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ビートルズ来日以来の大事件! エリック・クラプトンとジェフ・ベックが日本で同じステージに!

 昨年末に飛び込んできた、エリック・クラプトン(Eric Clapton)とジェフ・ベック(Jeff Beck)がここ日本で同じステージに立つというニュース。その発表がされる前に、それぞれの単独来日公演はすでに日程が出ていたので、これだけ近い時期に来日するからにはどこかで同じステージに立つ日があるに違いない、という憶測はされていたものの、「じゃあ、どの日のチケットを購入すればいいんだ?」というのはファンにとっての大きな悩みでした。

 そんななか発表された、2月21日と22日に行なわれる(これの掲載時には「行なわれた」ですね)二人の共演。いわゆる「3大ギタリスト」の二人が同じステージに立つというのは、これまでの日本の洋楽史において、66年のビートルズ(The Beatles)来日公演に次ぐ歴史的な大事件といっても大げさではないでしょう。

 そんな記念すべき公演ということもあって、チケット代も通常よりはS席が17000円と高めの設定。不況の現在を反映してか、10000円、13000円という安い席から売り切れるという特殊な現象を生み出したようですが、そのこともショウの内容以上に「当日その場にいた」ということが、どれだけ重視されているかを証明しているように思います。

 2月7日、一足先に、国際フォーラムで行なわれたジェフ・ベックの単独公演を観に行ってきました。昨年11月にザ・フー(The Who)を観に行ったときと同様に、年齢層はかなり高め。ただし、ザ・フーのときは、推定60代ぐらいのお客さんが最初っから立ちっぱなしで声援を送っていたのに対し、武道館と国際フォーラムという会場の違いもあってか、ごく一部のお客さんを除いては、みなゆったりと席に座りながら、まさに「音楽鑑賞会」という雰囲気でベックの音楽に浸っていました。

 かなり手前ミソになりますが、僕が編集に携わっている『レコード・コレクターズ』では、この機会を“有効に(?)”活用しようと、エリック・クラプトンとジェフ・ベックの人気上位50曲をミュージシャン/音楽評論家の方々による投票で選出しました。


レコード・コレクターズ3月号

 エリック・クラプトンのファンを自認されている、歌うギタリストの青山陽一さん、そしてジェフ・ベックのファンを自認され、最近ではPUFFY(パフィー)のギタリストとしても活躍されているザ・サーフコースターズ(THE SURFCOASTERS)の中シゲヲさんをお招きしての対談も掲載されています(僭越ながら、私が司会を務めさせていただきました)。現在、ちょうど発売中ですので、よろしければ手にとってみてください。以上、宣伝でした(笑)。

 エリック・クラプトンの東京公演はこれからですが(実は、これを書いているのはクラプトン武道館公演の初日より前なのです)、ジェフ・ベックに関していえば、本誌で上位に選ばれた曲が、イントロが流れるたび、お客さんからの好リアクションを得ていたのが、個人的には嬉しかったですね(笑)。

 僕自身は、初めてジェフ・ベックを観たのが86年6月の武道館公演。以降、チャック・ベリー(Chuck Berry)の前に登場した89年8月の横浜アリーナ公演、そして05年7月には、今回と同じ会場の国際フォーラムに2回足を運んでいますので、今回が5度目ということになります。これまでで最も印象的だったのは、名盤『ギター・ショップ(Jeff Beck's Guitar Shop)』発売のタイミングとなった89年の横浜公演でしたが、2月7日もそれに劣らず、記憶に残るライヴとなりました。

 ベックの代表作『ブロウ・バイ・ブロウ(Blow By Blow)』の人気曲で、8分の9拍子で細かいフレーズを繰り返す「スキャッターブレイン(Scatterbrain)」を演らなかったこともあって、演奏でねじ伏せられたという感じではありませんでしたが、とにかく音のバランスが良くてとても聴きやすかったのです。これは、2月3日にVITAMIN-Q(メンバーは加藤和彦、小原礼、屋敷豪汰、土屋昌巳という日本のロック史を支えてきた4人にHEAD PHONES PRESIDENTのヴォーカリストANZAをフィーチャー)を観たときにも感じたのですが、演奏者側にしっかりしたキャリアがあると、ライヴの音像がハッキリしていてとても聴きやすい。どちらのライヴも各楽器の音がしっかりと聞こえる、ということがとにかく印象に残りました。音量も必要以上に大きくなくて、耳にやさしかったですしね。

 しかしながら、ショウの内容が良いにも関わらず…というか内容がいいゆえに、お客さんはみな音楽に聴き入っていて、座席にベタッと座ったまま。先にも書いたように、「哀しみの恋人達(Cause We've Ended As Lovers)」や「ナディア(Nadia)」といった曲が始まると、歓声がわくものの、すぐに音楽へと集中します。これは音楽を味わうには最高の環境だと僕は内心でホクソ笑んでいながらも、なんとなくベックに申し訳ない…というと変ですが、この静かなお客さんを前にして、ベックはどう感じているのだろう…ということがショウの終盤に向かうにつれて少しずつ気になってきたのです。

 そして、中シゲヲさんが対談で「歌詞がないのに歌詞が聞こえてくる」と絶妙な表現をされている、まさにそんなギターを聴くことができるビートルズのカヴァー「ア・デイ・イン・ザ・ライフ(A Day In The Life)」で本編を終了しました。まわりが全員着席しているので少しきまりが悪かったのですが、ここで立たないのはこれだけの演奏に対してあまりに失礼だろうと思って座席を立とうとしたその瞬間、お客さんがいっせいにスタンディング・オヴェーションで迎えたのは、かなり感動的な光景でした。僕は中央よりやや前の方で観ていたので、思わず後ろをふり返ってしまったほどです。ベックにはその光景がどのように見えたのでしょうか。おかしな話ですが、僕はその瞬間をベックのいるステージ側から見てみたかった。7日は東京公演2日目だったのですが、もしかしたら初日も似たような反応だったのかもしれません。けれども、スタンディング・オヴェーションに迎えられたベックの表情は、演奏中に見せていたものとは明らかに違っていました。

 アンコールは『ギター・ショップ』収録の「ホエア・ワー・ユー(Where Were You)」。シンセサイザーとギターだけで奏でられる静謐なこの曲を前にしても、お客さんはもう誰も席に座ろうとしません。アンコールの最後の曲が終るまで、年輩の方々がずっと立ったままでベックの演奏に聴き惚れている姿というのは、これまたジーンとくるものがありましたね。

 演奏の良し悪しに関係なく最初から盛り上がっているような約束されたノリではない、ショウを吟味したうえでの今回のお客さんの反応は、一言で表わすなら「成熟」でしょうか。こんな静かだと途中でステージから去ってしまわないかしら…などと心配するのではなく、7日に集まっていた年輩の方々のように、ドーンと構えて肝心なところではスタンディング・オヴェーションで迎える、僕もそんな成熟した大人になりたい! と思った次第でございます(笑)。

 さて、ここまで読んで「やはり足を運んでおくべきだった。しまった!」と思われているみなさん、朗報があります。今回の来日公演とかなり近いセットリストで行なわれているジェフ・ベックのライヴDVDが来月発売されます。


ジェフ・ベック『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ・クラブ』

 『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ・クラブ(Live At Ronnie Scotts Club)』のタイトルで出るこのDVD。7日の公演の直前にその中味を見ることができたのですが、これは素晴らしいです。オススメです。

 ベックの手元もバッチリ映っているのでギターを弾く人にとってもありがたいし、7日には演奏しなかった「スキャッターブレイン」はもちろん、何とエリック・クラプトンとの共演シーンまでが収録されています。

 僕はこのDVDを見て、7日の公演がめっちゃ楽しみになりましたが、今ではこのDVDが発売される3月25日が楽しみです(笑)。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○K’s今日の1曲 「Jeff Beck@NHKホール」 2009/02/09
 方々で話題になってるのはやはり若き(しかも美人)女性ベーシスト=
 タル・ウィルケンフェルド。チック・コリアやハービー・ハンコックと
 いったJAZZ界の大御所がこぞって彼女を起用してるそうです。
http://ksmusic.jugem.jp/?eid=3767

○ギター至上主義  2009/02/20
 「遊び心があって楽しかった Jeff Beckのライブ」
 単独では今回のツアー最終日です。
 ジェフは、機嫌もよさそうで、コンディションもよさそうでした。
 「を、ここでこうくるか」みたいな、予想できない音は健在で、
 楽しませていただきました。
http://k-s--factory.com/GuitarSupreme/2009/02/_jeff_beck.html

 


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