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Web2.0のオライリー氏時代再興か。ETechで不況時のビジネス指針を提唱

「Web2.0」。2000年代中頃にウェブの新しい利用法を総称するマーケティング用語として、一気に広まったこの言葉の生みの親であるティム・オライリー氏(http://community.oreilly.com/)。そのオライリー氏が、3月9日、米国サンノゼで開かれたEmerging Technology Conference(新興テクノロジー会議:ETech)において、基調講演を行なった。

(全講演 ビデオ約45分)
http://en.oreilly.com/et2009/public/schedule/detail/7689


基調講演のテーマは「Work On Stuff That Matters:気になることに(注力して)行なう」で、米国が直面するであろう、エネルギーと資源の枯渇に対する画期的な認識とアプローチに対する戦略であった。つまりそれは、テクノロジー産業がこれまでに、いかに家庭用電化製品に対してその技術提供を注力しすぎてきたかを改めて示唆したのである。

スピーチの中で、オライリー氏は、世界金融恐慌の原因は、いわゆる所得非平等が進むことによる危険、西欧経済の競争の終焉、銀行家とその他のビジネスエグゼクティブの分別を奪った「リアリティーバブル」であると結論づけた。

さらに、この混乱期において、テクノロジーまたはビジネスプランを評価するための指針として、非常に明確な法則を次のように提唱した。

1)「金銭以上に、あなたにとって気になることに取り組め」:
オライリー氏は、いかなるビジネスでも、その健全性より儲け重視の間は、間違いを起こしかねない。「不安定性ビジネスモデル」を検討することを促した。その例として、ロサンゼルスでMachine Projectという組織を運営しているマーク・アレン氏の言葉「出来る間に、素晴らしいことを行ない、もうこれ以上できなくなったら、止めろ」を挙げている。

マーク・アレン氏の言葉の引用:
http://museumtwo.blogspot.com/2009/03/deliberately-unsustainable-business.html

2)「人から得る以上に価値を生み出せ」:
ねずみ講詐欺のように、人々から価値を奪うことは、何にも生まない。顧客の価値を最大限に生み出すことに注力する企業ほど、限りなく生き延びるだろう。

3)「簡単な仕組みを創りだし、それを進化させろ」:
新しいビジネス経済システムにおいて良いものは、顧客や協力先、さらには競争相手のニーズに合わせ、新しい商品やサービスを生み出す基盤を持っていることだろう。例えば、IBMの最初のPCが出来た際、そのプラットフォームを公開したことや、ワールドワイドウェブ、Twitter(トゥイッター)などの基盤の公開化を挙げた。

4)「権力を伸ばすものとは仲良くせよ」:
不動産価値調査サイトのZillow.comは、影響力が強い成功を収めているGoogleのマッピングサービスを利用した。それに対してGoogleはテクノロジーやユーザーの囲い込みをしたのではなく、むしろそのビジネスに協力した。こうした協力関係は、長い目でみた時に、ビジネスの存続可能性を高める。

5) 「他人/他社のために働く支援には、広い心を」:
信頼の置ける人間/企業関係は、このような不況社会において、企業の持続可能性を高める。信頼の置けるものたちの大きな輪は、潜在的な顧客やコミュニティーとなる可能性が大きい。


ちなみに、会議前オライリー氏のネット時代のトレンドセッター性について議論がされていた(http://wiredvision.jp/blog/yomoyomo/200903/200903041100.html)。会議そのものは、例年の熱気は感じられず、不況を象徴するかのような静けさだったようだが、一方でオライリー氏の今回の基調講演は、メディアや出席者から興味深いと話題だ。オライリー氏のコンセプトは、米国に限らず、不況に見舞われた全世界のビジネスマンやテクノロジーオタクたちの心を捉えられるだろうか。

 


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