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少子化対策の鍵は高学歴女性のサポート

ドイツの出産そして育児のための援助は素晴らしい。ドイツ国内での健康保険には一般的な法定保険とオプションサポートがつけられる私立保険があるが、法定保険であっても一部の予防接種を除いて、医療機関での診察に妊婦がお金を払う必要はない。つまり妊娠確認の時点から妊娠中、超音波検査を含む一切の医療費がかからない上、出産時のコストも100%健康保険がサポートしてくれる。これは帝王切開などの手術の場合も同様である。子供を産むまでのプロセスで家計の心配をすることはないのである。

さらに出産後の経済的援助には二種あり、まずは育児手当、そして子供が最長25歳になるまで支払われる児童手当がある。児童手当は一人目であれば月々164ユーロ(二人目164ユーロ、三人目170ユーロ、それ以上195ユーロ)が一人頭支給される。これでオムツや洋服などの必要品は幼児期ならカバーできる金額であり、EU内をみてもドイツの児童手当金額はトップレベルだ。もちろんこの援助はドイツ人の親だけでなく、ドイツ国内で滞在許可を持つ親であれば受けることができる。育児手当は、2007年までは最高12ヶ月のあいだ月々450ユーロ、あるいは最高24ヶ月間300ユーロが一律支払われていた。

かなり太っ腹な支援ではあるが、それでもドイツの出産率は日本のそれより低いと言われている。その大きな原因は、働く女性たちが育児期間中にもっとも大きな収入源となる月収を貰えなくなることだ。現在ドイツで出産率を下げているのは高学歴の女性たち。つまり収入の比較的多い女性といえるが、こうした女性たちを援助し、出産しやすい環境を与えることが、国内出産率低下抑止への大きなポイントとなる。

そこで2007年以降に出産した両親には、育児休暇中に今までの収入の67%(最高1800ユーロ)が月々支給されることとなった。これは最長12ヶ月間の支払いとなるが、二人で育児休暇を取る場合、計14ヶ月まで受けることができる。まだまだ男性が育児休暇を取る傾向は少ない状況ではあるが、これをきっかけに短期間でも育児を引き受ける男性パートナーが増えているのは事実だ。今までの育児手当のように、仕事を持たない専業主婦と同じ支給額ではキャリアウーマンは納得しない。そこをうまくついた対策と言えるだろう。

高齢化はドイツでも大きな問題であるが、その最大要因である少子化を解決するのが先決。そのためドイツ人女性サポート以外にも、同じくドイツ人口増加に荷担してくれる国内滞在中の外国人や移民をも支援することがドイツの少子化対策法だ。

<リンク>
ドイツ連邦家族・高齢者・女性・青少年省HP  (様々な支援について・独文)
http://www.bmfsfj.de/bmfsfj/generator/BMFSFJ/Familie/leistungen-und-foerderung.html

ローストック人口推移研究所センター (人口推移と対策について・独文)
http://www.zdwa.de/zdwa/artikel/index_dateien/index_0102W3DnavidW267.php


【関連情報】
○メディアサボール 2008/06/05
 「ドイツにおける育児休暇後の男女間所得格差と少子化」
http://mediasabor.jp/2008/06/post_404.html

 


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