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ナンデモ革命

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長 
  • 谷口 正和

■気軽に「革命」しよう
 
 最近、新しいことをやると、ナンデモ「革命」らしい。普通「革命」と言ったら、改善や改良を超えて、絶対的な価値の変化をもたらすものだったろう。それがごく気軽に革命とタイトルアップされるケースが増えているらしい。

 滝沢秀明主演の舞台のタイトルは「新春滝沢革命」。ハロプロ(ハロー!プロジェクト)の新春コンサートのタイトルは「革命元年」。ハロプロの各メンバーが今年の目標を「○○革命」で決意表明した。例えば髪形を変えたければ「ヘアスタイル革命」と言った具合である。食の世界でも革命はキーワードになりつつあり、ご当地ものや変わった具材を使ったハンバーガーは「ハンバーガー革命」と呼ばれる。健康的な食材が売り物の「アール・バーガー」の「アール」はrevolutionの頭文字である。「過去を否定せず、手法を変えることを『革命』と呼んでおり、すでに日常語」(ティーエネックス・飯田寛取締役)ということだ(朝日新聞4 /4)。

 世の中、100年に一度の激変期、そこかしこに行き詰まりが見え始めた今日、みんな「革命」を待望しているのかもしれない。過去の延長線上に未来はない、カイゼンで物事はすまない、思い切って谷を跳び越してみたいという気持ちが、この「革命」という言葉を流行らしているように見える。

 ただし、どの革命も大変平和な革命で、時代が成熟して来た中での血を流さない革命のようだ。しかしそれらの意味するところに、私たちは大いに耳を傾けねばならないだろう。表層的に見える事象群の奥にこそ、時代の転換を示唆する新しい価値観は出てきているのだから。


■価値観の「谷」を跳び越そう
 
 革命とは、何か新しい価値観の創出や、技術の飛躍を示すものとして、いくつかの事例を探っていこう。

 「100%失敗間違いない」と言われた雑誌が、遂に黒字化して評判を呼んでいる。それはホームレスが販売する雑誌『ビッグイシュー』だ。「ホームレスの仕事をつくり自立を支援する」をコンセプトに、5年前に立ち上がったが、創刊5年で遂に黒字化した。現在の実売部数は約3万部で、通算116号。これまで約800人が販売員登録を行い、5年間で販売員が稼いだ総額は3億2200万円にも上る。1冊300円で、1冊売れると販売員に160円の収入が入る仕組みだ。支持されているコンテンツは意外や巻頭を飾るセレブインタビューではなく、誌面の3分の2を占める一見地味な日本版独自の記事だそうである。格差社会、引きこもり、うつ病といった社会的テーマを取り上げ続けてきた。  

 もうひとつの驚きは、読者の最大層が20代女性だということである。街頭でホームレスが販売している雑誌なので、かなり買いにくいはずだが、若い世代、それも女性が買っているところに、時代の変化を感じる。出版界にひとつの革命的事例が誕生したと言えるだろう(週刊東洋経済4 /11号)。

 アメリカ発のネット版アウトレットモールと言える「GILT(ギルト)」が日本でも大ヒットの兆しを見せている。高級ブランドの招待制ファミリーセール「ギルト」が、3月12日の日本オープン以来、19日には会員数10万人を突破した。高級ブランドを最大70%の割引率で売る会員制のネット版アウトレットだ。最短6分で売り切れるブランドも登場、用意した商品の90%以上が売れたという。10月末までに会員100万人、5年以内に売上高500億円を目指す(繊研新聞4 /4)。

 朝時間の活用が、最近のビジネスパースンの革命のようだ。朝活用型生活提案イベント「朝EXPO in Marunouchi」が毎朝授業を行う市民講座「丸の内朝大学」に発展する。開講時間は朝7時半から8時半まで。3ヶ月1クール、全6から10回。講座内容は現場のプロが伝える最新農業、環境ビジネス、マクロビフード、ヨギーなど(ウーマンエキサイト4 /3)。『日経アソシエ』(4 /21号)も「仕事に差がつく30分の新習慣『朝活』」を特集している。朝30分から1時間早く起きると、「体が丈夫になる」「肌がきれいになる」「人脈が広がる」「頭の働きがよくなる」などの効果があると説く。

 注目のクリエイティブディレクター、佐藤可士和氏は、自分でオフイスを起こしてから、広告代理店時代の深夜型から一気に朝型に切り替えた。その効用は「一日を充実した気持ちでスタートできる」「仕事の処理速度が夜の3から4倍違う」「創造のインプットとなるゆとり時間が持てる」だという。革命児は、ライフスタイルも革命するのだ。働き方の革命は、夜型から朝型へ、と言うことである。

 これから伸びる産業は、農業、医療、教育だと言われているが、農業に革命児(?)が登場した。

 今度は「ノギャル」で「ノーギョー革命」である。「ギャル革命」で名をはせた藤田志穂さんが渋谷系ギャルを率いて農業に挑戦する。秋田県で5月に田植え、秋には2500俵の収穫を目指す。商品名は「シブヤ米」と決まっている(ハチ公米はすでに登録されていたそうだ)。構想は「稲作だけでなく野菜にも挑戦」「コメは米粉パンや化粧品にも」「ギャルママに農業体験ツアー」「農作業着プロデュース」。一見馬鹿馬鹿しく見えるだろうか。まさに革命の対象にならないものはないのである。


■個人の気付きが革命の発火点

 いま自分がやっているビジネス、担当している領域、それらを一度「革命」の目で見直してみよう。小さくてもいいから、どこかに「革命」の芽はないだろうか。よし、変えるぞ。チェンジ&レボリューション。思い切って旧秩序、旧思考から逆構造への転換である。革命のポイントは、考え方、やり方は革命的でも、基本は「小さく」「ローコスト」で回すということだ。回すということが革命にとって、何よりも重要なのである。

 そして革命のテーマ探しは「私が私のお客様」の姿勢で見つけることである。自分が顧客だったら、こんなのは駄目、こうして欲しい、こうやればいい。それを実践すれば革命になるのだ。人に頼んでいると、革命はなかなか進まない。自分でやれば邪魔ナシ、正解へ向けて一直線。速く、ストレートに革命は成功する。

 今ある課題を「ナンデモ革命」の目線で見直してみよう。基本の変革点はどこにあるかを発見し、そこに革命を起こそう。日常課題、身の丈課題、最小単位の革命が始まる。個人文化が柱になった時代は、個人の気付きが革命の発火点である。

 

 


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