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「小川から大河へ」ネット広告成否の鍵握るシナリオと種まき

  • MediaSabor 編集部

現在の地上波テレビにおいては、内容についての規制が厳しくなっているため、番組にしてもコマーシャルにしても、過激なもの、破天荒なものは少なくなっています。

ネットは、その点、自由度が高いはずなのですが、テキスト主体の告知広告的なものが主体で、クリエイティブが足りないといわれています。いわば、インフォメーションの域を出ていないということです。

1960年代から80年代にかけてのマスメディア広告においては、CMディレクター「杉山登志」による資生堂の一連のCMやサントリー ウイスキー ローヤル「ランボオ」、日清カップヌードル「ハングリー?」など、単なる商品広告以上のものとして視聴者の記憶に残る作品が多数生まれました。最近のテレビCMは、マスメディアとしての影響力が弱まってきたせいなのか、印象的な作品は、めっきり少なくなりました。

ネット、ケータイの普及により、メディア業界、広告業界は激震に見舞われていますが、果たして、今後、ネット発のムーヴメントを起こすような、人々の記憶に残るクリエイティブは生まれるのでしょうか。

マスメディアにおける広告、プロモーション展開手法とネット上でのそれとは、性質がかなり異なるものなのですが、どうしても、マスメディアにおける旧来型の広告手法から頭の切り替えができない企業が多いようです。

テレビが視聴率という古い指標の呪縛から逃れられないように、ネットにおいてもページビューという表面的な指標が、過度に広告出稿可否の判断材料にされてしまう傾向にあります。それは、単なる広告枠としての考え方でしかなく、どんなアイデア、クリエイティブで話題を醸成していくのかという視点が抜け落ちています。

マーケティングの本質からすれば、視聴者数、アクセス数がどんなに多いとしても、自社のサービス、商品に関心を寄せてくれる可能性の高い層の心に響くアプローチでなければ、高い広告費を払わされるだけで、必ずしも費用対効果が高いとは言えません。

逆に、視聴者数、アクセス数が、それほど多くなくても、良質な視聴者層が形成できていれば、効率的な反響が期待できるというものです。

大企業の場合、ビジネスの規模が大きいだけに、最初からメインステージでのプロモーションにせざるを得ないという事情は察しますが、本来、種まきの段階では、アプローチするターゲット層の規模的大きさに捉われてしまうのは得策ではありません。少人数でもコアな顧客層になってくれるであろう層とのコンタクトポイントを増やし、コアなファン層を形成しつつ、その人々を中心に、徐々にSNS、ブログ、動画共有サイトなどを介してクチコミが広がっていくような方策を採るのがベターです。

武道館を満員にするような有名アーティストであっても、スタート時はストリートライヴ中心に地道に活動していたという方もいます。また、観客が数十人程度の小さなライヴハウスでの動画が動画共有サイトなどで評判となり、売れていなかったグループの人気に火がついたケースもあります。

そんな無名のアーティストが徐々に人気化していくような成功物語の、最初の段階にこそ着目しなければなりません。一般企業に目を転じると、手間はかかるけれども、商品やサービス内容に合ったクリエイティブを考え、丁寧に流布させていく、そんなヒットを創出するための初期段階の基盤作りが重要なのです。

マスメディア広告の展開としては、定型的なフォーマットの広告を主要媒体に出稿するという単純なものですが、ネット上でそれと同じような考え方で、ページビューの多い媒体に適当にバナー広告を出したとしても、ターゲット層に深く突き刺さる告知にはならないものです。

ネットプロモーションの場合、短期的なパワー勝負よりも、広報のためのシナリオをつくり、ウェブサイトの内容含めシナリオに沿ったクリエイティブ、ブランディングを考案し、コンシューマーの共感を醸成するような情報を逐次、投入していくといった、一過性でない長期のトータル戦略に比重をおくべきです。その意味で、一つの作品だけで評価することは難しく、企業が外部にプロモーションを委託する場合、全体的な企画アイデア、ストーリー案にこそ、価値を見出さなければならないことになります。テレビCMと比較して、全体像を把握しにくい複雑なものになっていくわけですが、それを楽しめるようなプロデューサーが次代のブランデット・エンターテインメントをリードしていくのだと思います。

 

 


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