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ネットを駆使した「ベスト・ジョブ・イン・ザ・ワールド」キャンペーン展開中

<記事要約>

クイーンズランド州観光公社(Tourism Queensland)の求人広告「ベスト・ジョブ・イン・ザ・ワールド(Best job in the world)」に、既に9,500人以上の人々が応募した。

グレート・バリア・リーフにある島々の大使を務める仕事は、半年間の給料が15万豪ドル(約910万円)で、国内外メディアの注目を集めている。

同観光公社によると、今回のキャンペーンによって、海外では6,000万豪ドル相当以上、国内でも1,000万豪ドル相当以上のメディア露出が生じたという。

9,500人の応募者のうち、約3割はアメリカからで、オーストラリア国内からの応募者は450人余り。ウェブサイトの訪問者数は、2,500万人を突破した。

2009/2/3  Whitsunday times(http://www.whitsundaytimes.com.au)より


<解説>

「世界で一番いい仕事」は、今年7月1日から来年1月1日までの半年契約。「アイランドケアテイカー(=島の管理人)」として、世界最大の珊瑚礁が広がるグレート・バリア・リーフにあるハミルトン島を拠点に、島々を探索し、その報告をブログや写真・ビデオ日記を通じて行い、メディアのインタビューに応じて、同地域の観光PR活動の役割を担うというものだ。18歳以上で、1年以上の実務経験があり、英語ができれば、ほぼ誰だって応募できる。

【The best job in the world from YouTube】
 http://www.youtube.com/watch?v=5Smi3TuY5Lg

【The Best Job In The World】(日本語ページ)
 http://www.islandreefjob.com/ja/#/home


具体的な仕事内容は、ハミルトン島のスパ・トリートメント体験、ヘロン島でシュノーケリングギアの試用、ヒンチンブルック島のブッシュウォーキング、水上飛行機で航空郵便の配達……と、魅力的なアクティビティてんこ盛り。住まいは、ビーチフロントにある最大6名滞在可能な3ベッドルームの住宅が無償で提供され、家族や友人を招くのもOK。採用者には、ハミルトン島までの往復航空券も支給される。

「これは現実的な職業の募集でしょうか?」「何か良く出来すぎた話ですが、これには何か裏がありますか?」……なんて、公式ウェブサイトのQ&Aに書かれているのが、何ともおかしい。

応募者の最初のハードルは60秒以内の英語の自己PRビデオを作成して、応募フォーム送信時にアップロードすること。ベスト・ジョブ獲得のために、“Islands of the Great Barrier Reef”とタトゥ(刺青)を入れにタトゥショップに出かけた女の子ティーガンの応募ビデオが新聞に取り上げられると、数日後にはタトゥーは偽物、ティーガンはキャンペーンに関わる広告代理店の社員だったことが暴かれた。クイーンズランド州観光公社は過ちを認め、「サンプル」と表示するのを怠った、と苦しい言い訳。

一方、各国メディアが「応募者の中にスイス人五輪金メダリストもいる」と報じたことに対しては、家族にオリンピック選手がいるスイス人馬術選手の間違い、と指摘した。YouTubeにも多くの応募ビデオがアップロードされ、中には「社交的」で「アウトドア好き」と自己PRするオサマ・ビンラディンと名乗る男のビデオも公開されている(さすがに公式サイトでは不適切であるとして却下された)。

クイーンズランド州観光大臣は、このキャンペーンについて、「見知らぬ人を非公式な州の観光スポークスパーソンとするリスクを憂慮する人がいるかもしれないが、採用された人が半年の勤務期間を終えても帰りたがらないリスクの方が大きい」と、「おいしい仕事」をPRした。

受付を始めて半月余りの時点で、160ヵ国を超える世界中から応募者が殺到しているというから、観光PRキャンペーンとしては大成功だ。

そう、これはマーケティング専門家が入念に準備した観光PR「グレートバリアリーフの島々キャンペーン」の一環なのだ。予算は1,700万豪ドル。新たに創出された「島の管理人」の半年分の給料は、そのごく一部にすぎない。採用後の所属は、クイーンズランド州観光公社のブランド&マーケティングサービス課で、島はスポンサーという位置付けになる。

情報発信には、公式サイトのほか、SNSのフェイスブックや流行中のツイッターなども活用。前述したような小さな事件(?)は口コミで広がり、既存のメディアに取り上げられる機会も増え、公式サイトのアクセス増加につながるという好循環を生んでいる。メディア露出によるパブリシティ効果は、既に予算の4倍を超えた計算になるが、キャンペーンはまだ始まったばかり。選考中や採用後も同様に注目が続けば、費用対効果はものすごく大きい。

今後のスケジュールは、3月2日に一次審査通過者50名が発表され、3月24日までネット上で人気投票が実施される。人気投票1位を獲得した応募者は、ワイルドカード選出枠として二次審査通過者10名と共に、5月3日から5月6日にハミルトン島で実施される最終審査に進出となる。

日本からの応募者は、英語の壁があるせいか、本日現在(2009年2月15日)60人余りと少なめ。ただ、クイーンズランド州の観光マーケットを考えれば、人気投票実施時に日本人がゼロというのは、望ましいことではない。一方、露骨なPR色は逆効果になる危険性もある。日本を含め、海外11ヵ国にオフィスを展開しているクイーンズランド州観光公社が、どの国のどういった顔ぶれを第一次審査通過者として残すのか、お手並み拝見! といったところだ。

 

 


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