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そして男はいない・・・

  • 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ 代表取締役社長 
  • 谷口 正和

■女性リードの時代
 
 最近、男の影が薄くなった気がする。セクシーさと遊び上手のチョイワル親父ブームが終わって、次に出てきたのが草食系男子だ。言ってみれば男性の女性化現象である。料理がうまい男性が女性から支持されているそうだ。男前弁当などと持ち上げられているが、つまりは男性が女性のやっていたことをし始めたということである。

 逆に女性には肉食系が力を得はじめ、焼肉大好きの女子などが増えているそうだ。ジゼル6月号が働く女性に調査した焼肉の名店を紹介している。仕事に活躍する女性たちの元気の源は「肉」だという。月に1から2回は友人と食べに行く女性もいる。1.デートでも使える、2.ボリューム重視、3.独創性のある店。この3つに分類して紹介している。働く意欲満々で、しかも向上心、出世意欲も旺盛な女性たち。かつての男子と同じ、肉食系になっている。

 最近の小売業の話題は、フォーエバー21とかH&Mのオープンとかに集中しているように、女性のためのファストファッションショップばかりである。テレビは意気揚々と開店時間を待つ女性の行列取材に懸命だ。インタビューを受けている女性たちのビビッドでバイタリティあふれること!市場の転換がまざまざと見える。

 「夫捨て最後に笑う!? 離婚で上がる女の価値」を特集したのはアエラ5/25号だ。広末涼子、安室奈美恵、竹内結子などのママ芸能人たちは、離婚にも地位は揺るがず、むしろイキイキして見える。仕事も経済力もあり、愛しい子どもがいれば夫なんていらない、という感じである。このようなケースは、一般女性にも増加中であるそうだ。神戸女学院大学の内田樹教授は「自分らしさを証明する手段として子育てや離婚をすべきではない」と警告もするが、取材した女性たちには家庭を顧みない“夫”、「内なる敵」の存在が明確で、必ずしも自己存在証明のためにシングルマザーになっているわけではない。ともあれ、家庭をリードするのも女性の色が濃い時代である。

 どこへ行っても女ばかり。街へ行っても、話題のショップに行っても、初夏の観光地に行っても、目立つのは女ばかり。「そして男はいない」のである。物理的にはいても、情報的にはいないのと同じなのだ。

 20世紀は男の時代だった。闘争と対立を解決するのは男の腕力だったからである。 

 翻って21世紀は、協調と対話の時代だ。必要なのは相手に対する思いやりと、きめ細かいサービス精神。元々女性が持っている特質である。女が主役の時代なのだ。男の役割は一巡し、新たな活躍の仕方が求められているようである。

 男が消えていく市場には、新たな担い手としての女が次々と参入してきている。20世紀を引っ張ってきた男よ、さようなら。サービスの時代を牽引する女よ、こんにちは。主役交代。リーダーシップ交代。旧式の男はもう要らない。政権交代も、実は男から女へ、なのかも知れない。


■情報がギャルに結集!

 渋谷ガールズの力で渋谷をきれいにしようと、「ECOカワ PROJECT」がスタートした。 渋谷をキレイな街にするイベント「ひろえば街が好きになる運動」を実施している。雑誌『Scawaii!(エスカワイイ!)』とJTがコラボ、土屋アンナさんを始めとするモデルや、読者たちも大集合でイベントそのものをお祭感覚で楽しんでいる。

 “マルキューガール”農園ツアーで畑仕事をしている。“ファッション×農業”の融合である。渋谷109系のファッション企業バロックジャパンリミテッドが社員の日帰り農園ツアーを実施した。アグリファッションはデニムとレギンスが人気だそうである。農業も女の時代だ。いずれ漁業も林業も、女性の進出が話題になっていくに違いない。


■変化の兆しと予感
 
 時代が大きく変化するときは、即座に理解しがたい現象が散発する。情報の間に脈絡がなく、普遍的に理解するのが難しい。

 現在の「男性社会から女性社会へ」の流れは、前述したとおり、かなり共通項が見つかり、もはや予兆とか前兆の段階を超えていよう。それは確実に訪れている大変化である。最初の変化は1%。次の変化は3%。その次は9%。それは爆発して81%の大市場になる。現在は1%から3%への段階くらいだろうか。もはや後戻りできない段階である。

 かつてドラッカーは「すでに起こった未来」と言った。「すでに起きてしまい、もはや元に戻ることが出来ない変化、しかも重要な影響力を持つことになる変化でありながら、まだ一般には認識されていない変化を知覚せよ」と言った。

 その意味で言えば、大パラダイムチェンジ期である今日は、「すでに起こった未来」が次々と芽を吹いていると言うことである。どんな変化の兆しにも敏感になり、過敏なくらい反応してもいい時代である。

 市場から男が消え、マーケットが根底から変わり始めているこの「すでに起こった未来」をどう読み解くか。あらゆる産業、人に未来を予感する力が求められている。
 


【編集部ピックアップ関連情報】

○日産GT-Rウェブマガジン 2009/05/17
 「クルマが売れない理由I --草食の時代--」
  何故、若者はクルマに興味がなくなったのか?
  (以下、独断と偏見に満ちた考察にはいる)
 ここでも様々な理由があると思われるが、私は「男性の女性化」が
 大きなウェイトを占めているのではないかと思っている。
http://www.gtr-world.net/editorial/s-takeuchi/20090517-takeuchi.html


○Business Media 誠  2009/03/06
 30代未婚男性、4人に3人が「自分は草食男子」
   ――草食男子と肉食女子に関する意識調査
 コラムニストの深澤真紀さんが著書『平成男子図鑑 リスペクト男子としらふ男子』
 で紹介した、積極的に出会いを求めない「草食男子」、逆に積極的に出会いを
 求める「肉食女子」という言葉が最近話題になっている。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0903/06/news052.html

 

 


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