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2009年はこのアロマ研究者に注目!! 世界を引っぱる3人の日本人

  • グリーンフラスコ株式会社 代表・薬剤師 
  • 林 真一郎

わが国にアロマテラピーが紹介されておよそ25年が過ぎようとしている。統合医療への関心が高まる中で、数あるCAM(相補代替医療)の中でも人気のあるアロマテラピーは欧米で着実に広がりをみせており、科学的な研究報告も増加している。一方、わが国のアロマ研究も活発化しており、初期の鳥居鎮夫(東邦大学医学部名誉教授)のCNV(随伴性陰性変動)を利用した香りの心理作用の実証に続いて、ユニークかつアロマテラピーの普及に貢献する研究が行われている。そこで今回は、2009年に大きな注目を集めるであろう研究者と研究テーマを大胆に予想してみることにしよう。

1) 梅津豊司(独立行政法人国立環境研究所) --- 精油の中枢薬理作用の研究

精油のこころへの作用は香りの嗅覚刺激によるものと考えられていたが、最近の研究によると、精油の分子がもたらす薬理作用によることが明らかになりつつある。つまり、鎮静剤などの医薬品のメカニズムと同じ仕組みというわけだ。こうした精油の中枢薬理作用に関わる研究はほとんど行われてこなかったが、ここ10年ほどで活発になり、2006年にはCNS Drugsという専門誌に総説が紹介されるまでになり、今ではアロマテラピーの研究者だけでなく、薬理学の研究者にも関心がもたれている。

梅津はこの分野の研究にいち早く着手し、今までにローズとラベンダーの精油に抗不安作用があることを行動薬理的アプローチで証明している。アロマテラピーの臨床応用が進むためには、科学的検証、つまり精油の生体への効果・効能の実証と作用機序の解明が不可欠である。その意味でも梅津の研究への期待は大きい。


2) 井上重治(帝京大学医真菌研究センター) --- 精油の抗菌作用

精油は驚くほど強力な抗菌作用を持っている。植物にとって精油の抗菌作用は、身の回りの細菌やウイルスから身を守る生体防御システムのひとつなのだ。井上は、精油の抗菌作用の研究に集中的に取り組んでいる、世界でも類のない研究者だ。

精油の抗菌作用の特徴は抗菌スペクトルが広く、また、揮発させた場合に最も抗菌力が強い。一方、経皮吸収するため、皮膚の深部の菌にも有効だ。さらに、最も注目すべきは抗菌作用のみだけでなく、免疫賦活作用や消炎作用などの作用を併せもつことだ。抗生物質が免疫系を低下させてしまうのと対照的であり、また、炎症部位には必ず雑菌が繁殖していることからも好都合なのだ。

わが国の抗生物質の使用量は世界一であり、乱用がMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などを生み、院内感染を招いて社会問題化している。井上独自の抗菌アロマの研究はアロマの研究としては「異端」だが、大きな可能性を秘めている。


3) 上馬場和夫(富山大学和漢医薬学総合研究所) --- アロマテラピーの作用メカニズムの研究

アロマテラピーのトリートメント(マッサージ)を受けたことがある者なら、単なるリラックスを超えた深い安らぎが得られることをご存じのことだろう。上馬場によれば、アロマテラピーのトリートメントの効果は薬理作用・生理作用・心理作用の3つの作用が絡み合ったものだという。

アーユルヴェーダなどの伝統医学を深く追求する一方で薬理の専門家でもある彼は、そのことを科学的に立証する研究に取り組んでいる。ここでいう薬理作用とは精油分子が経皮吸収して得られるものであり、生理作用とは手技による体性自律神経反射などの作用を、心理作用とは、いうまでもなく心の変化を指している。こうした3つの作用の複合は、興味深いことに単なるリラックスではなく、恍惚感や時間感覚の喪失など、意識の変容を伴うものであるという。

古来より医療には内治(投薬など)と外治(手技など)のふたつがあるが、近代医学は内治中心である。上馬場の研究は、投薬や手術など以外の外治でも十分に身体の内部に変化を起こせることを示しているのだ。

 

 


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