ITに続く成長株「ET」革命に立ち遅れる米国
- 米国在住ジャーナリスト
(記事概要)
アマゾンやグーグルの立ち上げに尽力したシリコンバレーのベンチャーキャピタリスト、ジョン・ドエル氏は7日の議会で発言し、「米国はグリーン・テクノロジー革命から取り残される崖っぷちに追い込まれている」と、厳しい警告を発した。
ドエル氏は、クリーンエネルギー技術に10億ドル以上をつぎ込んでいるクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(KPCB)のパートナー。同氏は上院議員に対して、「KPCBが巨額投資をした二つの案件は海外企業であって、それは米国企業が技術の優位性を保っていないため」と説明。太陽光、風力、先進バッテリーの上位30社のうち、米国企業は6社しか含まれていないと訴えた。
上院の公共事業委員会に出席したドエル氏らは、「我々はかつて宇宙開発でソビエトに勝利した。そして現在、人間が地球上に住み続けるために必要なテクノロジーを誰が発明できるかのレースを他の国々と争っている。いまのところ、米国は勝利を収めていない」と米国のクリーンエネルギー技術の立ち遅れに対して懸念を示した。
だが、ドエル氏を始めとするグリーンテクノロジーの伝道者たちは、地球温暖化への対応を最優先で進めることを誓ったオバマ氏が大統領に就任することで、風向きは変わると信じている。すでに政権移行作業チームともミーティングを持ち、クリーンエネルギーを促進する内容を含む緊急経済対策の発動を働きかけたところだ。
サンフランシスコクロニカル紙 1月8日付
(解説)
米国民は、オバマ大統領が推し進める計画のクリーンテックへ大きな期待を寄せている。これらの技術開発が進めば地球温暖化を防ぐだけでなく、数百万人規模の雇用を作り出して景気後退から抜け出す特効薬となるからだ。そうしたときに、シリコンバレーの中心で現場を見ているベンチャーキャピタリストが、現状の米国の技術力は世界水準に及ばないと警鐘を鳴らしたのだから目を引いた。
ドエル氏がスピーカーとして招かれたこの日の公共事業委員会は公式の公聴会ではないが、ほとんどの民主党の議員が参加するなど高い注目を集めたという。国際外交などでピューリッツアー賞を3度受賞したことのあるジャーナリストのトーマス・フリードマン氏も公聴会に参加し、ドエル氏に賛同するコメントを発した。
両氏の主張は、エネルギーベンチャー企業を育てるために政府は大規模な計画を持つ必要があること。そして、クリーンエネルギーへの切り替えを促進するためには、化石燃料の使用に対して課税する必要があるというものなど。米国の立ち遅れている現状を打開するには、政府主導で思い切った政策を取る必要があるという趣旨だ。
フリードマン氏はさらに、「もし米国人が引き続き化石燃料を使いたいのであれば、環境浄化コストや中東への派兵コストも支払うべき」とし、相応のコスト負担をすることが必要との見方を示している。また、「炭素税を導入しないとしたら、米国人は代替燃料を取り入れたいと思わないだろう」ともいっている。
ベンチャーキャピタルが昨年1年間で全米のグリーンテック関連に注ぎ込んだ投資額は50億ドルといわれ、うちシリコンバレーのあるカリフォルニア州では18億ドルを占める。KPCBだけで45のテクノロジースタートアップ企業に6億ドルの投資を行い、今後二年間でもさらに40以上の案件に資金をつぎ込む計画だという。
ITに続く成長株のクリーンテクノロジーは、ET(エネルギー・テクノロジー)とも呼ばれ、ベンチャーキャピタルにとっても大きな期待を持って見られている。世界一の経済力を保ち、米国で生まれる未来の子供たちが高い生活水準を維持できるようにするためにも、いままで同様、主力産業で主導権を握ることが必要との認識のようだ。
【編集部ピックアップ関連情報】
○ZDNet Japan 2008/10/21
「米国のベンチャー投資、2008年第3四半期は堅調--経済不安の影響はこれからか」
「2009年のベンチャーキャピタルの投資をけん引するのはクリーン技術分野だろう。
同分野は経済不安にもかかわらず成長を続け、2012年までにベンチャーキャピタル
業界でトップの投資分野になる可能性がある」とNVCAのMark Heesen会長は
声明で述べた。
http://japan.zdnet.com/news/ir/story/0,2000056187,20382262,00.htm
○CNET 2008/10/06
グーグルの米国エネルギー問題解決策--22年計画「Clean Energy 2030」の内容
基本計画は、さまざまな省エネ対策、再生可能な風力、地熱、太陽エネルギー
への移行、石炭や石油からのエネルギー利用の全面停止、天然ガスの半減から
構成されている。これらの変更により、エネルギー生産で排出される
二酸化炭素を、現時点での年間約60億メートルトンから、2030年には年間
40億メートルトンに削減できる。
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20381417,00.htm
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