「男なら、育休を!」 コペンハーゲン市の男性職員育児休暇キャンペーン
- デンマーク在住ジャーナリスト
「お父さんよ、永遠に」。こんなタイトルの男性職員のための育児休暇取得促進キャンペーンが、コペンハーゲン市で昨年から行われている。10月からは、デンマーク初となる、男性のための育児休暇に関するホームページも開設(http://www.farforever.kk.dk/)され、注目を集めている。その表紙には「コペンハーゲン市のお父さん職員には、14週間の満額有給の育児休暇を取る権利がある。活用しよう!」というメッセージ。真ん中には、おしゃぶりとテディベアを周りにあしらったエンジェルハートのロゴが目を引く。
コペンハーゲン市では、女性には8週間の産前休暇、出産直後から14週間の出産育児休暇、6週間の育児休暇が満額有給で取得できる。それに対し男性は出産直後から2週間の育児休暇、その後6週間の満額有給で取得できる。さらに夫婦には6週間の満額有給育児休暇があり、これは夫婦で分けても(夫婦ともに市職員の場合)、どちらか一人がとっても構わない。さらに、希望者にはさらに夫婦合わせて14週間の育児休暇が認められている(ただし、その間の給与は失業保険からまかなわれる)。
なお、この内容は養子を迎える際にも同様に適用される。
2005年、コペンハーゲン市の男性職員の55%が、出産に伴い14日以内の休暇を取得、432人が平均26.3日の育児休暇を取得している。こうした現状を踏まえ、また市の男女平等政策を推進するためにもより多くの男性職員が、できるだけ長い育児休暇を取れるようにというのが、このキャンペーンの趣旨である。最終的には、男性職員の育児休暇取得率を100%にするという大きな目標を掲げているが、具体的なゴールは、●2009年に出産に伴う休暇を取得する男性職員の休暇日数を、平均50日以上とする。●2009年に、10週間の満額有給育児休暇を取得する男性職員の割合を最低40%とする、とし、キャンペーンは今年の夏まで続く予定である。
では、コペンハーゲン市はなぜ男性職員の育児休暇取得を奨励するのか。ホームページには、4つの理由が挙げられている。まず1つ目は、子供のことをよく知り、理解するとともに、子供も父親について知り、理解するチャンスが必要であるということ。そして2つ目は、育児を夫婦で共にすることによって、離婚のリスクが減るということ。あるスウェーデンの調査では、男性が育児休暇を取った場合は、そうでない場合と比較して、子供が2歳までに夫婦が離婚する確率が30%少なくなるという結果が出ている。
3番目は、男性が育児休暇を取ることで、パートナーとより平等な関係になれるということ。それが、父親の積極的な育児や教育参加につながり、家族の毎日にメンバー全員が関わることで家族プランも立てやすくなって、子供にとっても、両親の持つ様々な面を体験する機会となる。4つ目は、より多くの近しいコンタクトがあるほうが、子供はより安心でき、自信が持てるし、人格も豊かになる、ということである。
デンマークの企業や自治体は、一般的に社員や職員が幸せかどうかを重視する。彼らがハッピーであればこそ、それぞれが最大限の力を発揮して仕事に貢献できる、と考えるのだ。一方、日本はどうだろう。せっかく父親になったというのに、子供と一緒に成長する権利を仕事によって放棄させられてしまったり、小さな子供とどう接していいかわからないからと、未来の社会を構成する大事な人材を、我が家から世に送り出すという一大事業を、奥さんまかせ、他人任せにしていないだろうか? 2007年の日本の育児休暇取得率は、男性が1.56%だったという。デンマークと日本、自治体と国なので単純比較はできないが、世の赤ちゃんや一人で子供と向き合うお母さんたちのことを考えると、1.56%とは、あまりにも悲しい数字である。
ちなみに、このキャンペーンのロゴ・デザインは、伝統的な船乗りのタトゥーがベースになっている。育児をすることは男らしさを捨てることではない、子育てと男らしさを両立してこそ、イマドキの男である!というメッセージが込められている。ついでに言うと、このデザインのTシャツがコペンハーゲン市庁舎内のショップで、大人用、子供用とも数量限定で販売されている。近々デンマークに来る予定のある方は、こんなレアなTシャツをおみやげにするのもいいかもしれない。
【編集部ピックアップ関連情報】
○追志達幸(ついしたっこう) 「男性の育児休業」 2008/07/23
パパー、ママー、と無邪気に抱きついてきたり、
一緒に公園に遊びに行こう―!と駄々をこねたり、
ぜったい・ぜったい・ぜったい・ぜったい、ポケモンの映画一緒に行こうね!
と念を押されたり、今日はパパの隣でネンネしたーい、と甘えてきたり・・・
そんな時期は、あっちゅー間に、過ぎていくんだろうな、と。
http://ekumano.jugem.jp/?eid=270
○Business Media 誠 2008/05/21
育休取りたい男性は3割、「育児が大変」の理由が目立つ
子どもが1歳になるまで休暇を取得できる育児休業だが、実際に取得する男性は
少ない。男性は企業規模に関係なく、女性は規模が小さいほど、育児休業制度
を取得しにくいようだ。厚生労働省の調べ。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0805/21/news118.html
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