Eコマースサイトのユーザビリティ考
- ビデオジャーナリスト
インターネットで買い物を表現するのは、いつのまにかショッピングカートが完全に定着してしまったようだ。
とある中古車ディーラーのウェブサイトでは、ショッピングカートのカートシステムで車を販売しているのを見て驚愕してしまったことがある。さらに車を「購入する」のページでは、プルダウンメニューが登場し、99台までを一度に購入できる。支払いもクレジットカードでできる。試しに「99」と恐る恐る選択すると、幸い1台だけしか対応していなかった。
イメージしてみてほしい。自動車を数台ショッピングカートに入れて、レジで精算しているユーザーの姿を…(笑) ネットだからいいじゃないと思われるかもしれないが、メタファーとしておかしいのである。
中古車の購入台数を、プルダウンメニューでユーザーに選択させるという意識そのものがとても気になる。1台の購入が通常であろう。
米国のコストコでは、巨大なジャグジーを販売していた。店で巨大な運ぶためのカートを貸してくれて、自分の車にそれをひっかけて、お持ち帰りする仕組みがあった。まさに、そんなイメージである。
ネットの通販で、もはや当たり前となっているECのカートシステム。
スーパーで販売されているような商品ならメタファーとして、とても正しいと思う。
しかし、自動車に限らず、高級腕時計から、ブランドバッグ、さらにホテルの部屋にいたるまで、なんでもショッピングカートのあるページで決済するというのは、感覚的に非常におかしいと感じる。
ボクがECストアのシステム開発者ならば、時計ならば、白い手袋に、蝶ネクタイをしたバトラーが、ビロードの置き台の上に、丁寧にならべて、お会計をするというメタファーのインターフェースを設計するだろう。
それだけではない。
会計の時に必要なのが、配送住所の記入である。アマゾンや楽天で一度登録すると何度も聞かれる必要がないが、初めてのショップであると、すべて、配送先を入力させられるハメとなる。
また、その際にインターネットのショップでは、全角や半角をうるさく指定され、たまに、「エラー」と否定される時がある。何度も「客に対してその態度は何だ!」と言い返してみては、自分の短気さを嘆く…。
かつて、やずやの「にんにく卵黄」のお試しセットを申し込んだときに感激したのが、住所を入力する時に、Flashで女性が「真に恐れ入りますが、こちらに住所をお願いします」と丁寧にナビゲーションしてくれたことだ。残念ながら今ではそのシステムと出会えない。おそらくCPUの負荷が大きかったのだろう。
ユーザーにとって、入力画面ほど、非常に退屈で面倒な作業はない。さらに半角や全角、電話番号のハイフンの有無まで指定されると非常に頭に来る。
さらにだ。近年では「キャプチャ」と呼ばれるスパム防止のための、コンピュータが読めない数字を人が判断して入力する認証システムも増えてきた。またその数字やアルファベットが人間にも読みづらく、何度入力しても正解にならない時がある。
これってユーザーに対するイジメ? と感じることも多い。
インターネットのブラウザが誕生してから6000日目を、まもなく迎えるが、ユーザーに対するサービスインターフェースに関しては、進化しているとは思えない。いや、むしろ退化し続けている状況だと思う。
店頭では、当たり前のサービスが、ネットでは全く当たり前ではないという状況がいまだに続いている。
「デジタルネイティブ」と呼ばれる、もの心がついたときからネットがあるインターネット紀元後の世代がこれからますます増える。
彼らが、現在のカートシステムがデフォルトの標準と思わないように、スーパーで買い物するのと、カーディラーやブランドショップで買い物をするのとでは、ネット上の買い物であっても満足度が違うものだとリアルに体験できる場を、ネット空間を主戦場とするオトナが作っておくべきではないだろうか?
【編集部ピックアップ関連情報】
○コリス 2008/01/24
「使いやすいオンラインショッピングとは? Eコマースの21のユーザビリティ」
Get Elasticのエントリー「Eコマースとショッピングカートのユーザビリティ:
21のベストプラクティス」の意訳です。
http://coliss.com/articles/build-websites/architectonics/usability/765.html
○CNET 2008/03/28
「ECサイトの画面設計--男と女、買い物の行動パターンはどう違う?」
http://japan.cnet.com/marketing/eyetracking/story/0,3800081493,20370149,00.htm
○DesignWalker「クリエイティブなEコマースサイトいろいろ」 2008/02/08
今回は、ちょっぴり変わった見せ方に挑戦しているサイトを中心に、
とってもクリエイティブなショッピングサイトをまとめてみました。
http://feed.designlinkdatabase.net/feed/outsite_101308.aspx
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