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番号ポータビリティ開始後のサービス合戦で誕生した韓国の携帯キャリア「メンバーズカード」

 韓国の人々の生活に関する特徴に「電話好き」、「消費をする時は、少しでも安く買い、得をしたい」、「特典が好き」というものがある。韓国では、「安否電話」と呼ばれる家族や友人など近しい人に、他愛もない話題でも時間さえあれば頻繁に電話をする習慣がある。また、ショッピングでは、何かモノを買うのに定価よりも安く買い、そして、「おまけ」があればなおさら良しというのが好まれるのだ。そんな韓国人顧客のハートをつかむような「携帯電話をたくさん使って、割引や特典もゲットしてしまおう!」というサービスが韓国にはある。

 韓国の携帯キャリアは現在SKテレコム、KTF、LGテレコムの3社がある。SKテレコムが全体の52%のシェアを占め、1800万人の契約者を抱えている。そして、KTFが30%、LGテレコムが18%と続く展開になっている。

 SKテレコムの機種のクオリティや使いやすさが顧客から評価され、安定した地位にあるものの、2004年以降にキャリア間での電話番号を維持したまま移動できるナンバーポータビリティ制度が開始されたことから、各社が通話料の値下げや、コンテンツの提供など様々な顧客向けのサービス合戦が繰り広げられてきた。その中で携帯料金やサービスにとどまらず「携帯電話の利用者にショッピングやグルメ、娯楽でお得に活かしてもらう」というコンセプトの元、誕生したのが携帯キャリアによる「メンバーズカード」である。

 「メンバーズカード」は各社が設けていて、プリペイド式携帯を除いた月額制の携帯電話契約をしている者であれば誰でも無料で作ることができる。このため、携帯電話の契約者であれば殆どがメンバーズカードを所持している。カード自体もクレジットカードと一体化しているといったタイプのものではないため、申請や審査も簡単で、携帯電話会社各社のホームページをはじめ、直営店や代理店で行える。
 
 「メンバーズカード」の利用メリットは、外食やショッピング、娯楽、レジャー等の様々な場面で、店舗や施設を利用した際にカードを提示すれば、割引やサービスが適用されたり、ポイントが貯められることだ。私が現在利用しているKTFを例にとると、KTFとカード提携をしているチェーン系のレストランで15から20%、ファストフードや製菓店で10%、美容室やコスメショップ、コンビニ、スーパー、大手書店、映画館、アミューズメントパークで5から20%の割引や金額に応じたポイント獲得ができる。他にもホテルや航空会社、旅行会社、KTFがソウルの仁川国際空港内に持つメンバーラウンジの利用など、ざっと挙げただけでも多岐にわたっている。

 また、KTFの場合は月々の携帯電話の利用金額や、加入年数などを総合して、カードメンバーのクラスが上位から順にVIP、ダイアモンド、ゴールド、シルバーと分けられている。「優秀顧客」と呼ばれるVIPクラスのカードメンバーは、10年以上KTFを利用し、年間の携帯利用額が120万ウォン(79,000円)以上などの条件を満たす契約者に与えられる。VIPメンバーは、先述のような提携先店舗での割引の他にも年間で6本の映画が無料で鑑賞できたり、無料で年間4回までスターバックス利用ができたりする。さらに大韓航空でのフライトを利用した場合、メンバーズカードのポイントを使って座席のアップグレードをすることも可能だという。

 携帯キャリアのメンバーズカードが幅を利かせたり、携帯キャリアを選ぶ条件について「メンバーズカードの利用のしやすさ」を挙げているユーザーがいる背景には、前述のように「お得なこと」を好む韓国人の趣向と共に、現在でも財閥とそのグループ企業が多く存在し、企業同士のつながりが強いからこそという点があると言えるかも知れない。

 

 


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