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先住部族の生活、アマゾン森林保護と企業進出調整の組織を創設

<記事要約>

「João Fortes Engenharia」の後継者であるジョアン・アウグスト・フォルテ(João Augusto Forte)氏は、2003年のCDI(情報民主化推進委員会)で出会った、「Aliança dos Povos da Floresta(森林の民のアライアンス)」のインディオ、アイルトン・クレナック(Ailton Krenak)氏とともに、NGO 「Rede Povo da Floresta(森林の民ネットワーク)」を創立した。

目的はインディオと、セリンゲイロと呼ばれるゴムの樹液を採取する人々との間の平穏を保ち、アマゾンに共存するこの二つの文化の交流を図り、アマゾン森林を守る事である。「森林の民ネットワーク」は、コミュニケーションの道具として、インターネットの設備を進め、また「Yorenka ãtame」と呼ばれる学び、交流の場、「森林ユニバーシティー」を創立した。ブラジル世論統計研究所(Ibope)や企業、Concrematの要人、またボサノバの巨匠トム・ジョビンの息子、パウロ・ジョビンなどの著名人が創立に参加しており、このアマゾンから生まれた組織に注目が集まっている。

2009年6月21日 ブラジルの日刊紙 O Globo


<記事解説>

ブラジルには現在、215部族、ブラジル人口の0,2%の約35万人のインディオがいるとされるが、その約30%がアマゾン州に集中している。多くの部族のインディオが森林伐採などで住む場を追われ、年々その数を減少させている。セリンゲイロは樹液を採集する際に森林伐採はしないが、70年代までは、セリンゲイロによるインディオの抹殺が一般的に行われていたという。そのためセリンゲイロとインディオ間の争いは絶えず、互いに互いが暗殺しあうような状況が長く続いていた。

この両者間に初めて話し合いの場を作ったのが、シコ・メンデス(Chico Mendes)氏で、セリンゲイロのリーダーで、ブラジルの労働運動指導者、熱帯林保護活動家として知られる。インディオ、アイルトン・クレナック氏が所属する「Aliança dos Povos da Floresta」は、シコ・メンデス氏により創られた組織だ。しかし1988年にシコ・メンデス氏が暗殺されてからは、その活動は停滞しており、今回「João Fortes Engenharia」の後継者と、インディオ、アイルトン・クレナック氏の2人のシコ・メンデス氏の友人が、シコ・メンデス氏の意思を継ぐ形でNGO 「森林の民ネットワーク」を立ち上げた。リオデジャネイロの企業家と、セリンゲイロ、インディオの3者が、アマゾン森林を中心に、自らの生活、文化を守るために立ち上がったのだ。

NGOの最初のプログラムは、アマゾンの民をインターネットで繋ぐことだった。破壊が急速に進んでいるが、まだまだ世界最大面積を誇る熱帯雨林内に住む人々との、相互コミュニケーションをとりやすくするためだ。また一種の大学のような存在である、ペルー国境近くに誕生した、86ヘクタールの敷地を持つ「Yorenka ãtame」は、教育センターとして機能している。2つの教室、図書館、コンピューター室を備え、「森林の民ネットワーク」に参加する最も多いインディオ部族である、アシェニンカ族の建築方法が適応された建物となっている。このアシェニンカ族は、スペインのペルー侵略後、アマゾン一帯に拡散した部族で、ペルー側に7万人、ブラジル側に1500人存在するといわれている。ブラジル側のアシェニンカ族が多くこのNGOに参加しているが、ペルー側との連携も注目されている。

2007年に創立された「Yorenka ãtame」は世界中、そしてアマゾン各地から多くの人々が集まる話し合いの場である。アマゾンの森林伐採、インディオ保護地区で計画されている植林について、インディオ伝統文化を守りつつも、インターネットやビデオカメラのようなテクノロジーを各部族にとりいれるにはどうしたらいいか、などが活発に意見交換される。各部族の伝統科学、アマゾンの知識なども交換し合い、個々で話し合ったことを、カメラやコンピューターと一緒に自分の地域へと持ち帰り、その後メールや動画を送りあって交流を続ける。まさに集いの場と交流継続の方法が一体になったからこそ実現した活動なのだ。

「Yorenka ãtame」は排出量取引市場にも進出している。Nanapiniプロジェクトでは、150種類の樹木を栽培管理し酸素を確保する。すでにイギリスのロックバンド、ポリスなどのクライアントを獲得している。プロジェクトはまだ実験段階であるが、今後さらにこの「空気を売る」事業は大きく展開していく事だろう。

アマゾンを守る団体は世界中に存在する。しかし、インディオも参加したアマゾンの住民により作られた団体に、今後の展開を期待する企業、個人は多いという。インディオの伝統文化を完璧に守りつつ、企業が進出したり、テクノロジーなどの技術を取り入れる事は不可能に近く、だからこそ、当人を含めた話し合いの場が必要だ。また生活の場である森林保護はインディオにとって切実で、その破壊の現実は地球環境にも大きな影響を与えている。世界の二酸化炭素の4分の1を酸素に変えているといわれるアマゾン。そんなアマゾンからの声に、耳を傾け続けたいものだ。

 

 


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