「失業したらローン支払を肩代わりします」米国の消費喚起苦肉の策
- 米国在住ジャーナリスト
アメリカでは3月も66万以上の職が消失し、失業者数は1320万人に達している。全米平均の失業率は8.5%だが、当面は企業の人減らしがつづき、経済が回復するまでには失業率は10%を超えるという見方が強い。
米国経済は個人消費に支えられているため、雇用不安が蔓延し、消費者が支出を控えると、経済回復もままならない。消費者が経済的な自信を失うと、特に家や車など高価なものの買い控えが顕著になる。消費者に安心感を与え、こうした悪循環を断ち切るための知恵として、「失業補償サービス」を使った販売が増えてきた。
最初にこうしたサービスを打ち出したのはヒュンダイ・モータース社。同社は、今年1月から、新車を購入して一年以内に職を失った場合は、購入車を返品して車のローンを解約できるという失業補償制度を打ち出した。ヒュンダイの1、2月の販売は、昨年より14%アップしたという。北米最大の車ディーラー・チェーンであるAutoNationも3月、顧客が失業したら、6ヶ月を上限に車ローンの支払いを肩代わりするサービスを提供しはじめた。
フォードは4月から、新車購入者が失業のため車のローンを支払えなくなった場合は、月額700ドルを上限に、1年までフォードが支払いをするという購入者保護策を開始。ゼネラル・モータース社も、4月にGMの新車を購入した人が24ヶ月以内に失業してローンを支払えなくなった場合は、月500ドル、9ヶ月を上限に、GMがローン支払いを補償するという。
同様に新築住宅を購入した後に失業し、住宅ローンが払えなくなる場合を想定し、6ヶ月までは支払いの一定額をカバーするといった住宅ローンの失業補償保険を提供する不動産会社も増えてきた。また賃貸でも契約期限前に退去すると、違約金を払わされるが、失業事由であれば違約金を免除するといった賃貸住宅会社もある。
今後も増える一方と思われるリストラを背景に、失業を想定した対策は車や住宅に限らない。航空会社のJetBlueは正規料金で購入したチケットについて、購入者が失業した場合は、払い戻しを認めている。ノルウェイジアン・クルーズラインは、同社のクルーズシップによるツアーをキャンセルした場合に、全額払い戻す保険(掛け金は29ドルから)を提供し、安心感を売り文句にしている。
失業補償ブームに便乗という感じがしないでもないのは、紳士服のJos A Bankが4月9日まで実施したスーツ・セール。購入者が4月16日から7月1日までに会社都合で退職となった場合には、199ドルを上限にスーツの購入費を払い戻してくれる。タイミングよく(?)期間中に解雇されて払い戻しを受けても、スーツは次の職探しに必要なので、返品する必要はないそう。気配りがあるような、ないような。
<関連リンク>
ブルームバーグ:現代自、米で販促に妙手 「失業時の代金補償」話題に
http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200901190028a.nwc
中央日報:現代自のマーケティング、米国人の財布開かせる http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=111916&servcode=300§code=320
産経新聞 失業…住宅ローンも安心 地銀が続々導入 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/224038/
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