Entry

雑草がコストの安い代替エネルギーに転化

牛の飼料がついにエネルギーへと変化した。2009年8月にパラー州で行われた第38回ブラジル赤セラミック産業市のテーマはエネルギーであったが、その中で最も注目されたのがエレファント・グラスの再生可能バイオマスだ。ブラジル農業研究企業農業生物学研究所(Estudos do Centro de Agrobiologia da Empresa Brasileira de Pesquisa Agropecuária 略称Embrapa)は、サンパウロ大学(Universidade de São Paulo,略称 USP)のテクノロジー研究所と共同で、10年以上にわたり研究を続けており、その結果がこのイベントで発表された。

エレファント・グラスはアフリカ原産のイネ科の多年草で、牧草に使用され、ネピアグラスとも呼ばれる。大気中の二酸化炭素の固定に効果的だとされ、植物バイオマスとして使用できる。乾燥して肥えていない土地でも、土壌水と太陽エネルギーだけで急速に成長する。ブラジルへは約100年前にアフリカよりもたらされたという。

ブラジルのセラミック生産が集中しているカンポスでは、117の企業が一日に平均600万の煉瓦を生産する。この生産のためにトラック236台分の薪を使用するが、そのための森林伐採が問題化しており、また煉瓦生産コストの25%を費やす。そのため天然ガスを導入している企業も存在するが、使用コストが高く普及は遅々として進んでいない。

ロンドニア州にあるCERÂMICA UNIÃOも天然ガスを使用していたがコストが高いため、代替エネルギーとしてエレファント・グラスを導入し30%のコスト減に成功した。Embrapaによればこの企業は、24ヘクタールのエレファント・グラスを栽培しているが、化学肥料が必要ないため苗の購入費用のみのコストですむとのこと。またエレファント・グラスは80%の水分を含むが、それを13%までに減らす必要がある。この分野でのエレファント・グラスの使用はポジティブな研究結果が報告されており、セラミックの質をおとすことなく利用できる。

また中規模の電気会社、Sykue Bioenergiaは、2008年よりブラジルで初めてエレファント・グラスを利用した製造所を始動させている。現在4000ヘクタールでエレファント・グラスを栽培しているが、今後その規模を10倍に増やす予定だ。

サンパウロ州政府のテクノロジー研究所(Instituto de Pesquisas Tecnológicas 略称IPT)によれば、ブラジルでは既にユーカリからセルロース系のバイオ燃料を生産している。しかしユーカリが年間1ヘクタールにつき20トンの良質のバイオ燃料を生産するのに比べ、エレファント・グラスは30から40トンに達する。またユーカリは成長までに7年かかり、土壌水を大量に吸収する。エレファント・グラスは1年に2から4回収穫できる。トウモロコシの生産エネルギーは1,4から1,5倍とされるが、エレファント・グラスは1,5から10倍とされるのも興味深い。

そして例えばミナス州には2900万ヘクタールの牧草地があり、14%が生産用に使用されているが、これはブラジルにおける酪農業の生産性の低さを示している。2002年の調査によれば、ブラジル国土の30%を占める農業分野の土地の70%が牧草地であるが、そのうちの90%が牛肉生産に使用されている。森林伐採を行うことなく、エレファント・グラスを栽培する土地はブラジルには存在するのだ。

エレファント・グラスなどを原料とするセルロース系エタノールは、食料との競合がなく、また温室効果ガスの削減効果、化石エネルギー収支が高いと言われる。世界中で研究が行われているが、ブラジルでもまだまだ開発段階であり、今後ユーカリやサトウキビに取って代われるのかが注目されている。

 

<関連情報>

You Tube映像
植物バイオマスとしてのエレファント・グラス
http://www.youtube.com/watch?v=Rn-taEsXd6I

ブラジル農業研究企業農業生物学研究所(Estudos do Centro de Agrobiologia da Empresa Brasileira de Pesquisa Agropecuária 略称Embrapa)のサイト
www.embrapa.br/

CERÂMICA UNIÃOのサイト
www.ceramicauniao.net/

Sykue Bioenergiaのサイト
http://www.sykue.com.br/

 

 


  • いただいたトラックバックは、編集部が内容を確認した上で掲載いたしますので、多少、時間がかかる場合があることをご了承ください。
    記事と全く関連性のないもの、明らかな誹謗中傷とおぼしきもの等につきましては掲載いたしません。公序良俗に反するサイトからの発信と判断された場合も同様です。
  • 本文中でトラックバック先記事のURLを記載していないブログからのトラックバックは無効とさせていただきます。トラックバックをされる際は、必ず該当のMediaSabor記事URLをエントリー中にご記載ください。
  • 外部からアクセスできない企業内ネットワークのイントラネット内などからのトラックバックは禁止とします。
  • トラックバックとして表示されている文章及び、リンクされているWebページは、この記事にリンクしている第三者が作成したものです。
    内容や安全性について株式会社メディアサボールでは一切の責任を負いませんのでご了承ください。
トラックバックURL
http://mediasabor.jp/mt/mt-tb.cgi/1132