Entry

個人主義大国フランスも管理(監視)社会へ移行。揺らぐプライバシー

個人主義として知られ,人権擁護の先駆者として知られるフランスも、サルコジ大統領のもとで、管理大国へと移行しつつある。市民の安全をうたいつつ、個人情報を管理しようとしているのだ。

今年から憲兵隊(警察に準じる)において起用される犯罪対応ソフトウエアは、警察や裁判所のもつ犯罪履歴・個人情報データベースとグーグルやフェイスブックなどの情報を一気に検索・突き合わせできる。ギリシアで開発されたソフトウエアを改良して、ペリクレスPériclèsと名付けられたこのソフトは、入手可能な公開、非公開情報の全てを突き合わせ、検証して、容疑者をあぶり出すのを容易にする。警察も近い将来に起用する方向だ。

個人情報を保護するために、現在は軽犯罪の被疑者は対象外。5年以上の刑務に値する犯罪の容疑者検索のみに限られる。憲兵隊は、ひったくりや自動車泥棒などの軽犯罪の解決にも、上記のソフトウエアを利用すれば、一気に検挙率があがる、と更なる利用範囲の拡大を申請している。

現在、犯罪疑惑があれば、裁判所発行の令状をもってして、犯罪履歴はもちろんのこと、行政関連書類、携帯電話の履歴、銀行履歴、交通網を利用した場合などの移動履歴などの書類を見ることができる、コンピューター上でのワンクリックで可能だ。これらの情報は、警察のもつデータベースのスティクSticや ジュデックスJudex (アリアンArianeという名で近々二つのデータベースが統合される予定)に集積される。警察が従来使用していた情報データベースに加え、新しいソフトウエアで検索照会できるようになるのが、グーグルやフェイスブックなどのネットで公開されている情報。自動的に情報が突き合わせされるため、警察が見落としていた容疑者を羅列してくれる可能性が高まる。

犯罪防止、安全性向上の名のもとに、当局への情報が集積していっている。一市民のプライバシーは、人権を守ることに力を入れているフランスでも大きく揺らいでいる。コンピューター使用とデジタル化によって、日常生活が便利になっているのは確かだが、自分たちの行動が、当局に筒抜けになってしまうのも事実。プライバシーに重きをおくフランス人の一部は、クレジットカードの使用、NavigoというSuicaのパリ版電子パスを極力使わないようにして(Velibという貸し自転車もデジタル化されている)、日常生活の匿名性を守っている。

犯罪対応ソフトウエアに対して、現在のところ大きな反対運動は起こっていないが、個人情報保護に過敏なフランスでは、今後議論が高まっていく可能性が高い。

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/1090