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インドの超人気作曲家A・R・ラフマーンが『スラムドッグ$ミリオネア』で栄光

  • レコード・コレクターズ 編集部
  • 祢屋 康

 今年のアカデミー賞とゴールデングローブ賞は、『スラムドッグ$ミリオネア』が賞を総なめというような状態だった。

 『スラムドッグ$ミリオネア』はインドのスラム街で育った少年の物語で(といっても日本では4月18日全国公開で、僕もまだこの作品を見ていないのだが)、『トレインスポッティング』などで知られるイギリスの監督ダニー・ボイルの作品。インドが舞台の映画ということで、ロケもムンバイ(ボンベイ)で行なわれインド人スタッフが大勢参加したようだ。そして、音楽を担当したのがインドの映画音楽界では超人気作曲家のA・R・ラフマーン。アカデミー賞の日本向けの放送では、彼が見事射止めた“Best Original Music Score”(作曲賞) “Best Original Song”(歌曲賞)部門は文字情報だけしか流されなかったけれど、これはすごいことに違いない。


『スラムドッグ$ミリオネア』サウンドトラック

 日本でもA・R・ラフマーンの担当した映画音楽のCDは、10年以上前からいくつか出ている。一番有名なのは、『ムトゥ 踊るマハラジャ』だ。95年に製作されたこの映画が、98年に日本で大ブレイクしたことを30代半ば以上の人は覚えていらっしゃるかもしれない。同じく95年の『ボンベイ』も日本で公開されたし、98年の『ジーンズ』(ハリウッドにも進出した女優のアリシュワリヤ・ラーイが出演)もサントラの日本盤が出ていたりする。中国製作の『ヘヴン・アンド・アース』(03年)やイギリス/フランス合作の『エリザベス』(08年)などインド映画以外でも音楽を担当するようになっている。


『ムトゥ 踊るマハラジャ』サウンドトラック

 92年に映画音楽を手掛け始めたというA・R・ラフマーンはタミル映画を皮切りに(インドでは年間500本以上の映画が作られているが、多言語国家であるため、映画もさまざまな言語で作られる)、いわゆる“ボリウッド”映画界にも進出し、打ち込みも多用して、現在のヒップホップやテクノなどをインド音楽本来の味わいと、うまく融合させながら斬新な音楽をどんどん生み出してきた。『スラムドッグ$ミリオネア』のサウンドトラックでも、在英タミル系のラッパー、M.I.A.を交えながら、ヒップホップやテクノ風な音楽と共にインドらしいストリングスや打楽器をふんだんにつかった美しい音楽、それらが両方入り混じったハイブリッドな曲までを聞かせてくれる。

 ゴールデングローブ賞でもラフマーンは“Best Original Score”を取ったのだが、こちらは受賞時の模様もすべて放送してくれて、受賞の挨拶までしっかり見せてくれた。プレゼンターが名前を間違えて読んでしまい、ご丁寧にもその後に出てきた「Xファイル」のデイヴィッド・デュカヴニーが“ラーマン”ではなく“レーマン”です、と訂正したりしたのもちょっと面白かった。

 今回、ラフマーンが受賞できたのは、インドが舞台ではあるもののダニー・ボイルが手掛けた欧米製作の映画だから、ということなのだろうが、これからさらにハリウッドでも活躍することになるかもしれないし、是非そうなって欲しいと思う。

 ゴールデングローブ賞では他にも面白いシーンがあった。ミッキー・ロークの久々のカムバック作となった『レスラー』の主題歌を歌ったブルース・スプリングスティーンは、奥さんと一緒にミッキー・ロークの隣に座っていて、その曲が主題歌賞を受賞した際にはステージに上がったのだが、“まさかクリント・イーストウッドと同じ賞を競うことになるとは思わなかった”と言って会場を沸かせていた。クリント・イーストウッドは作曲もするので、その主題歌賞にノミネートされたのだが、イーストウッドも当然、会場にいてそのスピーチを面白そうに聞いていた。すごい景色だなと思わず見入ってしまいました。

 それと、短編アニメ部門で受賞した加藤久仁生監督がアカデミー賞の受賞スピーチのときに、自身が所属する会社の名前にひっかけて“ドモアリガト、ミスター・ロボット”と言ったら、アカデミー賞の会場が笑いの渦に包まれていた。朝のワイドショーでちらりとそのシーンが流れていたのだが、これはご存知、80年代に大ヒットしたスティックスの曲名のこと。これもなかなかシャレたスピーチでした。おめでとうございました。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○MediaSabor  2009/03/11
 オスカー受賞映画『スラムドッグ$ミリオネア』の子役やっと貧民生活脱出?
http://mediasabor.jp/2009/03/post_604.html


○geezenstacの森  2009/03/12
 アカデミー賞8冠!「スラムドッグ$ミリオネア」
 ダニー・ボイルは映画音楽にこだわりを持つ監督で、この映画では世界的に
 活躍するインド人作曲家A・R・ラーマンが映画音楽を手掛けています。その
 躍動感に溢れる音楽の数々は民族性豊かなものからオーケストラサウンド
 まで様々な音楽を提供しています。主題歌賞を取っている「Jai Ho」は
 最後みんなが歌って踊るシーンで登場します。このシーンはBollywood映画
 (ムンバイを中心に、ヒンズー語で書かれたインド映画はこう呼ばれている)
 らしい演出で締めくくられていてイギリス映画ながらまたインド映画である
 ことを思い知らせてくれます。
http://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/47361071.html

 

 


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