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受信料も税金で一律徴収!フィンランド国営放送の提案

 日本にNHKがあるように、フィンランドには、YLE(フィンランド国営放送)がある。そして、他の多くの欧州の国々と同様に、日本では受信料に当たる “TVライセンス料”が、テレビ設置者に対して義務付けられており、不払い防止の為、各世帯を調査員が訪問して目を光らせている。違反者には罰則金100ユーロと通常の2倍の滞納分の支払いが求められることになっているが、その一方で、個人主義の欧州の国らしく、フィンランド通信ライセンス公社のHPには、調査員の訪問予定地域が事前に公表され、調査員が訪れても「テレビありません」と鼻の先でドアを閉めるのも“個人の権利”として保障されているなど、追及の手は緩めだ。

 それにしても、どの国でもこういった国民のお金で運営されている組織に対する目は厳しいもので、YLEの番組の内容に対しても、フィンランド人の反応は批判的なものが多い。例外は、「ピックカッコネン」というNHKの「おかあさんといっしょ」同様に、長年に渡って多くの家庭から支持され続けている子ども番組と、夕方6時のニュースぐらいだろう。民放各局が意図的に時間をずらしてその時間帯の前後にニュースを流したところで、その視聴率の壁は越えられないという。それでも国民からは、「YLEを見ることはほとんどないのに」「番組がつまらない」などと批判が絶えないのだ。

 そんな冷たい風にさらされながらも、2007年のデジタル放送への切り替えを踏まえて、2004年以降テレビ設置者の数は激減し、テレビはパソコンやケータイで見る時代に突入し、今年4月にYLEは新しい運営資金の徴収方法を提案するに至った――その名も“メディア料”。実質、税金のようなものだ。既存のライセンス料がテレビ設置者に対して年間224ユーロであるところに、メディア料はテレビ、ラジオ、パソコンの所持、不所持に関わらず、一世帯ごとに年間175ユーロが課せられる。施行は2011年からで、4年ごとにその内容が見直される予定だ。

 一般の国民の反応はというと、さほど憤慨している様子もない。というのも実は、この一律徴収制度は、ライセンス制の前に一度試されたことがあるのだ。「現行のシステムもお粗末だけど、新しいシステムもそれに負けないぐらいお粗末」という冷淡な声もあれば、「これでTVライセンス調査員との不毛のバトルが終わってすっきりする」という軽快な声もあり、はたまた「今までラジオのリスナーは無料だったんだから、これでフェアになるんじゃない?」と概ね納得している人もいたが、例によってフィンランド人らしく無表情で淡々と語る人が多かった。

 このようにして、額面を引き下げつつも支払者層を広げることにより、現行より約2千万ユーロの増収が見込まれ、YLEは、他の民放各局と同額の4億1500万ユーロの予算が持てるようになる。「見ない」「つまらない」とブツブツ文句を言われながらも、一週間ベースの国民の利用率が97パーセントというYLE。その高い数字に「あれ?」と思ったら、ラジオやインターネットのオンラインメディアも数に入れての数字であった。なるほど、97パーセントもの国民が利用しているのであれば、その97パーセントが支払うのだったら、100パーセントが支払っても大して変わりがないような気がする。

 うまいことやるなぁと感心したが、「日本でも同じ制度を導入したら?」と勧められた時には、遠い目で東の方を振り向いた。――日本の皆様、こんな新税、いかがでしょう?

 

 


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