Entry

「情けは人の為ならず」を地でいくマイクロファイナンス

日本ほどの低金利ではないが、米国の預金金利も低下の一途をたどっている。数ヶ月前まで3%以上だった一年定期預金金利は、いまや2%弱である。株式市場はまだまだ先が見えない。投資をするほどのまとまった資金があるわけでもないが、現金が手元にあれば、なんやかやと使ってしまいそうと思っていたところ、イーベイ(eBay)社が運営するmicroplace(マイクロプレースwww.microplace.com)というウェブサイトの存在を知った。

マイクロプレースは、開発途上国の低所得労働者に手軽に小規模融資(マイクロ・レンディング)を行えるサイトである。こうしたマイクロ・ファイナンスは、1996年にグラミン銀行の創立者であるムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞して以来、貧困者の自立サポート策の一つとして脚光を浴びている。グラミン銀行は、バングラディッシュの農村部で貧困層を対象に比較的低金利の無担保での事業資金融資を行うとともに、資金用途や返済計画に関する個別アドバイスも行い、貧困層の自立を支援している。

米国では2005年に発足したKivaという非営利団体が、発展途上国の超低所得者にインターネットを通じて、個人レベルで直接、無利子の社会的融資ができるようなP to P(個人対個人)融資サイトを設置している。

これに対して、2007年の末に開設されたマイクロプレースは営利企業。個人に直接投資するKivaと違い、低所得労働者に社会的融資を行う金融機関(MFI)の債権に投資するので、投資家個人も0.5%から6%の金利を受け取ることができる。投資なので元本保証はなく、金利や投資期間も個々の債権によって違ってくる。マイクロプレースのウェブ上で、国別、融資対象者別、金利別で投資先を選ぶことができる。投資額は20ドルからで、eBayのオンライン決済システムであるPaypal(ペイパル)を使って簡単に出資できることも利点だろう。

元本保証はないといっても、統計的にみれば97%の貧困者はきちんとローンを返済しているとのこと。投機に踊った米国のサブプライム・ローンの返済率などより、はるかに心強い数字である。またマイクロプレースは自社基準に基づき投資先の金融機関(MFI)を選定しており、これまでのところ債務不履行が起きた例はないという。マイクロプレース自体も米国の証券取引委員会登録団体としての規制を受けている。

情けは人の為ならず。私もさっそく口座を開き、様々な投資先を見ていたところ、米国内の弱小事業主に融資しているMFIを見つけた。7月4日は米国の独立記念日ということもあり、最初の50ドルは米国の労働者向け債権に投資することに。年利2%で、2011年の5月11日に返済される予定。たかが50ドルとはいえ、私のお財布からなんとなく消えていく運命よりは、誰かの役にたって戻ってきてくれる方が数倍いい。次はアジアの女性を支援している団体に投資してみようか。こんな風に考える人が増えれば、持続可能な支援策として威力を発揮しそうだ。


<関連情報>

https://www.microplace.com/ (マイクロプレースのウェブサイト)

http://www.afpbb.com/article/economy/2329885/2477612
(AFPBBニュース 12/26/07 イーベイ、世界のワーキングプアへの融資サイト開設)

http://www.cbsnews.com/video/watch/?id=4948763n&tag=related;photovideo
(CBSニュース マイクロプレースに関する放送ビデオ(英語))

http://cloudgrabber.blogspot.com/2009/05/blog-post_08.html
(Cloudgrabber ブログ 問題解決のスケールとスピード:)

http://www.kiva.org/ (Kivaのウェブサイト)

http://www.planetfinance.or.jp/
(プラネット・ファイナンス・ジャパン、マイクロファイナンスに関する広報サービス)

http://www.mfi-corp.jpn.com/index/index.php?option=com_content&view=article&id=2&Itemid=16
(マイクロファイナンス・インターナショナル 
 日本人が米国で設立したマイクロファイナンス企業)

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/1096