で、「その自信はどこから来るのか」、「物まねでしょ、個性がないわ」などなど、情け容赦のないコメントが浴びせられる。寝たふりをするなどのイヤミな行動もザラだ。ときどき審査員同士で揉めるのは演出のうちだろうか。

 オーディション会場のドアの外では出場者の家族や恋人が、出番の終わった出場者を待っている。悔しさ、悲しみをたたえた落選者が、身近な者に抱きかかえられ、ときに涙しながら去っていく。

 予選を勝ち残った者は、グループに分かれて専門家にレッスンを受けるのだが、視聴者はレッスン風景を含めた彼らの日常をテレビカメラを通して観察する。リアリティショウといわれる所以である。

 本選は来年1月から、12回にわけて放映される。一方、超大型イベントであるサンレモ音楽祭の開催は2009年2月、「Xファクター」の決勝戦と重なる時期だ。次回の音楽祭では、過去13回も司会を務めた71歳のベテラン司会者からかなり若返り、趣向も大きく変わると聞いた。マンネリ化の打破は「Xファクター」を意識していると思えてならない。

 この冬から春にかけて、音楽界に新星はかならず降りてくる。そしてそれはイギリス発の「黒船」番組からだと予想しているのだが、どうだろうか。


<参考>

▼「Xファクター」公式サイト
http://www.xfactor.rai.it/R2_HPprogramma/0,,1067131,00.html

▼初回「Xファクター」決勝での審査員のコメント風景
http://www.youtube.com/watch?v=DrWixDpzVWE&feature=related

▼ARAM QUARTET (初回優勝者)による「 Un Emozione da poco」
(1978、アンナ・オクサのカヴァー)
http://www.youtube.com/watch?v=2ZqhZFHSMS4

▼GIUSY FERRERI (初回準優勝者)の新曲 「NOVEMBRE」
11月17日発表。12月6日時点で36万回の再生を記録中。
http://www.youtube.com/watch?v=tnSmouEfEPE

▼ミュージックブログ DOOPS
http://doops.jp/2008/01/uk1xfactor.html

 

 


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