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「Auto-entrepreneur」個人事業主制度で副業、起業意欲高まるフランス

 フランス政府の思惑通りに事が運んでいる政策がある。2009年1月に導入された「個人事業主制度」だ(「不況だからこそ独立。7年連続でフランスの起業数がうなぎ昇り」http://mediasabor.jp/2009/02/post_581.html)。2009年に入ってからの3ヶ月間で政府の予想を大きく上回る12万人が「個人事業主auto entrepreneur」(http://www.lautoentrepreneur.fr)として登録した。2009年2月からネットで簡単に企業登録ができるようになったこと、そして不況の波を追い風にして、フランスの起業ブームが続いている。2009年終わりまでには、20万件の新規登録が見込まれている。

 登記が簡単な自営業制度で、個人の才能を引き出して経済活性化を狙う政策。また、ネットオークションやネット通販など、今まで課税、税金徴収が難しかった分野を政府管理下におきたいという思惑も強い。経済不況で、失業者が増え、失業保険の金額が財政を圧迫している事情もある。

 起業者が増えているのは、不況のあおりで財政的に苦しくなっている人口が増えたのも大きな要因。サラリーマンとして勤務会社に全面的に世話になっていたが、いつ首を切られるかわからない。失業率は依然として上昇している。自分ができることをやって小金をかせごうとしているのがブームの原因。社会保障費も、稼いだ分に応じて%で支払うようになっている。キャピタルリスクがほとんどないので、保守的なフランス人にも受け入れられている。

 失業者(31%)、退職した人はもちろん、学生や普通のサラリーマン(37%)がサイドビジネスとして、「高齢者向けの出張サービス」、趣味がこうじての「キャラクターグッズの販売」や「自宅での縫製」「自宅で翻訳」などを始めている。

 小さな法律事務所で働いている40代半ばの女性は、個人事業主制度を利用して、翻訳や自宅での事務作業を請け負い、補填的収入を増やそうとしている。グラフィックデザイナーの30代の男性は、デザイン事務所勤務でCDジャケットやイベントのチラシのデザインを担当しているが、自宅でできるデジタル写真の処理を請け負い、副収入にしようとしている。そのためにクチコミ、Facebookを駆使して友達のネットワークを最大限に活用し、仕事を探している。昨年、会社から解雇された40代の男性も、失業保険をもらいつつ就職活動をしていたが、スターウォーズ・マニアなので、中国からフィギュアを輸入して、ネットで小売り販売を始めた。

 メディアで頻繁に取り上げられているこの制度のおかげで、労働意欲が高まっているフランス。夏の大型バカンス中に、新しいビジネスのアイディアがでてくるかもしれない。

 

【編集部ピックアップ関連情報】

○フランスの片隅にある日記帳 「Auto-entrepreneur」2009/04/24
 起業に際しての大きな心配事は、「どれだけのお金を国に納めなくては
 ならないのだろうか」という点だと思います。AEで起業した場合、
 従来のPLや商業登録と違って、税金や社会保険料を取引額のパーセンテージ
 で払います。したがって、従来と違って、収益があってもなくても
 支払うべき最低額、というものがありません。つまり、取引がなければ
 払うものもありません。これがAEの一番大きなメリットだと思います。
http://katasuminikki.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/auto-entreprene.html

 

 


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