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外資の鬼門 携帯大国韓国市場に挑むソニー・エリクソンの狙い

(記事概要)

 過去に韓国の携帯市場にアメリカのモトローラや「ブラックベリー」で名を上げたカナダのリムなど外資企業が先を競って参入したものの、成果を出せないままで苦戦を強いられている。そんな外資企業にとって厳しい携帯市場環境の中、敢えて参入するのがソニー・エリクソンだ。

 ソニー・エリクソンは日本の大手家電メーカー「ソニー」と、スウェーデンの情報通信機器メーカー「エリクソン」が折半出資によって設立された携帯電話メーカー。韓国の携帯市場には4社目の外資企業としての参入、世界第5位というシェアを持つソニー・エリクソンは今回、韓国で「エクスペリアX1」という商品を3月から発売する。

 この時期に「何故、韓国なのか?」についてソニー・エリクソンは「韓国の消費者は携帯を選ぶ時、高額なものでも抵抗なく選ぶ。これは消費者が携帯に対する期待レベルが高いということ。また、新しい技術や商品の変化にも敏感で適応性もあるからこそ販売に適している」と言う見解を示している。また、韓国への進出のために韓国内でのパートナーである携帯キャリアSKテレコムと共に、1年かけて商品開発を進めてきたとのことだ。

 新商品である「エクステリアX1」の特徴はマイクロソフトのウィンドウズ・モバイル6.1の搭載を初め、タッチスクリーン、韓国向け商品限定の「マイPCパネル」というパソコンと携帯の両画面を連結させるシステム、映画ダウンロード(「スパイダーマン3」完全版)サービスなど。この他、充電器、バッテリーやメモリーカード等のアクセサリーの充実もさせるという。さらに、ソニー・エリクソンは商品についても「エクステリアX1」のみにとどまらず複数の商品開発・販売を韓国で展開していきたい考えだ。

 韓国内だけでなく、携帯の世界市場に於いてもライバルと位置づけているサムソンやLGに対してのコメントには言葉をにごしたものの、「革新的なユーザー環境とデザインでの勝負」を目標に掲げ、まずは「韓国の消費者にソニー・エリクソンの魅力をアピールすることに専念する」と意気込みを見せている。

2009年3月13日・朝鮮日報


(解説)

 確かに韓国の携帯ユーザーが望むことや動向を見ていると、彼らは携帯の購入に際して消費を惜しまない。「デザインが斬新であること」、「一台で何役(電話機能のみならず、デジカメやパソコン、メディア機能などを兼ね備えた)もこなせる携帯」というものを欲しているという印象を受ける。また、一台を「長く大事に使う」というよりも、新しいデザインや新機種の発売に敏感で、携帯電話の買い替えのペースが速いというのも特徴だ。1年から1年半の間に携帯を買い替えるケースが多いと言われ、特に20代から30代の層が短期で買い替えする傾向にあるという。

 少し逸れるが、日本では相変わらず韓流ドラマや韓国の芸能人が一部の根強いファンに支持されている。長くファンであり、作品を愛する日本人に対し、韓国ではドラマや俳優の人気は放送されている間だけで、放送が終われば「過去のモノ」であることが多い。こんな話も何となく、携帯の買い替えの速さとつながり、韓国人の「一つの事やモノに長く執着しない」、「新しいモノや流行はいち早くチェックしたい」という特徴を表しているように思えるのだ。

 携帯本体の価格が決して安くない韓国で、高価で多機能、デザインを重視した携帯が売れ、求められる背景には、前述のような韓国人のモノや流行に対する考え方と共に「携帯は自分の一部を演出するアクセサリーのようなもの。だから携帯への投資も惜しまない。」という意識がある。そんな韓国のユーザーの心をつかむべく、韓国の携帯市場に新たに参入したのがソニー・エリクソン。韓国でもソニー・エリクソンの名は知られているものの、まだ商品のラインアップの認知度が低く、ブランドイメージが本家のサムソンやLG、外資系企業のモトローラと比べて、インパクトに欠けているという見方をされている。

 携帯の流行の移り変わりやユーザーの要望が日本以上に高い韓国の携帯市場でソニー・エリクソンが、「外資系企業は韓国企業の携帯に勝てない」というジンクスを打ち破るためには、ユーザーの動向を常に注視し、受け入れる柔軟性や、いかにブランドイメージを確立させていくかが課題と言えよう。そのためのソニー・エリクソンの長期戦略と忍耐がまさに始まろうとしているのではないだろうか。

 


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