フェースブック、マイスペース、職業関係に焦点をしぼったリンクトイン(LinkedIn)など、様々なソーシャル・ネットワーキング・サービス（ＳＮＳ）が定着する米国で、お金持ち限定のＳＮＳが注目を集めている。

そのＳＮＳとは、フロリダ州パーム・ハーバーに本社を構える「affluence.org 」（直訳：裕福.org）。 年収30万ドル（約3000万円）以上、もしくは純資産300万ドル（約３億円）以上の人でなければ会員になれない。厳しい審査を得て入会を許されるのは、申請者の40人に１人という。

affluence.orgのサイト：http://affluence.org

affluence.orgのねらいは、広告やサービスの対象となる裕福なオーディエンスを確保することである。これまでにもRobb Report、Departures、CN Travelerなど同様のターゲットをねらった出版メディアがあった。affluence.orgは年収や資産に明確な基準を設けることで、より確実なターゲットを広告主に保証するのである。

Robb Reportのサイト：http://www.robbreport.com/
Departuresのサイト：http://www.departures.com/
CN Travelerのサイト：http://www.cntraveller.com/

同社のプレスリリースによれば、現在米国在住（※１）の会員数は３万人。平均世帯年収は448万ドル（約４億円）、平均世帯総資産は3,279万ドル（約33億円）、平均年齢は52歳。男性55％、女性45％。前出のRobb Report（世帯年収19万ドル、総資産200万ドル）などに比べて、はるかに裕福なオーディエンスである。

※１
米国（79％）以外では英国（８％）、カナダ（５％）、オーストラリア（５％）、ＵＡＥ（３％）に会員がいる。

オンライン（※２）の広告料金はＣＰＭ（1000回表示）あたり25ドルから50ドルに設定されている。ちなみに本稿を書いている時点でサイトに表示されているのはポルシェ・スポーツ・ドライビング・スクールとマンダリン・オリエンタル・ホテルのバナー広告。いずれも庶民からすれば、ぜいたくなサービスである。

ポルシェ・スポーツ・ドライビング・スクールのサイト：
http://www.porschedriving.com/

マンダリン・オリエンタル・ホテルのサイト：
http://www.mandarinoriental.com/

※２
オンライン以外にも、会員および一般の希望者にデジタル版マガジンを発行（10万部）。それにともなう広告収入も見込まれている。こちらの効果は現時点で未知数だが、ＳＮＳとマガジンを連動させる試みは興味深い。

会員の１人Bob Smith（ビジネス・コンサルタント、57歳、コロラド州在住）氏は、affluence.orgを利用してコネクションを広げている。「自分と共通点のある人々がすぐに見つかり、通常何ヶ月もかかるコネクションづくりが数週間でできる」とaffluence.orgのシステムに満足している（※３）。

※３
2007年3月7日付St. Petersburg Times参照

他のＳＮＳ同様、affluence.org内部にはコミュニティがあり、共通の話題を持つ人々に議論の場を提供している。最近ではGreen Businessという環境問題に関心をもつ人々のグループが、活発に情報交換しているという。社会責任に焦点があたるのは、いかにも裕福な人のＳＮＳらしい。

affluence.orgは、オンラインビジネスの専門家Scott Mitchell氏(37歳)が、2008年9月に立ち上げた。かつてドットコム・ブームで勝ち組となり、今も260万ドルの家に住むというだけに、Mitchell氏自身、裕福なオーディエンスの１人である。

不況が続き庶民が節約を求める米国で「お金持ち限定」は、むしろニッチ市場をねらったコンセプトである。中高齢者がようやくＳＮＳに慣れたところで、若者と同じＳＮＳを利用することに違和感を覚える人も多いはず。今こそ機は熟したと言えよう。