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経済優先。店舗の日曜営業解禁へ(フランス)

日曜日に買い物ができるようになる? 日本では当たり前の事が、フランスでもできるようになるらしい。

フランスは、日曜日に家族でランチを食べる風習が今まで守られてきた。お昼に両親や祖父母の家にみんなが集まり、ご飯を食べながら、一週間あったことを報告しあう。デパートやレストランなどのサービス業に従事していても、お店は日曜休業。日曜日の家族ランチに参加できる。それぞれが好きなことをする個人主義の国でも、家族の絆が強いのは、こういった習慣のおかげ。マザコンと言われようと、毎週日曜日にいそいそと母親の手作り料理を食べに、実家に帰る男性(独身、既婚問わず)も少なくない。(女性も実家に帰るので、悪口は言えないが。)

実は、日曜日に商業店舗を営業するには、市や県からの特別な許可が必要。さすがに観光大国のフランスは、パリのシャンゼリゼ通りやマレ地区、地方都市の主な観光地区といった「観光ゾーン」のおみやげ物屋やレストランは、15年ほど前から営業が特別に許可されている。しかし、従業員には通常の二倍の給料を払わなければいけない。法律の縛りが、便利な消費社会への安易な移行に歯止めをかけていた。

伝統を守り、働くことより人生を楽しむことを優先させていたフランス人も、「お金」とビジネスを最優先させる大統領のせいで、変わってきた。効率を重視し、顧客サービスを向上させて利益を追求していく。みんなが仕事を休む日曜日に開店して、店の売上げを伸ばそうとするのは資本主義の基本行為。それを防いでいたフランスの労働法も崩されていく。

サルコジ大統領が率いる右派は、経営者の利益確保が最優先項目。世界の経済競争に生き残るため、と理由づけをして、日曜日に仕事をさせるための法律改正を狙っている。2007年9月に右派リシャール・マイエ氏によって国会に提出された法案は、20万人以上の都市で日曜日の店舗営業許可を要請。左派の社会党はもちろん、いい顔はしない。その後、2008年春には、同氏が改正案を提出。20万人都市から「例外的な商業目的がある地域」に規定し、5年間の試用期間設置と、譲歩した。また、従業員が日曜日に働くことを拒否したとしても、解雇理由にしてはいけないとの但し書きつきである。同年の11月には、さらに譲歩して、現行の年5回の日曜日営業許可を年8回へとの緩やかな変化を要請。

サルコジ大統領チームは、なんとかアングロ・サクソン諸国や日本のように日曜日に店舗を営業させ、友人である企業経営者達の利益を高めたい意向だ。資本主義者と政治家の典型的な癒着の前では、労働者の利益や生活の豊かさは、二の次だ。サルコジのテレビ演説で知識人達の間で失笑をかったのは、月のテレビ討論会での場面である。「オバマ米大統領のパリ訪問の際に、オバマ夫人と娘たちが日曜日にパリで買物をできるように、大統領の僕自身がデパートのオーナーに、特別に店を開けるように電話をするのは普通なのか?」と力説。左派に人気あるオバマ米大統領を話題にあげ、反対グループの注意を惹こうとした。しかし、逆効果になってしまったようだ。

2009年7月22日には、日曜日労働を可能にする上記法律が上院で通過し、次は社会党主導の国民議会での通過を待つ形となっている。ここで議論点になっているのは、報酬の違い。現行の観光地区での日曜日の店舗営業の際、従業員は他の地域で働く人につく特別手当の倍になるという確証がない。また、観光地区と許可店舗の線引きはどうするのか、というような問題点もある。とはいえ、経済悪化で職を失う人が増加している状況で、仕事が増え、給料が増えるのはうれしいとパリ郊外の大手家具チェーンで働くダニエルは言う。日曜日の午後が最も客数が多いのも事実だ。日曜日に「自宅で家族とともにゆっくり食事」、から「家族で買物」、というライフスタイルにフランスも変わっていくのだろう。

 


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