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不況で手軽なレジャー 映画興行が好調

 世界的な経済不況で、金融業、製造業は息も絶え絶え。逆に元気になっているのは映画業界。不況の波を受け製作費大幅削減、という状況は避けられないにしても、フランスでは映画の興行成績は2009年に入って好調だ。

 フランスの映画の入場料は、9ユーロ(約1120円)と比較的安いので、不況時の気晴らしになるのだろう。1月はのべ1500万人、と今年に入ってからの興行成績は、昨年比4%増。吸血鬼とのかなわぬ恋「トワイライトTwilight」、ソフィー・マルソー主演の「ベットの反対側 De l'autre côté du lit」、今年のオスカー作品賞を受賞した「スラムドッグ・ミリオネア Slumdog Millionair」と人気作品が続いている。2月の数字も620万人と好調だ。先日発表になったオスカー受賞作品が次々と公開されている効果もある。

 1929年の大恐慌の時も同じ現象が起こっている。他の国々でも同じように不況のあおりで、他のレジャーを諦めて、手軽に映画を観に行く人が増えているそうだ。アメリカは、1月からの総入場者数が昨年比で26%もアップしている。もちろん、暗い雰囲気を忘れるための娯楽が目的なので、ラブコメやアクションものへの人気が集中しているのだが。

 フランスには映画ファンが多い。老若男女の気軽な娯楽としての映画が定着している。パリの映画館数は、人口あたりの数にすると世界一だし、ロードショウものばかりでなく、リバイバル館の数も多いので、多様なニーズに対応できる。

 しかし、レンタルビデオやDVD発売に押されて、映画館に行く人口が減っているのはいずこも同じ。映画館入場者数が減少したのを受け、対策として2000年3月から始まったのが、全国的な映画館チェーンのUGCによる年間会員制度。月々19.80ユーロ(約2460円)を払うと、全国のチェーンの映画館で映画が見放題になるパスを発行。月に3回行けば、もとが取れるシステムだ。対抗して、競合会社のグルモンとMK2が手を組んで、同じスタイルのパスを発行。映画業界の捨て身ともいわれる画期的なシステムで、映画入場者数がしばらく増えた。だが、インターネットで手軽に映画をダウンロードできるようになって、再度映画館に行く人数は激減。

 ここにきて、映画館に行く人数が増えているのは、不況の時は、友人や家族と「一緒に居たい」という心理的要素が強くなるため。自宅でレンタル、VOD、ダウンロードして映画を鑑賞する習慣は大きく変わらないが、一方で、大人数で時間を共有するための映画鑑賞が増えているというわけだ。

 不況の波の影響で映画館に向いた観客の足を、今後どうやって引き止めて行くかが今後の映画界の大きな課題だ。

 


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