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100年後のインターネットを考えよう

西暦2009年。

21世紀になってから早いもので、あと10ヵ月で10年目を迎えようとしている。
21世紀の1/10が経とうとしているのだ。

20世紀は、マスメディアの時代であった。19世紀後半のピュリッツアーとハーストとの新聞ビジネスの隆盛から、ラジオ、映画、テレビというマスメディアが世界中へ浸透していき、地球の情報をどこにいても安価にリアルタイムに知ることができるようになった。また、19世紀に登場した技術群は、電化製品、車、飛行機、核兵器、宇宙開発へと姿を変え、単純労働、移動時間、大量殺戮、未来の夢へと受け継がれた。

21世紀の初頭は少なくともインターネットの時代であったと言われることだろう。

20世紀後半、ネットスケープコミュニケーションズ社とマイクロソフト社のブラウザ戦争を経て、インターネットは常時接続時代を迎えた。プリミティブでナロウなブロードバンド時代を経て、無線LAN、Wi-Fi、ユビキタスな携帯端末と、クラウドコンピューティングが当たり前となった。

クラウドコンピューティングの概念は、データの所有場所を全く意識しなくなることだ。ストレージスペースの概念が変わる。ひいては、人類の所有することに対しての感覚が変わることだろう。

そして、一番重要なのが、インターネットの進化は、まだはじまったばかりだという認識なのである。

インターネットの登場を、最初のブラウザNCSA Mosaicとすれば1993年である。2009年、ブラウザ登場からようやく16年間が経過した。つまり、現在のインターネット環境体験を16年以上も続けている人は、世界中のどこにも存在していないのだ。マーク・アンドリーセンもビル・ゲイツも16年前はウェブの世界を体験していないという事実だ。

インターネットのプラットフォームは初期のインフラ整備が一段落し、過去のビジネス慣習上の広告やショッピング、ニュースが実装され、ネットならではのコミュニケーションとしてSNSに代表されるソーシャルグラフがWeb2.0というバージョンアップを牽引している。


人々は「検索」というツールを手にいれ、今までの選ばれた情報だけではなく、気になったことを自分の価値観で調べ始めるようになった。かつてはこの調べて知識を得ることに莫大なコストと時間と労力がかかった。しかし、今では小学生でも簡単に検索ができ、大人と同様の知識を身につけている。

かつて、知識の積み重ねは文明を生み、知識は経験と重なり知恵となる。知恵が共有され、文化として歴代の時代を人類は築いてきた。

インターネットの世界の1000年後を想定するのは無理があるが、100年後の世界を想定しておくことは可能ではないだろうか?

その一つが西暦での表示方法である。

20世紀のマスメディアとの違いは、我々というもうひとつのクラウド(群衆)が、インターネットの短い歴史の黎明期にかかわっているという意識が重要なのである。


今から100年後の2109年。12才になる、あなたのひ孫が、歴史の勉強であなたの事を自宅で検索している。

公用語は英語だが、あなたの家系では日本語をきちんと教育しており、古語辞典をナビゲートしながら、あなたの100年前の本日のブログを、200インチの窓一体型薄型ディスプレイで読んでいる。隣の席には、ホログラムで、いとこが同時にディスプレイを共有視聴しにやってきた。共有視聴を家族には可能と設定していたからだ。

「お母さん、ひいおじいさんのブログなんだけど、“09年3月14日、ホワイトデーでドキドキ”とあったけど、これって西暦何年の話なの?」

どれどれと、お母さんは最新型のかつてレーシックと呼ばれた技術で手に入れたスーパー視力で台所から細かい数字にフォーカスを合わせた。

「ひいおじいさんの時代はね、2009年のことを09年と簡単に省略しちゃうのよ。
ほら、その頃の人たちは、まだ平成なんていう元号を使って表記しているから検索が大変なのよね。まさか、100年後に検索されるなんてこと、ちっとも考えてくれてなかったのよね。

まったく、ひどいわよねえ。しかし、その日に、ひいおじいさんはその人にふられてから、ひいおばあさんと運命の出会いをしたのよ。それは家族の秘密のパスワードを打つと、Google記念図書館にあるGmailに保存されているデータを読むことができ、私たちの家族のルーツがわかるわよ。まさか、ひいおじいさんはGmailが家族に引き継がれるなんて考えてもみなかったんでしょうね。

でも、あんまり子供に読ませる内容のものでもないかしら…」


未来の家族は先祖の足跡をインターネットから紐解き始めるのが当たり前になっているだろう。先祖の供養もインターネットにあるデータに対してという感覚になるのではないだろうか?

インターネットが過去を発掘するツールになることを想定し、少なくとも、未来の人にむけて、西暦表示は再度、2000年問題とならないように、2009年と正しく4桁で表記するようになってほしいと願う。

今から100年後になっても、もしかすると1000年後になっても、このインターネット上での行動はこのように検索され続けているのかもしれないのだから。

 

 


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