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LGBTの祭典 ザ・ワールド・アウトゲームズがコペンハーゲンで開催

この夏、7月25日から8月2日までの9日間、コペンハーゲンで開催される「第2回 ザ・ワールド・アウトゲームズ」をご存知だろうか? これは、L(レズ)G(ゲイ)B(バイセクシュアル)T(トランスジェンダー)による、スポーツとカルチャーの祭典である。大会は、持続可能性、文化の多様性、社会革新、透明性、そして寛容性という組織の価値観を示す5つの柱を軸としている。




 
第1回はカナダのモントリオールで2006年に開催。スポーツ、カンファレンス、カルチャー系イベント、そして運営ボランティアを含め、111カ国から1万8千人が参加した。第2回目を迎える今回のコペンハーゲン大会は、大会事務局が公開有限責任会社として市公認の観光局ワンダフル・コペンハーゲンの後援のもと開催し、スポンサーもスカンジナビア航空をはじめ、IBMやホテルチェーンのScandicなどが名を連ねている。中でも興味深いのは、デンマークでは強大な力を持つデンマーク労働総同盟や各業種別の労働組合も、大会をサポートしていることである。

ザ・ワールド・アウトゲームズに参加するには、それぞれ参加者自身が参加費用を負担する必要がある。たとえば、スポーツ競技やヨガのワークショップ、カルチャーイベントは各1500DKK、カンファレンスへの参加は2000DKKといった具合だ。1つのイベントに参加すると、2つ目からのイベント参加料は割引になる。また、参加者の家族や友人なども、ビジターズパス450DKKで、会期中は会場に自由に出入りできる。

今大会では80カ国から5000人がエントリー、スポーツ部門での参加者は最大でも6000人という見通しで、大会事務局の目標である8000人の参加からすると、現時点では約40%の目標割れ。事務局長のウフェ・ウェルベック氏によると、エアロビクスからレスリングまで38の競技種目のうち、団体競技、たとえばアイスホッケーやカーリングは競技取りやめになる可能性もあるそうだ。こうして大会にエントリーした人の中には、福祉プログラムという名の援助を受けて参加する人も600組ほどいる。東ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどではLGBTに対する根強い差別があることから、せっかくこうした国際大会があっても参加が難しい人も多い。そういった人々を支援するために、カナダ、米国、西ヨーロッパ、イスラエル、日本、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港を除いた地域からの参加者が、350DKKを負担すれば、残りの参加費用や旅費、宿泊費などをサポートしてもらえることになっている。

デンマークは、世界の中でも、マイノリティに寛容な国である。首都コペンハーゲンはもちろん、私が住んでいるような田舎の小さな町でも、LGBTの人々は一般社会にとけ込んでいるように思える。私の友人にも、娘さんが2人ともレズビアンという人がいるが、つい最近どちらも女性のパートナーと結婚した。町でも、ゲイの店員さんがいて人気者だ。

私のご近所さんのひとりである友人は、十数年前にデンマークの国内で初めて性転換手術を受けて男性から女性になった。今でもホルモン剤を飲み、朝はヒゲを剃ってからメイクアップをする。ゴルフをプレーする時は、ドライバーショットを男性並みに豪快に飛ばすので、そこに居合わせた、事情を知らない人はビックリする。それでも彼女は事実を隠さず、自叙伝を出版し、時間があれば講演をし、自分の体験を話して聞かせてくれる。そして、地域の人も、講演を聞いて初めて彼女のことを知った人も、「そういう人もいるんだね」とさらっと受け止めている。

それから、彼女が彼だった頃にガールフレンドだった女性は、その後彼が他の女性と結婚し、離婚し、性転換してもずっと親友で居続けている。人から「頭が混乱しないの?」と聞かれて、「この人自身の本質は変わっていないから。別にこの人が男か女かは重要ではないの」と答えているのを聞くと、これこそ真の友情というものではないか、と心を打たれる。

こう話すと、私が特別変わった社会の中に生きているように聞こえるかもしれないが、これは、デンマークではごく普通の日常である。偏見を持った人、寛容でない人が全くいないといったら嘘になるけれど、LGBTの人々が自分らしく生きることを著しく阻むような社会ではないことは確かだ。

「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利において平等である。」世界人権宣言の第一条の条文には、こう記されている。IBMは、この大会スポンサーとなる理由について、「自信と尊敬を伴った従業員の多様性は、イノベーションを強化し、顧客にとってのよりよい解決策を提供できるということを、従業員、顧客、そして世界に知らせたい」と語る。コペンハーゲン2009ザ・ワールド・アウトゲームズは、LGBTの人々だけのためにあるのではなく、全ての人が参加可能だ。この夏の大会の盛り上がりと、自由と平等のための新たなムーブメントに期待したい。

コペンハーゲン2009ザ・ワールド・アウトゲームズ公式サイト
http://www.copenhagen2009.org/

 


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