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2009年ブラックベリーが日本携帯市場への黒船となる!?

 カナダにもとうとうお財布携帯が登場した!!  と言えば少々大げさだが、2008年10月31日、カナダの携帯電話会社最大手のロジャーズと銀行最大手ロイヤルバンク、クレジット会社のビザ・カナダが携帯を使ったビザカード利用の試用を行うと発表した。カナダ最大都市トロントに住む500人を対象に2009年春から開始する。

 アメリカでは2006年からすでに試験的に取り入れられているということで、カナダもようやく日本、アメリカに追いついてきた。

Canadian Press(2008年10月31日)
Canadian Press: カナダ国内外のニュースを網羅し、テレビ、新聞社などの国内メディアに記事を提供するカナダのニュースソース。


(解説)

 利用者は、アンテナとチップを内蔵したビザカードと特別なチップが装着されたモトローラ製の携帯電話を持ち、試験的に店舗に取り付けられているワイアレスリーダーに携帯電話を読み取らせると、ビザカードに購入額がチャージされるという仕組みになっている。

 携帯で買い物といえば、日本のお財布携帯機能。この記事の中でも、日本にある大手3社の携帯会社はすでに携帯で支払いをできるシステム“Wallet Phones”を導入していると日本の携帯事情を少し紹介していた。北米ではこの先5年間でこのクレジットカードシステムが定着するのではとの予想もしていた。

 ところで、日本では2008年を象徴する一文字に「変」が選ばれた。アメリカでも“Change”が流行語になった。カナダはと言えば、それほど大きな変化はなかったが、唯一大きく変わったのが携帯業界だった。その最大の要因は、連邦政府の携帯会社新規参入入札と、7月11日のアップル社iPhone 3G発売だった。以前にも紹介したが、iPhone 3G発売では、閉塞した携帯市場へのカナダ国民の不満が爆発し、大手3社がそれに反応するという画期的な動きを見せた。

 ロジャーズはiPhone 3G発売から3カ月後の10月1日スマートフォン対応の新料金プランを発表し、その他の2社テラスとベルは共同で次世代ネットワークを確立するという計画を10月に発表した。新規参入会社も2009年の事業開始に向け着実に進んでいるという。こうした一連の大変化はスマートフォン製造会社へも拍車をかけた。

 2008年、カナダ・オンタリオ州に本社のある携帯電話製造販売最大手リサーチ・イン・モーション(RIM)は、相次いでブラックベリーの新機種を発表した。8月にはブラックベリー最新機種BOLD、9月には個人ユーザー向けにフリップ式のPearl Flip、さらに12月にはiPhone 3Gに対抗したタッチスクリーン式のSTORMを発売した。


Flip



Storm

 ブラックベリーとはRIM社が製造販売するスマートフォンで、全世界ですでに1500万台以上を販売している。小さなキーボードが密集して配列されている外観が特徴的で、機能はビジネス用に会社で使用しているPCのEメールアドレスを設定できるほか、ワードやエクセル、PDFなども操作・閲覧でき、外出先からでもこれ一つでPCと電話の役割を果たすことで、欧米のビジネスマンを中心に急速に普及した。

 このビジネス仕様のブラックベリーを、エンターテイメント性をさらに充実させたのが上記3機種で、iPhone 3Gを好む個人ユーザーをも取り込もうというのが狙いである。

 実は日本でもすでにブラックベリーがドコモ社から発売されている。BOLDは2009年2月頃に発売予定らしい。韓国では2008年12月からビジネス向けに発売が開始されたという。ようやくアジアにもブラックベリーが上陸し始めた。

 しかし、日本での認知度はまだまだ低いのではないかと思う。ひとつにはビジネス向けとして発売されているためでもあるが、もう一つには日本の個人ユーザーが好む機能が備わってないことにある。お財布携帯機能もなければ、着うたフル機能もないし、バーコードリーダーの機能も付いていない。日本の携帯に慣れている個人ユーザーにはあまり魅力的に映らないだろう。

 それでも導入価値はある。日本の携帯市場が飽和状態になっている今、ビジネス界を中心にビジネス性の高い機能は魅力的だ。そして何よりも私が期待しているのは、真の意味でのグローバル携帯として、その利便性が飛躍的に向上するのではということだ。

 例えば、2月に日本で発売予定のBOLD。日本での発売機種は日本語が当然標準だが、カナダですでに発売されているBOLDも日本語をダウンロードできる。これまでは日本語が使えても文字化けで読みにくいことがあると友人に聞いたが、その点は解決済みとロジャーズの人が話してくれた。

 そして最も注目しているのは、SIMカード。これが交換できれば、海外で使用している電話機は変えずに日本の電話番号が取得できてローミングのような高い通話料を支払わなくてもローカル料金で済む。逆も同じだ。

 カナダでは旅行などで海外に滞在するときは現地のSIMカードを購入して自分の携帯電話を使用できることが一般的に知られているが、これが通用しないのが日本と韓国だ。

 日本の携帯もSIMがロックされていて、海外で交換して使用することができない。世界同時発売されたiPhone 3Gを販売するソフトバンクならこのあたりに詳しいのではと思い、カード交換して海外で利用することが可能か聞いてみたところ、やはりロックされていてそれは不可能だということだった。しかしソフトバンクでは、海外からの滞在者向けに成田空港や東京の一部の販売店で3G電話機に限り、SIMカードのレンタルを行っている。ということは、規制さえ緩和されれば、システム的には不可能でないということだ。

 その最も有力な手段がブラックベリーではないかと思っている。ブラックベリーが今後日本ビジネス界に普及すると、こうした海外での利便性なども注目され、もしかして日本携帯業界が変わるのではないかと期待しているのだ。

 実際ソフトバンクの人も、世界的にそういう流れになっているので、将来的にはSIMロックはなくなるでしょうねと言っていた。そうなると年に何回も日本とカナダを往復する私のような人間には非常に便利になる。これにクレジットカード機能が付けばさらに便利だ。

 2009年はカナダから黒船ならぬブラックベリーの上陸で、日本の携帯市場が大きく変わってくれないかと秘かにうれしい「変」を期待している。

 


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